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引き攣りそうな顔を笑顔になおして榎本に向き直る。
「アイツはアレでいいやつなんですよ」
これも言い慣れたセリフだ。事実、秋人は別に不良とか素行が悪いわけではない。ただ少し、問題があるだけで。
「そんな顔しなくても、俺だってわかってるんだぞ篠宮……お前の弟が良い奴だってことくらい。ただな……」
言いづらそうに口をまごつかせる榎本に、真冬は榎本の言いたいことを即座に理解した。
「わ、わかってます……俺アイツと同じ部屋に住んでるんで。昨日も……」
思わず顔が熱くなるのが自分でもわかった。9畳の部屋を真ん中で真っ二つに分けて、薄いカーテン一枚で仕切っている。そのカーテンの向こう側から、昼夜問わず、女の……そういう声が聞こえてくるのだ。
「はぁ、兄貴がこんな初心なのにどーしてアイツはああなんだか」
顔を真っ赤にして俯く真冬を見て、呆れたように榎本は呟いた。
「本来であれば、こんなこと言うのも何なんだが……今月入って4回、校内で不純異性交遊が見つかってる。しかも全員相手が違うんだ。……それで、篠宮に頼みたいんだが……アイツに注意してくれないか」
「お、俺が……ですか?」
榎本の言葉に、思わず俯いていた顔を上げた。バツの悪そうな顔の榎本と目が合う。
「教師よりもお前の言うことの方がよく聞くんだよな、アイツ。こんなことお前に頼むべきじゃないとはわかってるんだが……」
正直、真冬は男女関係というものが苦手だ。何度か女生徒に告白されたことこそあれ、そう恋愛感情を持つまでに至らなかったのだ。男として、想いを告げられることは嬉しいが、その相手とどうにかなろうという気が持てず、自然と男女関係を避けるようになってしまった。
そんな自分が、弟に口出しできるものか。
真冬は悩みつつ、榎本を見る。榎本は真冬の反応を見て、申し訳なさそうな顔をした。教員の中でも普段は割と飄々としているこの男が、ここまで困った顔をするのも珍しい。
結局、真冬が根負けするのに時間はかからなかった。
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