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きっと、谷中君が怒った理由は僕が髪を勝手に切って猫耳が似合わなくなるかもしれないから。
そして九重さんの言うことを聞いて谷中君には一言も話さなかったから。
僕が好きとか、そんなんじゃない。
胸の奥が何かに締め付けられる感覚がして、僕は胸を抑えた。
「郁・・・・可愛いよ。図書委員の仕事は先週で終わったんでしょ?放課後、家に来てよ」
許された谷中君はにっこりとほほ笑み僕に揺るがない姿を見せた。僕は素直に頷きまた一緒に歩き出す。谷中君が僕の髪に触れ、「ほんと・・・・可愛い」と再度呟いた。
「あ、ありがとう?」
「はは、なんで疑問形?」
谷中君の笑う顔が大好きだ。
まともに直視できない。いつも何を話していたのか、係長の事を話せばいいと分かっていてもなかなか言葉に出来ない。呼吸すらまともに出来ないのに、自覚するもんじゃないと思ってしまう。
学校に着き靴を履き替え教室へ向かう途中、谷中君が他のクラスの男子生徒に呼び止められた。
よくあることだから僕は先に行くことを伝え教室へ向かおうとして足を止めた。
この間みたいに女子生徒に絡まれたくない僕は屋上へと向かった。
まだ誰もいないであろう屋上の扉前で男子生徒が倒れていたのだ。
「えっ・・・・だ、大丈夫ですか!?」
僕はすぐに駆け寄り身体をゆすった。
あ、温かい!よかった!生きてる!!
ゆすったことで倒れていた人はゆっくりと身体を起こし、
「・・・・んだよ・・・・気持ちよく寝てたのに・・・・あんた誰だよ」
生きていたのは良かったけど倒れていた訳でもない彼、他校の制服を着て僕を睨んでいた。
オールバックにした黒い髪に耳には数か所のピアス、前をはだけた制服の隙間から見えるシルバーのシンプルなネックレス、顔は意外にも綺麗に整い女子にモテる顔立ちだった。
「あ・・・・ぼ、僕は源道郁と、言います・・・・あ、あなたが倒れてるかとお、思って・・・・ご、ごめんなさい・・・・」
もう謝ることしかできない。
すでに僕の腰は抜け鞄を胸の前に抱きかかえ相手と距離を取ることしか出来ずにいた。
「あ~そんなビビんなよ。取って食おうってわけでもないんだし、てか起こしてくれてありがとよ。職員室行くの忘れてたわ。・・・・じゃあな郁ちゃん」
そう言って彼は僕の頭を勢いに任せ撫で繰り回し階段を下りて行った。ついでに言うと下の名前で呼ばれしかもちゃん付けされてしまった。
数分だけそこから動けずにいて、なんとかチャイムが鳴る前に教室へと行けた。
そして教室へ入るなり皆が僕に注目し始めた。
いつもと変わらない朝のはずなのに、なぜ皆は僕を見るのだろうか。
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