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追いかけられる
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* * *
栗山 雅弘は仕事に追われていた。18時には帰宅したい。佳那が待っている。そう思えば思うほど、次々と来る仕事にイライラした。
そして追い打ちをかけるように、ある男が雅弘の肩を叩いた。
あの頃、あの日、あの時、真っ赤な死体を見た時と同じように。心臓が口から出る感覚に襲われる。息が、息が上手くできない。
その男は嘗て佳那の姉を自殺へと追いやったメンバーの一人であった。違う部署へ配属され、顔を合わせることはない、そう思っていたのに。
嫌な予感。寒気が走る。
隠さなければ。
何を?
佳那を。佳那と暮らしていることを。
もしかしたら…その予感、当たらないでほしい。
「まだ、ここにいたのかよ?出世してるのかと思った」
雛形 翔人(ひながた はやと)は笑顔である。その胡散臭い笑顔が怖いと今になって気づく。
雅弘「出世は大変だろ…楽して生きるんだよ」
と、そこら辺にありそうな回答をすると、雅弘はバッグにパソコンを突っ込んだ。
雛形「なぁ、また新しい子でも見つけたの?」
冷や汗が止まらない。全て知っているかのように、雛形の視線が刺さる。
雅弘「なんのことかな?」
震える声が相手に悟られないよう、雅弘はぎゅっと唇に力を入れた。
知られたくない。佳那のことを。佳那を守らなければ。
自分の罪が。真実が佳那に知られるかもしれない。
佳那のため。いや、自分のため。
矛盾する気持ち。
今のこの生活が続けばいいと願う。
後ろから足を掴まれ、過去の悪行が離してくれない。嫌だ嫌だと、逃げるが、追いかけてくる。
雅弘は荒く息を吐きながら、会社を離れた。
登場人物──────────
栗山 雅弘(くりやま まさひろ) 24歳。男。佳那を引き取った。佳那の姉の自殺の原因が雅弘らのいじめによるものだった。佳那を愛している。
佐武 佳那(さたけ かな) 親はいなく、唯一育ててくれた姉を中学2年で失う。お姉ちゃん大好き。雅弘に恋心を寄せている。
杉原 修也(すぎはら しゅうや) 雅弘の同期
雅弘に行為を寄せている。
竹内 涼平(たけうち りょうへい) 佳那の同級生。 佳那を好いている。
中川 愛華(なかがわ あいか)雅弘の上司の娘。友人。雅弘を好いている。笑顔の下に歪んだ性格がある。
雛形 翔人(ひながた はやと)佳那の姉を自殺へと追いやったメンバーの1人。
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