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言い訳じゃねえし。負け惜しみじゃねえし。全然ちげえし。泣いてねえし。
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先に断っておくが、俺は友達がいないわけじゃない。
「え、お前マジか」
「ごめw今回はコイツと組むわwwお前また休んだりされて連帯責任とかwヤバくねww」
ただ、裏切られただけだ。
とりあえず帰るまでにコイツの靴にナメクジでも入れといてやろう、と心に決めつつ、俺は教室を見回す。
当然のように、男子も女子もキャッキャと楽しそうな声をあげながら、好きな人と二人組を錬成していく。
何を対価にすれば錬成できるのだろうか。教えてほしい。切実に。頼みますマジで。
そして、気付く。
あれ、俺と隣のコイツしか、ぼっちいなくね?
そして先生はまたしても暴言を吐くのである。
「みんなペアは出来ましたか?あ、東谷君と児谷君。じゃあ二人で組んでね!それでは詳細を説明していきます!!」
一体どれではなんだろうか。
ぎぎぎ、と変な音がなりそうなくらい、がくがくと首を隣に向ける。
眠たそうな顔で、頬杖をつき、一歩も席から立とうともしていなかった転校生のほうに、だ。
先生の話は正直ちゃんと入ってこなかったけど、とりあえず。
「・・・先生の靴にもナメクジ入れよ」
今日の目標が決まった瞬間だった。
<***>
先生の話は正直少しも入ってこなかったけど、何やら地獄が始まったらしい。
各チームが楽しそうに調べ物を始めたので、俺たちも動き出そうとして
「えっと、東谷、くんだよね。初めまして、俺・・・」
「・・・どうでもいいから。興味ねえし」
・・・。
グッと、『児谷悠介です』の部分を飲み込んだ。
これか、コイツの孤立の理由。
性格に難あり、って言ってたなそういえば。
「・・・えっと、でも調べ物しないと」
「・・・」
東谷は何も言わない。
俺をチラッと睨んで、あくびをかました。
イラッとした。
でも俺は大人なので、そんなことオクビにも出しません。
そういえば、おくびにも出さないの『おくび』って『ゲップ』のことらしいな。
口に愛って書くんだと。
と、軽く現実逃避していた俺に。
「何、真面目なん?」
・・・真面目なん。
そんな剣呑な。
一瞬嘲笑にも似た表情を浮かべたのを見逃さなかったぞ、俺は。
「そうじゃねえけど。俺、出席日数危ないかもしんねえから提出物とかやっとかねえと内申が怖いんだよ」
「そんなの知んねえし」
まあ、もっともではあるんだけどな!
だからってそんな言い方しなくても良いと思うんですがいかがか!!?
「・・・分かった。じゃあ、俺だけでやるから」
そう言って、一人で教室を出ようとしたら。
「あー、ならやっぱやろかな」
そう言って、東谷は立ち上がった。
・・・天邪鬼にも程があるだろ!!!!?
<***>
「んで、どこ行くん」
「図書室」
「・・・ふぅん」
自分から聞いておいて興味なさそうな。
俺の隣、一定の距離をとって歩いているその転校生の姿を、改めて見てみる。
身長は俺と一緒か、若干高いくらい。
生まれつきっぽい、若干茶色がかった短めの髪。
改めて見るとイケメンだ。
ただ
「は?何見てんキモ・・・」
この性格の悪さを除けば、の話だけど。
「悪かったな!!」
険悪な空気を発生させる空気清浄機か何かでも搭載しているらしい。
清浄機って。
「・・・」
「・・・」
もう何も言うまい。
俺は無言で、別館にある図書室への階段を上る。
東谷も特に話しては来ない。
「・・・失礼しまーす」
小声で図書室に入室。
あれ、いつ以来だろう。久し振りに入るな。
「えっと、何調べろって言ってたっけ」
「は?地域の産業とかについてとかやろ?アホなん?」
グッと、笑顔で拳を握ったけど、そこでふと。
・・・あんなに興味ないですって態度してたのに話は聞いてたのか。
という点に気付いてしまった。
・・・何それ天邪鬼すぎるだろ・・・。
ああ・・・うん、何となくコイツが分かってきたかもしれねえ。
「俺この辺の出身ちゃうから正直気乗りせえへんねんけどなあ」
そう言いながらも、本棚に書かれた書籍種類を見ながら、
『地域の社会・地理』とかいう棚に向かって、気怠そうに歩いていく。
何だかちょっと面白くなってきたぞ。
「そういえば、出身関西なんだっけ?関西のどこなんだよ」
「・・・なんで言わな(ゆわな)あかんねん」
「いや、言いたくなかったら良いけど」
「・・・大阪」
コイツ、天邪鬼っていうかなんか。
とりあえず相手の話を否定するのが癖みたいになってるんじゃねえかな。
で、こっちが退くと、向こうから来る。
「へえ、大阪か」
「お前はこの辺の人間やろ」
「お前って誰ですかねえ」
何だか思ってるより話せる人間かもしれない。
軽口を混ぜてみる。
「・・・児谷は、この辺のヤツやろ」
イラッとしてるらしい。
でもこれはお互い様だ。
俺がさっき感じさせられたイラッと感をお前も味わえバカ。
「ふっ・・・」
「・・・何笑っとんねん」
そりゃ思わず笑ってしまうだろう。
「名前」
「は?」
「俺の名前。興味ないとか言ってたくせに知ってるじゃねえかと思って」
「・・・」
東谷はその言葉を聞いて、プイッと顔を背けて、無言で本を探し出した。
その耳が赤くなってて、俺はまた笑う。
意外と、面白いやつだコイツ。
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