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☆Temperage Chocolat~ルセット
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Temperage Chocolat(トンペラージュ・ショコラ。ショコラのテンパリング)
1:ショコラを細かく刻んでボールに入れて、湯煎にかけて溶かす。
2:溶けたショコラの温度が高すぎないように注意する。
3:ショコラをマーブル台の上に流す。
4:パレットナイフでショコラを薄く広げる。
5:手を休めないようにして練りながら、冷ましていく。指の甲でショコラを触ってみる。そのとき、少しでも冷たさが残っていればOK。
6:この時点でもったりとしてくる(重く感じる)ので、すぐに寄せ集める。バッシンヌに戻し、一度よく混ぜ合わせる。
7:ショコラを硫酸紙、またはマーブル台かバットの上に少し塗る。4~5分でショコラが固まれば、きれいに結晶化された状態。
8:今度はそのバッシンヌを湯煎にかける。4~5秒でOK。すぐ湯煎から外して一度よくかき混ぜる。7と同じようにテストを行う。4~5分で固まればテンパリングの完了。
「ショコラはとってもデリケートなもの。ショコラをコーティングや型に流し入れて作る場合、ただ単に溶かしたものを使うと、見た目にも悪く、ざらざらと口どけの悪いショコラになってしまう。そこで、必要なのがテンパリングだ。テンパリングは、まず、ショコラの中に含まれるすべての粒子をバラバラにするために溶かすんだ・・・」
リュカはショコラのテンパリングを目にも留まらぬ早業で展開していくから、瑠衣はついていくのがやっとのほど。
専門学校時代、瑠衣は専攻科を受講していた。また、卒業フェスティヴァルでショコラのテンパリングをやっていたけれど、テーブル担当の教諭からの厳しい指導でちんぷんかんぷん。
「湯煎する温度は50~58度。そして、28~29度まで下げていく。最終的に、31~32度だ。これは、セミスウィートタイプ。イヴォワール(ホワイト)とショコラ・オ・レはそれよりも低い温度で対応しなければいけない」
「ショコラって一通りかと思っていたけど、違うんだね」
「イヴォワールとショコラ・オ・レは、48~50度で湯煎。26~28度まで下げて、最終的に30度にならないように温度を上げていくのが重要になってくるんだ」
リュカやダヴィッド、マルセルはそれぞれのテンパリング方法を持っている。
また、リヨンのクリュゼ兄弟も例外ではない。下唇で温度を感じ取ったりしていたり、手の甲で温度を感じ取ったりしていた。
「また、艶が消えかかったら、テンパリング完了と見なしてよいだろう」
艶が消える。それは少し、もったりとした感触と言っていいだろう。
その技法は、玲央やその世代のパティシエ・ショコラティエの技法。
マルセルはMendiant(マンディアン)を作っている。
隣ではダヴィッドはタルトを手掛けている。
リンゴのタルト、タルトタタン、タルト・オ・シトロン、タルト・オ・リュヴァルブ、タルト・オ・フリュイ、タルト・ノルマンディ、タルト・ショコラ・・・
「少し、遊び心を入れてみたんだ」
ダヴィッドはいつものタルトにグリーンを入れてみたりしている。
しかし、あくまでもトッピング程度。味を変えることは厳禁だ。
それでよくディミトリからの叱責を受けることもしばしばだ。
マルセルはヴァローナのショコラを選り好みしながらテンパリングに余念がない。
どのショコラが酸味が強いか、苦みが強いか、甘みが強いか。
「托鉢修道会の意味合いを持つんだ。ドミニコ会、フランシスコ会、カルメル会、アウグスティノ会の修道服をイメージする」
共に、修道服は独特。通常はスータン=カソック(司祭服)が主流ながら。
教区司祭はスータンが基本。
「それと、ドライフルーツやナッツが命なんだ」
ヘーゼルナッツ、ピスタチオ、レーズン・・・また、場所によってはドレンチェリー、いちじく・・・
「僕のショコラの堅さの見方。ダヴィッドやアンリたちは唇、手の甲などで確認している。ショコラの堅さは、艶が少しずつ消えてきては、重たいなと感じたら、固まりどきなんだ。お爺ちゃんに教わった技法なんだ」
「レオナールさんか。ここの名誉パティシエだったんだろう?」
「ウイ。ルイ、僕が形を作っていくから、ドライフルーツやナッツで飾ってくれ」
マルセルは、タブラージュ(マーブルの上でのテンパリング)で温度調整を済ませたショコラを紙で作ったコルネに入れる。硫酸紙を敷いたプラックに3cmくらいの円形に絞っていく。
かなり、神経を使う。
瑠衣も、ナッツ類のトッピングを済ませた。
マルセルは次に、ガナッシュ、トリュフ、オランジェット、グリオット、パレ・オ・ドールを仕上げなければいけない。
「ルル、レイモンを休憩にまわさないといけない。俺と一緒に販売をやってくれ」
フランソワから声がかかった。そして、レイモンは休憩に行く。
マルセルは手帳を取り出した。
「二週間前のグリオットがあるんだ。こっちを出さないと意味がない」
グリオットを使ったショコラは、作ってから、二週間が食べごろ。
作りたては、フォンダンのざらつきが残るため。二週間ぐらいしたほうが、フォンダンが完全に液状化して、口どけが良くなる。
今日、作ったグリオットの日付も記さなければいけない。うっかりと度忘れをしたため、ディミトリからの容赦ない叱責を受けたこともしばしば。処分することも少なくなかった。
マルセルばかりではない、ロベールも、ダヴィッドも、リュカも例外ではなかった。
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