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僕は言葉を失い目の前の谷中君を凝視した。
なんで?なんでいるの?だって僕、遠回りして時間をかけて来たのに・・・・君を避けたのに
微かに跳ね上がる心臓。
じわじわと攻め寄る歓喜。
脳裏に浮かぶは昨日の出来事。
「郁?平気?腫れてる・・・・」
するりと伸びた片手が僕の頬を撫で瞼をこする。
上下する肩にほんのりと赤く染めた頬、重力に逆らうことができない汗、僕を心配する大きな瞳、聞きなれた谷中君の声。
僕の耳にストンと落ちてくる。
「う、ん・・・・だいじょ、ぶ・・・・」
いつの間にか電車は行ってしまい、次の電車が来るのを待つ人がホームに腰を下ろす僕ら二人を迷惑そうに見ている。
駅員が「どうしましたか?」と走ってきたが動けない僕の代わりに谷中君が説明していた。今しかない。僕はそう思い腰をあげ改札口目掛けて走り出そうとした瞬間、
「逃がさないよ」
「ひっ」
僕の行動を読まれていたのか、谷中君に腕を掴まれその場から動けなくなった。
「逃がさない」と言った谷中君の声はいつもより低く、もしかしなくても機嫌が悪いことが理解できた。
鞄を胸の前に抱えてぎゅっと抱く。
そしていつか谷中君から言われた言葉を思い出す。
「自分を守ろうとした時、何かを胸に抱え込む」
僕は無意識に鞄を抱え込んだり胸の前に両手を置き相手と距離を取っていた。
僕は友達に恐怖している。
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