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番外編15ひと夜咲く純白の花の願い
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腕を引かれるまま着いて行くと、寝室に連れ込まれた。
何事かと思っていると、百目鬼さんのベッドに引き上げられ一緒にベッドに入った。
えーっと…。
マキが瞳を瞬いて困惑していると、百目鬼が布団を掛けてくれ、大きな手がマキの頭を掴んで横にする。
枕に頭を沈め僕が見上げた百目鬼さんの表情は、複雑で険しい。
嫌ならこんなことしなきゃいいのに…
百目鬼「隣にいれば寝るんだな、腕は貸さないからな、あとイタズラしたら叩き出す」
マキ「…どうし…」
百目鬼「どうして?変なことが目的ならソファーに…」
マキ「じゃなくて、どうして添い寝してくれるの?」
百目鬼「…は?。……お前が添い寝しなきゃ眠れないって言うからだろ?」
そっか、今日立ち眩みしたから…。
可哀想だと思った?
胸の奥が、ジリッと焼けたように痛む。
同情は…好きじゃない…。
可哀想だって伸ばした手は、可哀想じゃなくなると、無くなってしまう。
百目鬼さんは、僕が不治の病だと言ったら、優しくしてくれるだろう。
でもそんな優しさいらない。
僕が欲しいのは卵を愛するような愛。
中身がどんなでも、ずっと好きでいてくれるような…
卵を愛するような気持ち…
ふはっ、いけない、またこんなこと考えちゃった。百目鬼さんが僕に気持ちなんかあるわけないのに…
マキ「百目鬼さんて優しいね♪」
百目鬼「ッ…。お前に目の前で倒れられたらほっとくわけにはいかないだろう、こっちが迷惑こむるんだぞ」
ほっとけばいいのに♪
優しくされてぐらついて、冷たくされてまた落ち込む。こっちはそのせいで忙しいの♪
マキ「うん、ごめんなさい。倒れるときは矢田さんに受け止めてもらう」
百目鬼「は?お前矢田が受け止めると思うか?」
マキ「ウフフ、矢田さん結構男気あるよ、気持ち的には受け止めてくれるよ」
百目鬼「…気持ちはな、でも行動が伴わないと、あいつもお前も大怪我するぞ」
マキ「フフッ、本人の前だったらめちゃめちゃこき下ろすのに、百目鬼さんは矢田さんのこと好きなんだねぇ」
百目鬼「……俺は仕事をする。パソコンの打ち込みしてるから、お前は勝手に寝ろ」
そう言ってノートパソコンを広げる百目鬼は、カタカタ入力をはじめた。
…。
同情は嫌だ…。
でも…今日は…
もう…眠い…。
百目鬼さんの体温に、すでに寝てしまいそうだ。
マキ「……ありがとう」
ポソッと独り言のように呟いた。
百目鬼さんの大きな暖かい手が、僕の頭をあやすようにポンポンとした。
パソコンで打ち込みをしながら、何故か右手がずっとそのままマキの頭の上にある。
大きなあったかい手の意味が、分からない。
撫でてくれたりはしないけど、きっと立ち眩みのせいだけど、閉じる瞼に抗えない。
眠くて…
ソワソワして
温かくて
胸が苦しい
本当は抱きしめたい。
抱きしめて欲しい…
抱きしめたい気持ちを握りこみ、手を伸ばすのを我慢する。
百目鬼さん…
トクン…トクン…
もどかしい幸福感。
セックスしてないのに、温もりが柔らかく包み込み胸を締め付ける、それなのにこの触れているだけの手が気持ちいい。
百目鬼さんはきっと、〝仕返し〟するって言えば、僕の好きにさせてくれるだろう。
でも、きっとそれっきりだ…、なんとかして調教の機会を作って制御の方法を教えてあげなきゃ…と思うのに。
今は目の前の温かな温もりが手放せない。
百目鬼さん、ごめんね。
もう、眠いんだ。
今晩だけ甘えさせて。
今晩だけ、僕の隣にいて。
不器用で優しい百目鬼さん。
必ず幸せにしてあげる。
メイちゃんは好きな人がいるから無理かもしれないけど、雪哉さんなら何とかなるかも。
明日から、仕事モードで頑張るから…、今だけ…、今晩だけ…。
大きな手は、僕の頭に添えられたまま。
マキは、百目鬼の足元に寄り添い、丸まる。
カタカタ聞こえる音を聞きながら、百目鬼の体温で、うとうととし、そのまま…幸せな夢の中に、意識が沈んでいった……。
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〝マキ、ほら、月下美人が咲いたよ〟
温かい大きな手。
情熱的な唇。
丁寧な愛撫。
感じるところを見逃さず
快感に溺れるように執拗に繰り返す
逃がさないと縛り上げ
貪るような乱暴な行為に
自らが傷ついて震える猛獣。
『マキ』
『マキ…まだいくな』
『マキ…』
低い低音ボイスは、何故か悲鳴のようで…
ギュッと、抱きしめてあげたかった…。
『神さん…』
『マキ…』
お互いが裸で、隙間なく合わせた体は、相手の体温に溶けそうに幸せで、口づけを繰り返す。
何度も何度もお互いを貪るように体を重ねて、いつの間にか、窓の外が白んできた。
もうすぐ朝日が昇る。
〝一晩で枯れてしまう、儚い花なんです〟
朝日が全てを終わらせてしまう…
もうすぐ…
朝日が昇る
何もかも、終わらせようと思った…
なのに、消える瞬間、口が勝手に動いてしまった
『神さん…、好きです。だから、早く幸せになって下さい…』
彼は、どんな顔をしたのか…
朝日で見えなかった…
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