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望まぬ変化 3
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青春時代、と世間では呼ばれるであろう高校生活が一年が経ったにも関わらず、俺にも陸にも彼女はいなかった。
しかし"できなかった"俺と"作らなかった"陸の間には天と地ほどの差があり、神木坂が何組のかわいい女子の告白をまた断りやがったという噂が耳に届くことも少なくはなかった。
一度、どうして誰とも付き合わないのかと聞いたこともあったが、「好きでもないのに付き合うのは相手に失礼だし、自分も虚しくなるだけじゃないかな」と菩薩の如く崇高なお答えをいただいたので取り敢えず一拝みしておいた。
これだけ顔が整っているといくらでも選り好みできるから焦る必要が無いのかと納得し、あまりの格差社会に打ちのめされるだけなのでそれ以降陸に恋愛系の話題を振ることをやめた。
そう、つまりは、陸の理想の女の子が現れた瞬間に陸は彼女持ちになるも同然で、それは何年何ヶ月も先かもしれないし、すぐ明日かもしれないのだ。
そして俺とは一気に疎遠になるだろう。
「嫌だなあ…」
素直に祝えないなんて、友達失格だろうか。
そもそも、持て余し気味なこの気持ちは、本当に友達に対してのものであるのか。
「……いや、いやいやいや、友達でしかないだろ、いやいや…」
なんだか今朝から思考が妙な方向へ行きがちだ。
きっと、クラス替えであまり話せなくなると思っていたから、また一緒になれたことで気持ちが急上昇して変なテンションになっているだけだ。
だって俺は"そっち系"じゃない。
ホモとかゲイとかオカマとか?よく知らないけど俺はそんなんじゃなくて普通で平凡な人間なのだ。
それに、ちゃんと女の子を好きになったことだってある。
─でも、思えばいつだって嬉しかった。
陸と段々仲良くなっていくのが嬉しかった。
初めて名前で呼びあった時も嬉しかった
いつも朝教室に入ると、一番に笑顔でおはようって言ってくれるのが嬉しかった。
お昼ご飯の度に一口交換し合うのが嬉しかった。
俺の一言で涙を流すほど笑ってくれるのが嬉しかった。
ふとした瞬間に、体が触れ合うのだって。
そこまで考えて、急に怖くなった。
自分が、道を踏み外しかけている気がして背筋が寒くなる。
よろよろと部屋の布団に潜り込んでスマホを手にすると、「同性 意識」「男同士 関係」「同性 気の迷い」など検索をかけまくった。
デマでも何でもいいから、何か安心できる情報が欲しかった。「恋愛」などの直接的なワードは抵抗があって使えなかった。
何度か言葉を変えて検索をした後「同性 思春期」と調べると、一番上に「思春期に同性を好きになるのは一時的な感情」であると出てきた。「よくあることだ」とも。
スライドすると他にも「一時的」「一過性」「錯覚」「疑似恋愛」などの単語が目に飛び込んでくる。
「………なーんだ」
それを見た瞬間にようやくホッとして、大きく息を吐いた。
なんだ、やっぱり一時の気の迷いじゃないか。
きっと今日の変な自分も、すぐにいなくなるだろう。
良かった。道はまだ外れていない。ああ良かった。
そう思うのに。なのに。
その一方で、俺が陸を大事に思う気持ちだって一時的な取るに足らないものだと、そう言われているような気がして、心の片隅がモヤっとした。
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