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5−18
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強い痛みが全身を駆け抜ける。
今までに味わったことのない感覚。
逃げ出したいと思うも谷中君の顔を見れば僕から逃げる選択を消し去ってくれる。
とても、とても満足した表情を浮かべて僕の事を見てくれていた。
そんな谷中君に僕はお礼を伝える。
「んにゃぁぁぁ!」
「あははは、郁も気持ちいい?俺も、・・・・すごく、良いよ」
尻尾を付けたことで僕は完全な猫へと成る。
涙は流れるけどこれは恐れや嫌悪、否定の涙では決してない。歓喜の涙であるのだ。
僕は、地味でのろまで人との会話もままならない、ぼっち人間だ。誰も喜ばすことも出来ない、なり損ないの人間。
だけど今この瞬間、大好きな人を喜ばす事が出来ている。嬉しい、今僕は一人ではない。
僕は谷中君に抱きつき鳴いた。
首にしがみつき谷中君の首筋に歯を立て噛みついた。
強く、血が出るくらいに、僕の物だと主張するかのように。いけないことをしていると思ったけど、谷中君は僕を引き剥がすわけでも嫌だと言うこともなく、寧ろ僕を抱きしめ谷中君も僕の首筋に歯を立て噛みついていた。
だけど僕みたいに力を込めて噛みついてはいなかった。
優しく、僕を気遣うように。
それは、僕の勘違いでもいい、谷中君からの愛しさを感じた。
「た、谷中君・・・・谷中君・・・・」
僕はひたすら好きな人の名前を呼んだ。
他の誰でもない、谷中君の名前を。
首筋から口を離せば血が流れた。
僕は我に返り谷中君に謝った。
「あ・・・・ご、ごめんなさい!ぼ、僕、こんなになるなんてお、思わなくて・・・・あぁ、ご、ごめ、うぅ・・・・なさ、い」
涙が止めどなく流れ落ちる。
谷中君を傷つけてしまった。
僕の好きな人、大切にしたいのに、僕は谷中君のそばに居たいのに、独占という感情が僕の理性を奪う。
だけど谷中君は僕を責める事はしなかった。
「郁、泣かないで。悪いと思うなら最後まで舐めて」
「えあ・・・・う、うん・・・・」
それだけで許してくれるの?僕は、まだ谷中君のそばに居られるの?
僕は素直に従い谷中君の首筋に流れる赤い血を舐めた。
鉄の錆びた様な味が口いっぱいに広がる。嫌な味、だけど谷中君の血だと思えば何のことでもない。
僕は進んで舐め続けた。しばらくすれば血は簡単に止まり僕は口寂しくなる。
血はすでに止まっているが僕は谷中君の首筋を舐め続けた。
その間、谷中君は僕を抱きかかえ優しく頭を撫でてくれていた。その優しさと温かさに僕は甘え目をつむれば眠気が襲ってきた。
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