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笑顔で言ったのに、快さんの顔はさっきと変わっていなかった。
そして、俺の右腕を指さして、
「イチは嘘つく時は右手を握る。」
「はっ?」
驚いたのは、癖を指示されたことに対してじゃなく快さんが急に抱きついてきたからだ。
「ホントに、無理は止めてくれ。」
そう言った快さんは少しだけ震えているような気がした。
でも、抱きしめられているから顔が見えない。
「え、あ、俺は、。」
「無理だったら途中で抜け出してもいいから。」
一応は俺の誕生日パーティーなのに、抜け出しても大丈夫なのか?
そんな事、今の状況では言えないけど。
まぁそれより言われた癖、気を付けないとな。
「快さん、分かって無いわけないから……。」
そう言って、腕から抜け出し快さんを見る。
「だから、笑って、な。」
俺も笑うからさ。
そんなしけた顔は、快さんには似合わない。
「分かったよ。」
俺が笑うと、快さんも笑った。
「風呂入るから……。」
「あぁ、分かった。」
俺の袖を緩く掴んでいた手を離した。
心配そうに見つめてくる快さんに背を向けて廊下を歩く。
お風呂場へ向かう素振りを見せ、裏庭に向かう。
あそこは俺の大切な場所なこともあって、木城も快さんも絶対に入ってこない。
向かう途中で、煙草を拾って。
着いた庭にはいつもの通り、普通の和風の家には植えていない薔薇や何やらが沢山植えてある。
これは俺じゃなく、前の躾役が植えたものだ。
名前は知らないが、ここの花は綺麗で気に入っている。
ここにいれば少しは安らぐが、全てがそうなる訳では無い。
煙草を取り出す。
最近は、そんなにイライラが増すことなんてなかったから吸っていなかった。
それに、ヤオさんに止められていたし。
苦いのは死ぬ程嫌いだが、気を紛らわすには一番の方法だ。
「…フゥ……ん、苦い……。」
気づけば1時間ほど立っていた。
これはまずいと部屋に戻ったが、これが駄目だった。
タバコの匂いを散ら付かせ、風呂に入った形跡も無い俺。
「あれ、イチ?遅いから心配したよ。」
いつもより笑うところを見ると、結構怒っていることが分かる。
近くに置かれたコップを見て、ずっと待っていたことが分かり申し訳なくなった。
「明日、一緒に学校行こうか。」
「は?」
笑顔のまま、そう言った快さんを凝視する。
なんの為に?頑張って理由を探すが見つからない。
俺が固まったままでいると、
「それと、あまりやらない方がいいよ。」
そう言って、俺のポケットの煙草を取り上げた。
「じゃあ、おやすみ。」
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