アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
始まり6
-
『可愛い』なんて言葉はもちろん、人から笑ったほうがいいなんて慣れない言葉をかけられた僕は言葉に詰まった。
携帯を谷中君につき返し床を睨む。少しだけ、ほんの少しだけ頬に熱を感じながら僕は谷中君に「帰る」と告げた。鞄を受け取ろうと手を伸ばせば谷中君は何を思ったのか僕の宙に浮いた手を掴み、優しく握り返してきたのだ。
「ひゃ!?」
谷中君の大きな手は僕の小さな手を優しく包み込み、「小さな手だな」と優しく笑った。
そのまま手を下に下ろし繋いだまま教室を出ようとしたから、僕は足に力を込めて引っ張られないようにしたが、大きな手に身長差に体格差もある僕に止めることは無理なことだった。
「あ・・・・た、たに、なか君!」
必死に絞り出した声は谷中君の耳にかろうじで届いたようで、足を止め振り返るも繋いだ手が放されることはなかった。
胸の辺りを抑え込み落ち着こうにも心臓はバクバクと大きな音を上げ胸板を打ち鳴らす。
「なに?」
「あ、あ・・・・の、て、手を・・・・」
先ほどよりも顔が熱く、肌にはジワリと汗が滲む。きっと手も湿っているに違いないと思い僕はひたすら谷中君に手を放すようお願いするも、谷中君は分かっているのか分かっていないのか、一向に手を放そうとはしなかった。
身長の高い谷中君は腰を屈め僕と目線を合わせ、
「体調悪い?大丈夫?」
なんて・・・・心配してくるのだ。
手を握る力は以前変わらず、振りほどこうにもほどけない。しまいにはお互いのおでことおでこを合わせようとしていたので、僕は僕自身が出せる限りの力を込めて谷中君を押してしまった。床へと尻餅をつく谷中君。その拍子に握られていた手が解放された。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
6 / 322