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番外編22ひと夜咲く純白の花の願い
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肌が痛むような寒さに身を縮め、温もりに身を寄せた。
大きな背中に寄り添って、温かさに頬を寄せる。
あったかい…
訪れたクリスマスイブ。
この日の朝は、いつもと少し違った。
マキが目を覚ますと、百目鬼がまだ隣にいのだ。
あれ?百目鬼さんがまだいる…、僕より遅かったことないのに…。
マキ「百目鬼さん?朝だよ」
肩をそっと揺らすと、百目鬼は重たそうに瞼を開けた。
百目鬼「…ああ、サンキュー…」
元気のない声、どうしたんだろう?
あっ!、矢田さんの風邪がうつったのかな?
体を起こしたのに、鈍い百目鬼を見て、マキはすぐに台所に向かった。
冷蔵庫に直行し、中を物色。
お目当ての物を手に取り、冷蔵庫を閉め、ヤカンに水を入れて火にかける。
コーヒーカップを出して、その中にチューブ生姜が少々、砂糖、レモン汁を2滴。
湧いたお湯を注いでスプーンで混ぜ、熱すぎないように小さい氷を一粒入れて直ぐ飲めるようにした。
そこへ、百目鬼が怪訝な顔して現れる。
百目鬼「お前、何やってんだ?」
料理が出来ないのに台所にいるマキを、不審に見つめる百目鬼は、顔色が良くない。
マキ「矢田さんの風邪が移ったんじゃないかと思って、生姜湯作った、蜂蜜があればそっちが良かったけど、砂糖でも美味しいよ♪」
百目鬼「…お前作れんの?」
マキ「混ぜるだけだし、ちゃんとお医者様の先生様直々に教わった物ですよ。あの人の元にいるんだもん、こういう事なら分かるよ」
百目鬼「……そっか」
百目鬼はフッと力無く笑う。
黒い前髪の下りた彼は、普段のヤクザみたいな顔より少し和らいで見える。
百目鬼はだるそうにソファーに座り、マキの入れた生姜湯を一口飲んだ。
マキ「熱くない?もっと甘い方がいい?」
百目鬼「いや、丁度良い」
マキ「良かったぁ♪後で蜂蜜のも作ってあげるね」
マキが上機嫌でニコニコとしていると、百目鬼がその顔をジッと眺めてきた。
百目鬼「…もっと……ば…いいのに…」
ボソッと呟き、呟いた本人が自分の声に驚いた様子で口を紡ぐ。
マキ「え?何て?」
百目鬼「ッ…も、もう一杯」
ガバッと飲み干したコップを押し付けられ、誤魔化されてしまった。
マキ「うん、もう一杯ね♪」
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朝から具合の思わしくない百目鬼を心配して、9時半に事務所に出勤する百目鬼について下りこるとにした。
すると、百目鬼よりはるかに具合の悪そうな真っ赤な顔にした矢田が、マスクと冷却シートを付けて立ってた。
矢田「おはようございばふ」
敬礼し、咳き込む。
隣の檸檬が呆れた声を出した。
檸檬「百目鬼さん、なんとか言ってやってくださいよ。矢田ちゃん38度8分もあるのに出勤するって聞かねぇの、なんかこっちまで具合悪くなってきたよ」
檸檬の嘆きに、矢田は頑として譲らない。
熱があっても電話番は出来ると子供のように言い張る。
百目鬼「矢田、帰って寝てろ!」
矢田「でも!せっかく一般の依頼が入ってるのに、役立たずでも電話番は出来るっす!」
もう、百目鬼はため息しか出ない。
百目鬼「お前の心意気は立派だ」
矢田「ハッ!百目鬼さんに褒められた…!」
瞳をウルウルさせて男泣きする矢田はウザくて、いちいち相手にしていたら会話が進まないので、こっちは勝手に進むことにした。
百目鬼「あのなぁ、高熱出して具合悪いの働かせるほど俺は極悪じゃないぞ」
矢田「極悪なんて滅相も無い!百目鬼さんは俺の仏様っす!」
