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6−3
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笑顔の谷中君。
僕の心臓はさっきから激しく打ち鳴らしっぱなしで限界を迎えている。
喉の奥から這い出てきそうな言葉を飲み込み学校へと向かう。
まだ人が少ない電車に乗り座席に座ろうとした瞬間、谷中君は他校の女子生徒に呼び止められた。
セミロングの綺麗な黒髪に雪みたいな白い肌、男の僕より華奢で『可愛い』が似合う女の子。
直ぐに告白だと分かった僕は目線を逸らし女の子たちに谷中君を譲った。
「あ・・・・僕、先に行ってるから・・・・」
僕だけが電車内に残り、女の子と谷中君は電車から降りてしまう。
僕が止めることは出来ない。
女の子の告白なんて相当な覚悟をしてのことだ。
僕が邪魔していいものではない。
「ごめん」
谷中君はそう言い残し扉が閉まり電車は僕だけを乗せて走っていく。
本当は嫌で仕方がない。
だけどそれを言って何になる。
所詮、僕は谷中君の愛玩ペットに過ぎない。
ペットが出しゃばっていいわけがないのだ。
拳をぎゅっと握りしめ爪が肉に食い込んだ。痛みで直ぐに力を緩め顔をしかめる。目から涙がこぼれそうで僕は目をつむる。
いつも降りる駅の二駅前、停車し扉が開いて声をかけられた。こんな所で声をかけられるなんてと驚きつつ顔を上げれば同じクラスメイトの周防君が立っていたのだ。
「おはよう郁ちゃん、一人?一つ早めに来るもんだな~」
「お、おはよう・・・・周防君」
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