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お昼ご飯にエビフライとハンバーグを食べたおれたちは、片付け組にコーヒーを淹れて労った。
「おかげ様で形になってきました。」
そう微笑む母親は、何か吹っ切れたようだった。
「一緒に主人のものも捨てたんです。なんだか、新しい人生を歩めるような気がします。」
「お力になれてよかった。」
目の力を取り戻した彼女は、そっと笑みを浮かべた。
「風見さんがたくさん動いて下さって。物が無くなると、今までの自分と違うんだって・・・そう思えたんです。」
「おれも新しくなった部屋を見てもいいですか?」
「はい、是非。」
物が捨てられた部屋は、随分広く感じた。
「お母さん。もし可能ならカーテンとベッドシーツ・・・買い換えませんか?」
「そうだな。俺も賛成です。新品に変更するだけで印象が変わります。新しい門出に、車を出しますから買いに行きませんか?」
薄汚れたカーテンやベッドシーツは、まだ過去を引きずっているように思えた。洗うのではなく、買い換えることで運気が上昇するような気がした。
「布製品は、埃を溜め込みます。洗ってもいいんでしょうが、いっそのこと気分転換に一新するのもいいのではないでしょうか?」
買い物は、美湖ちゃんとお母さん、風見さんで行ってもらうことにした。
おれは、どうしても気になったことがあって、残りたかったのだ。
お母さんとお出掛けが嬉しいのか、美湖ちゃんは飛び跳ねている。微笑ましい姿を見送ってから、おれはぐいっと腕まくりをした。
------------※ ※ ※------------
「ふー・・・。」
壁紙を漂白し、カビを落としたら清潔感が出てきた。長い間、ゴミが堆積することによって色が変わった床も、ワックスをかけて綺麗にした。汚れきったトイレと洗面台も、ピカピカに磨いた。キッチンのシンクと浴室は手付かずだが、うちでお風呂に入ってもらっているから、差し当たり今夜は問題ない。
おれはどうしても今夜から使えるようにしてあげたかった。日曜日は唯一、仕事がお休みの日と聞いていたからだ。
夜、お母さんと一緒に過ごせる日なのに、まだ不潔な部屋であって欲しくなくて、必死に掃除をした。
ひと段落したところで、3人が帰ってきた。はしゃぎ疲れて寝たという美湖ちゃんをおれたちの寝室に寝かせてきた風見さんは、部屋が綺麗になったのを見て微笑んで、頭を撫でてくれた。
早速買ってきたカーテンやベッドシーツ、上掛けを変えると、みるみるうちに今までの部屋の印象から変わっていった。
鮮やかな色合いが、これからのふたりの未来を表しているようで胸が熱くなった。
「本当に・・・ありがとうございます。」
涙で喋れなくなっているお母さんの背中を優しくさすって、励ます。
「もう少しですよ。あと少しで、生まれ変わります。」
「そうですね、私、頑張ります。」
鼻をすすりながらも微笑んだお母さんは、とても輝いていた。
------------※ ※ ※------------
おれたちは、部屋に戻った。そっと風見さんに抱きつく。
「もう、大丈夫かな?」
「大丈夫。もう、変われたよ。」
車の中で、もう一度昼間に働ける仕事を探すと言っていたと、風見さんが微笑んで教えてくれた。
「美湖ちゃんのために、見つかるといいね。」
「そうだな。」
そう言って、力強く抱きしめ返してくれた。
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