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act.67 ほんと少しだけ
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ベッドに寝転んで、見上げる
目を閉じて。
初めて会った時の感覚も
初めてフジの部屋に入った時の懐かしさも
初めて連絡先を教えて貰ったときの違和感も
初めて一緒に帰った時の既視感も
全部間違っていないのだろうか
俺があの時フジに好きな人の事を聞けなかったのは、俺が一歩踏みとどまったから。
フジの部屋は、特に似ていた
匂いが同じだった
あいつが好んでた匂い。
フジに対しては……
もしかしたら好きだったから出来た事なのかもしれない…
確かに、ほかのヤツには出来ないなあ…
でも前からこの感覚は…
そうか、もう……本当にずっと前から
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座ったまま、机に伏せる
目を閉じて。
『何で…かな』
キヨ。
キヨは、俺の過去を知ってるの
俺の「知らない時間」を知ってるの?
「知らない時間」は、暗い。
ぐちゃぐちゃで、混ざり合ってる。
絵の具の色を、沢山混ぜたみたいに
分からなくなる
キヨと星を見にいった時
少しだけ、忘れちゃいけない事が、あった気がした
キヨも、思い出してたのかな
知ってるのかな
たまに、「知らない時間」が夢に出てくる
沢山出てくる
「知らない時間」の中で、「知らない誰か」と笑ってる。
「知らない誰か」の名前も、声も、覚えてない
でも、大切だったはずなんだ
…………忘れちゃ、いけない
こんなこと考えてると、苦しくなる。
自分の中に、もう一人誰かがいるような。
怖い、まだ思い出したくない
涙が止まらない
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
机に少し振動があった
『あれ……寝てた』
気怠い腕を伸ばして、スマホを手に取る
画面上には、不在着信のバーが。
『…………キヨ?』
かけ直してみようかな
『…………………。』
少し待つと、キヨの声が聞こえる
『お、フジ。急に連絡したわ』
『……ううん、俺寝てた。ごめんね?』
『いい、話したくなっただけだから。』
『……そうなの?』
『フジは、悩み事解決したのか?』
きっとこの悩みは、
キヨに聞けばすぐわかる事なんだろう
まだ……
『……してないよ』
『……そっか、解決出来るといいな』
『……うん。ありがと』
『…またな、お休み』
『またね』
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あいつはもう分かってる
俺なら解決できる事を知ってる
それでも聞かないのは、
まだ聞きたくないんだな…
そうだよな…
こんな状態で、言えるわけない
もう少しだけ、待ってる事にしたい
俺も。
…………。
『あ、うっしー?』
『おう、どーしたよ』
『もうちょっと待ってみる』
『………おう、分かった。任せるぞ』
『うっしー、今度奢る』
『そう言うからには、高くつくぞ?』
『そっちも任せろ。』
『おっけ、またな。』
『はーい』
うっしーには、感謝だわ。
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