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第六話 異変1
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母へ少しの祈りを捧げたあと、大きく伸びをした。
母を忘れるわけでは無かったが、少しずつ、1年ずつ、気持ちは落ち着いてきたような感じがした。
そうか、8年か…
その年数は短くも長いように感じた。
気づけば、俺はじっとり汗をかいていた。部屋の空調はしっかりと効いていたはずなのにも関わらず。
心なしか軽い頭痛もする。後頭部から首筋にかけて鈍く痛む。
風邪、ひいちゃったかもな。
少し体もだるくなってきた。体温も高くなっている気がする。
…流石に今週の授業を休むと、来週からの試験に影響するな。
俺は市販の総合感冒薬を飲んだ。
こんな夏にマスクとかしんどすぎる。
俺は重たい体を無理やり動かして、ダラダラと登校した。
今日は午前から専門科目があり、同じ学科の真島や月城は当然のこと多くの学生が大教室に集まっていた。
「おはよ、ってあれ悠希、風邪?」
真島は俺のマスク姿に驚く。
「うん…なんか、熱っぽい。」
俺は真島の横の席に腰を下ろそうとすると、真島を挟んでとなりにすわる月城は俺を見て怪訝な顔をした。
「ん?月城、どうかした?」
「…水瀬、お前…」
月城が何か言いかけたとき、俺は何か視線を感じて振り返った。
ここは大教室であり、専門科目もあって教室には100人はいると思われる。いくら専門科目で同じ授業を受けたことがある人が多いとはいえ、こんな大教室に友人なんてそうそういないはずだ。
だが、振り返ると何人も俺を見ていた。
「え…」
しかもその目は睨むような、いや、狙うような色を帯びていた。
「…なんで。」
俺が何かしたのか?いや、俺に限ってそんな目立つようなこともして無いはず…
「悠希、お前顔色悪いぞ。帰った方がよくないか?」
「そんなことは、」
無いはず、と言いかけたが、俺はその目線から逃れるために頷いた。
「…そ、そうだな。ごめん。試験のこと後で連絡してほしい。」
俺は足早にその教室から出て行った。
でも、なぜか教室外でも俺への視線は続いた。まとわりつくその目線に気持ちの悪さを感じた。
体調のせいか、その不安のせいか俺の心拍数はどんどん上昇していく。
「何なんだ、一体…」
帰宅途中にも、その不安は拭えなかった。
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