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5−19
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眠ってはいけない、そう思えば思うほど僕は眠りの渦に飲まれていく。
「たに・・・・なかく・・・・す・・・・ん・・・・」
「え?郁?」
※
「もういらない」
「え?」
突然谷中君は僕をいらないと言った。
どうして?なんで?僕ちゃんと言うことを聞いたよ?
だからいらないなんて言わないでよ、お願いだから。
僕を、僕を一人にしないでよ・・・・
どんなに泣いても谷中君は僕の元には戻ってこない。
叫んでも土下座しても、谷中君は別の男の人を連れて歩いて行ってしまう。
「この子が一番なんだ。郁はただ鳴いて猫真似をするだけだろ?そんなのつまんない、飽きちゃったからいらない」
そう言って谷中君は僕の元から消え去った。
虚無感が僕を埋め尽くす。
この後は?何をすればいい?何も出来ない、僕は谷中君さえ居ればよかった。どんなに文句を言われ疎まれても、君さえ居てくれれば僕は強くなれた。
だけど・・・・君が居なくなった後の僕はどうすればいいの?何もできない、僕は・・・・何?
※
「郁っ!!」
名前を呼ばれハッとした。僕はいつの間にか眠り夢を見ていた。
「大丈夫?すごくうなされてるし、泣いてる・・・・」
僕をベッドに寝かせてくれていた谷中君、猫耳も首輪も尻尾もない、眠っている間に谷中君は除けていてくれたみたいで僕はいつもの地味な姿をしていた。
「郁?大丈夫?」
心配そうに僕を見る谷中君、僕は思わず抱きついた。
谷中君が遠くへ行ってしまわないように。
「夢を、怖い夢を・・・・見て・・・・た、谷中君・・・・僕を、僕を一人にしないで・・・・」
夢の内容なんて覚えていない。
だけど恐怖と不安が僕を襲う。
友達でもない、僕はただの谷中君の猫に過ぎない。
それでも一人が寂しいなんて、なんて僕は我が儘な人間なのか。
優しい谷中君、僕の背を優しくなで「大丈夫だよ」と言ってくれた。
それだけで僕は安心してしまう。
もうあの時の1人の僕に戻ることが出来なくなっていた。
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