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ぼくの初恋(ふじいゆきはる・10歳)
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2、あっくん
大げさかもしれないけれど、あっくんはぼくの全てだ。
一年生の時からずっと同じクラスで、ぼくたちは何をする時も一緒にいたし、これからだってそれが続くって思ってた。
あっくんは、地味でネクラなぼくなんかと違ってすごくカッコイイ。顔はもちろんだけど、明るくて、スポーツができて、背も高くて(後ろから三番目!!)いつもクラスの中心にいる。
なのに全然いばってなくて、意地悪とか絶対しないし、女子にだって優しい。なんと言っても女子に優しくできるってのが大人っぽくてたまらなくいいのだ。あと、見た目とかで人をからかわないのも他の男子と違ってかっこいいんだ。
よく「好きな子の欠点を10言えないと本当に好きじゃない」とか言うけど、あっくんには欠点がない。あっくんはいつも完璧だ。
勉強はできないけど、勉強のできる男子って逆にカッコ悪いし。たまにこけたり、ドアにぶつかったりしてるけど、そのあと照れて笑うところがすごく可愛い。掃除中にふざけて先生に怒られる姿だってワイルドだ。給食で残ったプリンを取り合って真剣にジャンケンしてるのはちょっとカッコ悪いけど、それだけ。
うん、完璧。
そんな完璧なあっくんが、なぜかぼくを特別扱いしてくれる。ほかの男子にするようにふざけたり競ったりしてくるんじゃなくて、ただ一緒にいてくれる。
二人組を作る時は絶対ぼくのところに来るし、グループを作るのだって一番にぼくに声をかける。
そして、ぼくにだけとっても優しい顔を見せるんだ。この顔は他の誰にも見せない。ぼくのためだけの優しい顔。「微笑み」ってこんな顔の事を言うのかな。
たぶん、あっくんはぼくの事を好きだ。
いや、絶対に、ぼくの事を好きだ。
ぼくもあっくんの事好きだから、ぼくたちは「両想い」だ。ちゃんと言葉にして確かめたわけじゃないけど……でもわかる。ぼくたちに言葉なんかいらない。
ぼくの中で、あっくんが「仲良し」から「特別」な存在にに変わったのはいつからかわからないけど、ちゃんと意識したのは三年生の社会見学の時だった。
あの日、ぼくたちはプラネタリウムに行った。
あたりが暗くなって星の説明が始まった時、肘掛に置いたぼくの右手にあっくんがそっと左手を重ねた。
あっくんがあまりに優しく重ねたもんだから、なんだかドキドキして、ぼくは手を動かす事が出来なくなった。途中そっとあっくんを見たけど、真っ暗でどんな表情をしてるのかわからなかった。ただ、あっくんの瞳に星が映って濡れたようにキラキラしてるのだけが見えた。
明るくなる前にあっくんはぼくの手をギュッと握って離した。
明るくなってから見たあっくんの顔は真っ赤だった。それを見たらぼくも顔が熱くなって、胸がキュッとなった。
もっと手を繋いでいたかったって思った。
あの頃……ぼくたちは言葉なんかなくたっていつも思いあっていたし、約束なんかしなくたっていつだって一緒にいれたんだ。
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