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〇『スキナキモチ』/柊side
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〇
近所のスーパーのチャリ置き場にチャリ止めて…頼まれた買い物に走る。
「オウ、ちょっと待て!」
ん?
……俺か?
足を止めて声のする方を見る…と。
そこにはお世辞にも人相がイイとは言えないイカツいオニイさん達が…五人。
「ヒイラギ、だな?」
「…だったら?」
真ん中にいる一番人相の悪いヤツが一歩前に。
「テメェ…俺の仲間を痛め付けてくれたらしいな?」
「…どいつ?」
そいつの眉がピクッと動き、回りの奴等にアゴ向けて。
「殺れ!」
合図と共にヤローどもが飛び掛かってきた。
突進してくるヤツにケリ入れて、振り向きざま次のヤツの腹にヒジ。
横のヤツの拳が頬にヒットしたけど、その腕ねじって顔面にヒザ入れて…最後のヤツにはハイキック。
「やるな…。」
残るは…最初の人相悪いヤツだけ。
「…楽しませてくれよ?」
そしたら…
ズボンのポケットに手を入れ、出したその手には…
おぉ!
「物騒なモン持ってんなぁ…。」
鈍く光る…バタフライナイフが握られてる。
刃渡り…
ザッと十八cmってトコ?
刺されたら…相当痛いじゃんかよ!
「テメェ…。」
にじり寄ってくるヤツのその目は…ちょっとばかしすわってる。
「ブッコロス!」
俺の腹目掛けて突っ込んでくるヤツをかわし、ナイフ振り回す手を避けながら膝にロー入れて、手の甲にハイキック!
我ながら…ナイスだ。
カシャン!
コンクリに落ちたナイフの、乾いた音と共に低い呻き声がする。
落ちてるそれを拾い持ち主の元に近付くと。
「ヒィッ!」
青ざめたソイツが引きつった声を上げた。
「…助…けて!」
尚も近付くと、ヤツはジタバタしながら必死に植え込みに逃げる。
「俺さぁ…ケンカ強えーけど、好きじゃないのよ。」
開いた刃先をソイツの頬にピタピタと付けて。
そして…
振りかぶった!
「ギャーッ!」
ドスッ!
突き刺さったのは…ヤツの足元。
モチロン土の上ね。
「二度とそのツラみせんな。」
さっきまで倒れてたヤツラが起き上がり、おびえて動けなくなった目の前のヤツを連れて逃げていく。
「…フン。」
その様を見ながら俺は…疲れてその場に座り込んだ。
「はぁ…。」
深い深ぁーい息を吐くと…
背後に人の気配が!
神経の高ぶってる俺は振り向き立ち上がると背後にいるヤツの襟口を引っ掴んだ。
「わっ!?」
ドサドサ!
…と手元からスーパーの買い物袋が落ち足元をリンゴが転がっていく。
俺は…
ソイツの顔に見入ってしまった。
なんて…キレイな…。
「…痛い。」
形の良い唇がそう動き…よく透る声がこぼれた。
「あっ…ゴメン!」
締め上げてた手を外すとソイツは襟口を直しながら買い物袋を拾う。
俺は慌てて足元のリンゴを拾って手渡した。
「ゴメン…つい。」
「いいよ。」
短くそう言うとソイツはポケットからハンカチを取り出し、袋からミネラルウォーターを出した。
それをハンカチに含ませてからおもむろに…俺の唇の端にそっと触れた。
「イテッ!」
「血が出てる。」
俺は…
ドキドキしながらされるがままになりただ黙って、ソイツの顔を見てた。
色、白いんだな…。
まつ毛長いし。
目は淡い茶色で髪はサラサラな栗毛。
とにかく…キレイに整った美形、だ。
「これやるよ。」
そう言って…
ミネラルウォーターの残りと、ソイツのハンカチを渡された。
「えっ…?」
「早く冷やした方がいいぞ。」
俺の横を通り過ぎたソイツは奥に停めてあるチャリのカゴに荷物を乗せると軽快に足元のスタンドを外した。
俺は…
「…待って!」
そのハンドルを掴み、強引に止めさせた。
「何?」
「えと…名前…!教えて…下さい!」
キョトンとしてる顔がまた可愛い!
ドキドキしながら答えを待ち、あ!と思い付け足す。
「俺、柊祐一郎って言うんだ!…キミは!?」
そしたら急に…
ソイツが笑い出して。
「お前が…柊か。」
「…え?」
更にクスクス笑う姿を俺は意味も分からず見つめる。
「笑い過ぎたな?ごめん。…きっと近い内にまた会うよ。」
「え?なに……?」
謎の言葉に思考が止まる。
そうしてるうちにソイツはチャリに跨がってそのまま走りだして。
「あ!おい……っ!」
「またな!柊!」
そう言って…華奢な後ろ姿が遠のいて行った。
近い内…って?
◇◆◇◆◇◆◇
「ただいま。」
部屋のドアを開けると俺のセミダブルのベッドから掠れた声が。
「…遅い…どこまで行ってたんだよ!」
不機嫌丸出しな様子で答えた。
布団にくるまり高熱で赤い顔をしてる俺の恋人、だ。
「悪かったよ。スーパーで絡まれちゃって。」
「…なんだそれ?」
額に乗せたタオルで顔を拭きながら、さっきの出来事を説明する。
モチロン…
その後の出会いは内緒で。
「…そんなの…お前の日頃の行いが悪いんだろ。」
フン。…と顔を背けられる。
慣れはしてるけど…相変わらず冷たいね、キミは。
「…しかも一発もらうなんて、情けない。」
「…たまには心配してくれてもイイんじゃね?」
「…するか!」
まぁね。
布団の中の俺の可愛い恋人は…ただ今大絶賛発熱中で。
出掛ける前に体温計ったら三十八度だったしで相当辛いだろうから。
買ってきたスポーツドリンクのフタを外して渡すと、ゴクゴクと喉を鳴らして飲み干す。
「ダイジョブか?」
「…ダメ。」
小さく唸り目を閉じる。
その前髪を直し額にキスして…買い物袋とタオルを持って部屋を出た。
俺の“彼氏”は…春日部弘樹といい小さい頃からの幼馴染み。
その頃はヤツの方が強かったけど今はもう立場が変わって…多分、俺のが強い。
でも…
惚れた弱みってのか?
なんだかんだ言って俺の方が尻に敷かれてる。
…そんな感じ。
台所でタオルを濯ぎ水をはった洗面器につける。
テーブルに荷物を下ろすと俺も椅子にどっかりと座り込んだ。
「…俺、愛されてないのかな…。」
ふう…と溜め息と共にこぼしてみたりして。
気が付いたら…
幼馴染みで、同じ男の弘樹を好きになってた。
半年前。
酔いに任せて…半ば強引に抱いた。
そんで…
二日前に本人了承の上、も一度ヤった。
だから俺はすっかり彼氏な気分なんだけど…
でも弘樹にずっと背中を向けられてる気がしてならない。
俺の事、そんなに好きじゃないのかなって不安になる。
「はぁ。」
俺っておセンチね。
自嘲気味に笑い…天を仰いだ。
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