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番外編11ひと夜咲く純白の花の願い
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突然訪問してきた雪哉は、靴の主を見つけるために上がり込んできた。百目鬼の制止も聞かず、あまりに突然で隠れる暇もなく、寝室のドアが開いた。
ーガチャっ!
開けられた瞬間甘い匂いがして、目があった瞬間、雪哉が言った。
雪哉「ワオ!、凄い美人、ガイジンさん?ハーフ?」
キラキラした瞳でマキを見つめた彼は、お菓子の甘い匂いのする優しそうな人だった。
そして。
今何故か、リビングで3人てソファーに座ってる。
L字のソファーには、毛布が1枚。
さっきまで百目鬼さんが僕を避け、ここで寝ていたのが分かった。
雪哉は、マキの隣に座り、まじまじとマキを観察している。
マキのことを綺麗だと言った雪哉も、綺麗な顔をしている。
ケーキ屋のパティシエだという雪哉は、ケーキのように柔らかく微笑む美形、甘い匂いがほんのりしてとても優しそうなお兄さんだった。
百目鬼が台所からお湯で絞った温かいタオルを持ってきて、雪哉の顔に押し付ける。
百目鬼「ほら、鼻赤いぞ」
雪哉「ありがと神」
温かいタオルで頬を温める雪哉。
外はかなり寒い。
百目鬼は迷惑そうなのに優しい瞳で雪哉を見てる。
百目鬼「雪哉…、悪いが、今日は帰ってくれないか…」
雪哉「嫌だよ、せっかく〝準備〟してきたのに、神は一人で楽しんでたとか酷くない?本物のマキ様だよ、俺だってお友達になりたいよ」
どうなることかと思ったが。百目鬼が〝仕事で先生様から預かった〟と、マキを紹介すると、雪哉は、意外な反応をした。
なんと、調教師マキの存在を知っていたのだ。
雪哉「ずるいな神、マキ様と知り合いならなんで教えてくれなかったの?」
百目鬼「知るか、俺は〝仕事〟で先生様と知り合いなだけだ」
雪哉「えー、神も一回調教してもらったらいいのに、あの暴走癖治るかもよ」
やっぱり、この二人できてるんだ、それに、百目鬼さんはまだ暴走癖治ってなかったのか…。
雪哉「マキ様はね、あの先生様の弟子なんだよ。SもMも調教して幸せにするって言われてるんだよ。会員になるには審査は厳しいし、人気あり過ぎて予約取れないんだよ」
百目鬼「…」
苦い顔の百目鬼は、1年半前の事を思い出してるのだろう、誤魔化すようにビールを流し込む。
雪哉「あっ、神、俺もビール飲みたいな。いつもの持ってきたからさ」
雪哉が紙袋を見せて柔らかく微笑むと、百目鬼は追い返すのを諦めて冷蔵庫にビールを取りに行く。
雪哉は、紙袋を開け、四角い箱を出した。
マキか四角い箱を見ていると、雪哉はマキを見てニッコリ微笑む。
雪哉「神はね、あの顔で甘いのに目がないんだ、マキ様は甘いの平気?」
マキ「大好きです♪」
雪哉「良かった。マキ様に気に入ってもらえたら俺も幸せになれそう」
マキは、自分が予約いっぱいなのは知ってたけど、そんな話しになってるとは知らず、首をかしげた。
確かに、何人かくっつけたけど…。
マキ「幸せって…?」
雪哉「性癖の悩みも解決して恋人ができて幸せになるって♪噂なんですよ」
マキ「ふっ、そんなの噂ですよ、僕は先生から教わった技術を教えてあげてるだけで…」
雪哉「こんな美人に調教されるとか、審査が厳しいのも頷ける、っで、神の暴走癖は直りそうですか?」
その言葉は、明るく言っているが、決して軽々しく言ってる感じではない。
雪哉は、多分、百目鬼と関係して長い。
百目鬼「やめろ雪哉、子供に絡むな」
リビングに戻ってきた百目鬼が、グラスに入ったビールを雪哉に突き出す。