そう言って矢田は百目鬼を拝み出す。
百目鬼「そう思うなら、今日は帰って休め、昨日風邪薬貰ったんだろ?さっさとそれ飲んで寝てろ!」
矢田「百目鬼さんのありがたいお言葉、俺にはもったい無いっす」
人の話を聞いてんたか聞いてないのか、なおも拝む矢田に百目鬼の我慢の限界が来て、矢田の首根っこ掴んで事務所の入り口から放り出した。
百目鬼「何でも良いから早く帰れ!こっちが具合悪くなる」
矢田「あぁそれはスンマセン、百目鬼さんに移ったら大変ですもんね。ってか絶対移したりなんかしやせん、俺、大人しく帰って寝てやす」
残念だけど、多分もう移ってる。
敬礼した矢田は、真っ直ぐ立ってられないのか、フラフラ揺れて酔っ払いのようで、とても一人で帰せなさそう…
百目鬼「あーもー、送ってやる」
矢田「いえ!滅相も無い!」
馬鹿みたいなやり取りが続いて、矢田はなかやか事務所から家に進まない。
この人たち、面白いなぁ…。
マキは感心して眺めていたが、流石に矢田の顔色が真っ赤で可哀想なので、名乗りをあげることにした。
マキ「まぁまぁ、それなら僕が矢田さんを送ってあげるから♪」
百目鬼「あーダメダメ、お前に移ったら面倒だから」
百目鬼はマキを矢田から引き剥がし、上着を片手に外に出る。
百目鬼さん、自分だって具合悪そうな癖に…無理しちゃって。
百目鬼「矢田、お前薬ちゃんと持ってんだろうな、こないだみたいに無くしたりしてないだろうな」
矢田「大丈夫っす!ほらこの通り!」
矢田は、カバンの中から白い処方箋袋を取り出し、自慢げに見せびらかす。
しかし、その処方箋袋を見た矢田以外の全員が、不吉な文字を目にして愕然とした。
百目鬼・檸檬・杏子・マキ「!!」
4人全員が驚きでその処方箋袋を食い入るように見つめてる。 目を擦って見直しても、その文字は変わらなかった。
マキ「…タミフルって…」
マキが問題の文字を口にしても、矢田は四人が何に驚いているか分からず、キョトンとしている。
百目鬼「矢田…、お前、まさか…」
口角をヒクヒクとさせ、怒りを抑え込もうとする百目鬼、しかしその怒りの炎を感じ取った矢田がビクッと背筋を伸ばして怯えた。
矢田「あれ?お、俺なんかマズイことでも…」
百目鬼「お前、風邪じゃなくて、まさか、インフルエンザなのか?」
矢田「あっ、そうなんすよ、流行ってるらしくて、困っちゃいますよねぇ、こんな忙しい時に…。すいやせん、絶対移さないように気をつけやすから心配しないで下さい」
矢田は、事態の重さに全く気づかず頭を掻いていて笑ってる。
百目鬼の怒りがピークに達しようとしていて、檸檬と杏子がオロオロしていた。
僕は念のために矢田さんに、聞いてみた。
マキ「矢田さん、病院で仕事に行っちゃダメって言われなかった?」
医者の言葉を聞き逃しなら、まだしょうがないと思って聞いたのに、矢田さんはやっぱり矢田さんだった。
あっけらかんと…
矢田「言われました。でも休んでなんてられないっすよ、俺、人の倍は働かないと給料に見合わないっすから」
志は立派なんだけど…
百目鬼「馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、ここまでだったとは…」
ど、百目鬼さん、ファイト!
百目鬼「てめぇーは何のために医者に行ったんだ矢田!!!」
矢田「ヒィ〜!す、すいやせん!!」
あーあ…。
その日。
百目鬼事務所は来客を断る張り紙をし、電話受付けのみ行った。ほかには、すでに受けた依頼の調べを進めていたのだが……
昼になるころには、檸檬さんが、頭痛と悪寒でぶるぶる震えて体調不良に。
そして、百目鬼さんも高熱に動けなくなってしまった………。
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