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番外編18ひと夜咲く純白の花の願い
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玄関を開けると
明るい笑顔が出迎えてくれる。
マキ「お帰りなさい♪百目鬼さん♪
ほら、ミケもおかえりニャさい、だって♪」
腕に抱いた猫のミケの前足を、まねき猫みたいにして、ニコニコ俺を出迎えるマキ。
俺の家には今。
凄く手のかかる厄介な野良猫が居候中。
普段だったらすぐに追い出すのだが、俺は酔っ払ってその猫に酷いことをした。
だから、俺の付けた跡が消えるまで家に置くことにしたのだが…。この野良猫は、非常に手がかかる。
自分のベッドの上で目を覚ました百目鬼は、頭を抱えた。
百目鬼「また、眠っちまった…」
マキに添い寝するようになって3日目。
百目鬼は、横で丸まって眠るマキの体温でつい眠くなる。ベッドでノートパソコンを使い仕事をしても、寝落ちしてしまっていた。
今の百目鬼は、非常に規則正しく生活をしている。
朝ごはんを食べ、昼にはお腹空いたと騒ぐマキのために、昼休憩をとってごはんを作ってやり、晩御飯も栄養面を考えて野菜を多めに…。まぁ、野菜なんて炒めりゃだいたい食べれる。
そしてマキを風呂に入れてやり、いちいち声を押し殺して喘ぐマキにお湯をぶっ掛け、出たら拭いてやり布団に押し込む。マキが寝るまで隣にいてやろうとするが、自分も、うとうととしてしまって一緒に寝てしまうのだ…。
ああ、クソ!
まんまと罠にはまってる気がする!
百目鬼「オイ、起きろ」
百目鬼の隣で丸まって寝ているマキが、眠そうな目をこすりながら目を覚ました。
猫みたいに背伸びして、あのジュピター色の瞳が朝の光にショボショボしながら百目鬼を見つめた。
うっ…、無駄にキラキラしやがって!
マキ「ふぁああ…、…おはようごじゃいましゅ…百目鬼しゃん…」
百目鬼「ほら。シャキッとしろ!起きて歯を磨け!」
マキ「へへ、百目鬼さん朝から元気だね♪」
そう言ってマキは、俺の朝勃ちを見つめた。
こいつは、言葉ではふざけたことしか言わない。ヘラヘラヘラヘラなんの本音も口にしない、全く付き合ってられない野良猫だ!
百目鬼「ほら、顔洗って歯を磨け!」
ベッドから叩き出すと、フラフラ洗面台に向かったマキは、ビチャビチャ顔にお湯を引っ掛けて、歯ブラシを口に入れモシュモシュしているが、完全に寝ている。
マキは、朝が弱いらしい。
マキ「ふぁあ〜、すっきりした」
といいながら、顔がまだ濡れたまま、水滴が頬を伝い、首から鎖骨に滑り落ちる。百目鬼は思わずドキッとして、タオルをマキの顔に押し付けて水滴を吹いた。
百目鬼「少しは、自分でやれ!」
マキ「えへへー♪」
無意識に色気を振りまき、素直な甘えた顔で笑うこいつは、可愛いからたちが悪い。そうやって男を引っ掛けてるんだ。
マキの腕の痣はまだ消えない…
このままでは、こいつの思う壺だ…
早く追い出さなければ…
檸檬「おはようございまーす」
杏子「おはようございます」
矢田「ゴホゴホッ!、はようござッゴホゴホ!」
マスクを付けた矢田が咳き込んだ。
顔色も赤く、どうやら熱っぽい。
檸檬「矢田ちゃん休めばいいのに」
矢田「め、滅相も無い!俺!やれます!」
矢田は、ずっとクシャミをしていたが、昨日から咳が出始めていた。完全に風邪だろう。
休ませたいのはやまやまだが、今は賢史の依頼が入っていて、事務所は少しバタついていた。だから、役立たずの矢田にも働いてもらわなければならない。
しかし、顔が赤いな…、今からじゃ病院混んでるだろうし、午前の診療終わり直前の空いてきた時間に連れてくか…
檸檬「矢田ちゃんは日々体調悪くなるけど、百目鬼さんは日々元気になってるよね」
ニヤニヤする檸檬。
さすが、事務所の情報担当、観察眼がある。
雪哉は、マキに会いに毎日来る。
毎日ケーキを持参して、あいつは今めちゃくちゃ忙しい時期の癖に…
おかげでこっちは毎晩デザートにケーキを食べてる。さすがに太りそうだ。
杏子「そうですね、マキさんと一緒に住みだしてから、健康的な生活されてますものね。雪哉さんにも毎晩ご飯作ってもらっちゃったりしてるみたいですし」
フッと笑って眼鏡を持ち上げる杏子。
矢田「ですよね!ですよね!マキちゃんは福の神だったんすね!マキちゃん来てからの百目鬼さん潤ってますよね!ぅッゴホッゴホッ」
矢田のことは、もう面倒くさいから否定しない。
最初はどうなるかと思ったが、マキは、人を操るのが上手い。
俺に、『好きだ』と告げ口するなんて酷い、と、矢田の前で涙ぐみ、矢田を黙らせた。『人の気持ちを勝手に言ったりして百目鬼さんに嫌われたら、ここには居られない』と名芝居をして、矢田も流石に反省した。今はあまりの余計な行動は慎み、堂々と言葉で応援している。
マキの凄さは、矢田を手なづけるだけに留まらない。
雪哉とは、すぐに打ち解けて、今ではケーキを食いたい放題。
あの琢磨とかいうガキと友達になったらしく、は毎日遊びに来る。
しかも、マキの人を惹きつける魔性っぷりは、これだけじゃない。
事務所に、一般の依頼が来るようになっていた。
マキ「ただいまー♪百目鬼さん♪お客様だよ♪角の和菓子屋の梅さん♪人探しの依頼だって」
商店街のジジイ、ババアと、すぐ知り合いになってきて、事務所に連れてくる。
マキが事務所に居ついて4日で、俺の周りはあいつの虜だ。
話術も人当たりも良い、一般の依頼が増えれば人出が足りない、自然とマキの手が必要になる。あいつがいなくなったら、あいつが持ってきた依頼の数々をどうすればいいんだ…。
ーガチャッ
賢史「よう、百目鬼暇してるかぁ〜っと、お客?」
矢田「賢史さんおはようございます!!」
賢史が百目鬼事務所に足を踏み入れると、百目鬼は接客中だった。
入り口にいたマスク姿の矢田が騒々しく出迎える。
大柄な賢史は、真っ黒な髪で刈り上げショート、顎ヒゲを生やした渋い男。刑事としての圧迫感に、矢田は対面するといつも背筋が伸びる。
賢史「矢田、風邪引いたのか?」
矢田「大丈夫っす気合いで治しやす」
賢史「周りに移るから病院行けよ。ってかアレ誰だ?」
百目鬼と変わらぬ身長とガタイの賢史。
強面の渋い顔が、百目鬼と一緒にお客に対応しているマキを睨む。
矢田「あ〜、賢史さん初めて会うんですよね?あの方は、百目鬼さんの彼女のマキちゃんっす」
矢田の言葉に、賢史が訝しげに首をかしげた。
賢史「は?……あれ男だろ」
賢史は、なんとなく気に食わなくて、睨むようにマキを見た。
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