グラスビールには、氷が3つ入っていた。
雪哉「ありがとう」
雪哉さんのビールの好みなんだろう。
何も言われてないのに缶ビールをグラスに移して氷を入れてくる…本当に百目鬼は世話焼きだ。
雪哉「ジャジャーン、オレンジタルトー」
雪哉が開けた紙袋の中の白い箱には、オレンジタルトのカットケーキが二つ入っていた。
雪哉「マキ様もどうぞ♪」
マキ「うわぁー、綺麗」
雪哉が作ったケーキ。
癒し系の顔。
調教されたいならMっ気もあるだろうし。
多分百目鬼とのそっちの相性も悪くなさそう。
百目鬼「夜中に子供に食わすわけないだろ」
雪哉「えー、マキ様にも感想聞きたいのに」
百目鬼「また今度な」
雪哉「また明日作って持ってきちゃうぞ」
百目鬼は雪哉の頭を、ポンポンとあやすように撫で、オレンジタルトを冷蔵庫へしまった。
百目鬼「おい、子供はもう寝る時間だ」
戻ってきた百目鬼は、マキに向かって低い声で言う。
マキは素直に立ち上がり、百目鬼に聞いた。
マキ「あっ、僕、どこで寝ればいい?寝室使うでしょ?」
その質問に、百目鬼は驚き、凄く怖い顔でこっちを睨む。。
百目鬼「寝室は使わない!お前が寝てろ!」
ピシャッと言われて、マキは、寝室に引っ込んだ。
雪哉「そうだよね、恐れ多くてマキ様の聞こえるところでは出来ないよね、ホテル行きます?」
百目鬼「行かない」
すぐさま否定する百目鬼に、雪哉は笑った。
雪哉「あー、やっぱりマキ様に抜いてもらったんでしょ…」
百目鬼「雪哉、それ飲み終わったら出てけ、俺は昨日も寝てなくて今日は寝る」
雪哉「はーい、神の顔色悪いからそうしまーす。菫ママが心配してたよ、あと矢田君も」
雪哉さんは、柔らかく笑ってグラスビールを飲んだ。
僕が寝室に入ってしばらく雪哉さんと百目鬼さんの話し声がしてたが、雪哉さんは約束通りグラス一杯で帰っていった。
僕は、1人広いベッドの上で、百目鬼さんを待っていたけど、百目鬼さんは来ず。リビングの電気が消えた。
…。
待っても百目鬼がこないので、マキはベッドから降り、リビングを覗く。
リビングには、ソファーに横になる百目鬼がいた。
……。
マキ「百目鬼さん…」
そっと声をかけると、百目鬼が目を開け、視線だけこっちに向けた。
百目鬼「なんだ、まだ寝てないのか」
マキ「僕と一緒に寝たくないからココで寝てるの?」
百目鬼「…泊めてやってるんだ、一緒に寝る必要ないだろ」
マキ「なら、そう言ってくれればいいのに。百目鬼さんがベッドで寝て」
百目鬼「いい、お前が寝ろ」
マキ「百目鬼さん。僕、あんなにキングサイズのベッドで1人で寝れないよ。だから僕がソファー使いたい」
百目鬼「…狭いところで寝たら、腕に悪い」
マキ「僕、寝相良いから。それに本当に、あんな広いとこじゃ眠れない。一緒に寝ないからベッドで寝て、僕はソファーがいい。それがダメなら添い寝してもらうよ」
百目鬼「…分かった」
百目鬼さんは、のっそり起き上がり、立ち上がる。暗いから表情は分からない。
すれ違いざまに頭に手を置かれた。
百目鬼「落ちるなよ」
眠いんだろう。あったかい手が僕の頭にポンっと触れて、百目鬼さんは寝室に行った。
触られたところが熱くて、胸が痛む
誰にでも優しい百目鬼さん。
あんなんで疲れないのかな?
いや、疲れてるのか。
しんどくないのかな?
優しい百目鬼さん。
もし、僕が告白したら、百目鬼さんはどんな反応をするだろう。
信じられないといった顔をして、ふざけるなと詰るだろうか?
それとも、困った顔をして、悪いがあり得ないって優しく断るだろうか。
…、早くキーホルダーを見つけよう。
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