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瞳
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まぶたの外がやたらに明るくて、目をなかなか開けられないでいた。
だんだんと自分がシーツにくるまって、横になっているのがわかって、普段の自分の家の布団で寝ている訳では無いことを感じて飛び起きた。
目を開けると、窓から差し込む日光が目に突き刺さった。
目だけではない。日差しを浴びた肌もヒリヒリと痛む。
なぜ肌まで、と思ったが、自分が服を着ていないのだから当たり前で、おまけに布団の中の下半身は下着すらも着けていなかった。
普段はそんな格好で寝る習慣もない。
とっさに布団を引きあげ、日光を遮りながら自分のいる空間を見渡した。
かなり大きなベッド......おそらくキングサイズという大きさであろうベッドに寝ていたようである。
日常的に寝ている自分の布団とは比べ物にならないような、手触り良く清潔そうな白いシーツと見るからに上質そうな羽毛の掛布団だった。
部屋で目立つものはその巨大なベッドと、サイドデスク程度の家具と、自分の身長程もある大きな窓だった。
壁の一面を占める窓からは容赦なく陽の光が差し込んでいたが、カーテンが無かった。
広いが最低限の家具しかなく、壁も床も白い部屋だった。
ふいに、部屋のドアが開く。
ふわふわと、長い金色の髪を揺らした細身の人物だった。
呆然としている僕を見て笑いかける。
「よかった、起きたんだ。ああ、やっぱり日光は苦手だろ?ごめんね」
壁のスイッチを操作すると、窓に電動のブラインドが降りてきた。
その人がベッドに腰掛けたため、間近にその姿を見てやっと確信できたが、長い髪と華奢な見た目で女だと思うほどだったが、何となく腰や肩のラインは男性のものだった。
しかし、セーターと緩くウェーブした長い髪の間から見える首筋は細く白かった。
「気分はどう?」
僕の目を見つめて問いかけられる。
その目が深みのある紫色の瞳をしていることに気づいた。
「......あなた、は、」
「ああ、オレの名前はリュカ。......名乗ってなかったっけ」
特に重要ではないような調子で答えられて、拍子抜けしたような気分がした。
「君は時雨君だろ?斎藤時雨君」
「なんで僕の名前......」
「ごめん、荷物確認したら学生証あったからさ」
なぜ荷物まで......、と思ったが、今の僕は服すら着ていない。
リュカと名乗る男はのんびりと答えているだけで危険な気配はないが、いよいよ状況が分からなかった。
じわじわと、路地で意識が曖昧になっていたことを思い出していた。
「あの、ここはどこなんですか。僕......何をしていたのか思い出せないんですが」
戸惑っている僕を、リュカは意外そうな顔で見ていた。
「あれ、覚えてないんだ」
「......何か......あったんですか」
僕が何も覚えていない、というのを偽りない事実と理解したようなリュカは、ニヤニヤと怪しい笑顔で僕に顔を近づける。
ふわりと、甘く濃い、花のような香りがした。
リュカが首を覆っている金色の髪を払いのけると、首筋には明らかに人の歯型と分かる傷が刻まれていた。
繰り返し何度も噛み付かれたような跡にうっすらと血が滲んでいたが、何日か経った後のような傷になっている。
「オレの血、美味しかっただろ?」
そういえば、あんなに辛かった喉の乾きと飢餓感はすっかり治まっていた。
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