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番外編30ひと夜咲く純白の花の願い
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百目鬼さんは咳き込んでその場にしゃがみ込んでしまい、僕は背中を摩って落ち着かせてあげた。
百目鬼さんの背中を摩りながら、僕は先ほどの百目鬼さんの言葉が気になって振り返えった。
さっき百目鬼さんは、
〝夢にまで現れて引っ掻き回して〟
って…言った…
それって…僕の夢を見るってこと?
…もしかして…再会したあの日も…?
僕の夢を見てたってこと?
それって…
百目鬼「ゴホッゴホッ…」
考えた事を言葉にする前に、百目鬼さんがさらに苦しそうに咳き込む。
体が熱い。怒鳴ってばかりで赤くなった顔は、興奮したからだけじゃない、熱がぶり返してるんだ。
マキ「百目鬼さん、寝室に戻ろう。せっかく良くなってきてたのに、またぶり返しちゃう」
百目鬼「ゴホッゲホッ…だったら、ゴホッ…本当のこと言えよ…」
マキ「……本当のこと?本当のこと言ってるよ?僕は百目鬼さんが好きで、百目鬼さんの事、可愛く見えてしょうがない」
百目鬼「ッかわ………惚れ薬のせいだろ?惚れ薬のせいで勘違いしてるんだ」
マキ「百目鬼さん?一回飲んだだけで1年以上も効き続ける薬なんか存在しないよ」
そんなこと百目鬼さんだって分かってるはずだ、百目鬼さんの言ってることは滅茶苦茶だ。
僕が百目鬼さんを好きだって言うと信じないって言うのに。
諦めるそぶりを見ると嘘つき呼ばわりして。
今度は惚れ薬のせいだって言う。
百目鬼「………じゃあ、証明してみろよ」
マキ「証明?」
百目鬼「薬のせいじゃないって言うなら、〝惚れ薬を飲んで別の奴に惚れてみろ〟」
…別の人に惚れる?証明…って
百目鬼さん、それってすごくおかしい。
それじゃまるで…
百目鬼「別の人間に惚れた後に、それでもう一度、俺を好きだと言えるか、試してみろよ」
それじゃ…まるで…
僕に百目鬼さんを口説けって言ってるように聞こえるよ?
マキ「証明して…、僕が百目鬼さんにもう一度好きだって言えたら…、どうするの?」
百目鬼「…………信じてやる」
マキ「信じる?」
百目鬼「お前が言ってること、信じてやる。お前が俺に今まで言ったこと全部。俺が暴走壁を治せるってこと、相手を大切にできるってこと、相手を信じて心を曝け出せば上手くいくってこと…。雪哉と俺をくっつけようとするお前が俺を好きだということも…」
マキ「本当?」
百目鬼「でも、そこまでだ。
俺は、お前の気持ちには答えない」
僕が目をパチクリさせると、百目鬼さんはこっちを伺うように薄く笑った。
百目鬼「フッ、おかしなこと言ってるって思ってるんだろ。だがな、俺にとってはおかしくない、〝重大な問題〟だ。それに、お前が言ったんだ、〝好きな人の幸せが見たい〟まさに、その願い通りだろ?
どうする?それでもやるか?」
百目鬼さんは僕に、試すような視線を向ける。
百目鬼さんは僕に難問を投げかけたような顔をしてるけど、僕は一瞬も迷わなかった。
僕の気持ちは初めから決まってる。
僕は、迷いなく百目鬼さんに優しく微笑む。
マキ「うん、やる」
あっさり答えたのを聞いた瞬間、百目鬼の表情が激しく曇った。
百目鬼「何でだよ!!」
ガンッと床を拳で殴りつけ、理解できないと叫んだ。
百目鬼「俺は、お前の気持ちには答えないって言ったんだ!だったらお前がやるメリットがないだろ!」
マキ「何で?僕の気持ちが百目鬼さんに届かないのは初めから分かってたことだし。それより、僕が証明すれば百目鬼さんが素直になってくれるんでしょ?それの方大事だよ。それに、僕が百目鬼さんを好きな事を信じてくれるんでしょ?…それってメリットじゃない♪」
百目鬼「ッ……お前は…」
百目鬼は、呆れたように渋い顔をしてマキを睨み。マキは小さくクスっと笑った。
マキ「僕が勝手に惚れ薬飲ませたから、苦しいんでしょ?だったら、百目鬼さんがそれを僕にやり返しても、僕は文句なんか言えないよ。ただね、一つお願いがあるんだ」
百目鬼「…なんだよ」
マキ「惚れ薬を飲んで別の人を好きになってる間、僕を縛って見張ってて」
百目鬼「は?」
ジュピター色の瞳が真剣に訴えた事に、百目鬼は、ハテナが浮かび。マキの瞳が揺らめいて、妖艶に色を変える。
マキ「じゃないと、僕、その人のこと襲っちゃうから」
百目鬼「ハッ…、さすが淫乱…」
マキは百目鬼の言葉をニコッと受け止め。また、淡い微笑みを浮かべて、真剣な瞳で言った。
マキ「ね?僕、やるから。ベッドに戻って」
百目鬼「…」
百目鬼さんは、やっぱり無言で、でも納得してくれたのか、大人しく寝室へ移動してくれた。
マキは百目鬼をベッドに押し込み、スポーツドリンクを飲ませ、熱を測りなおす。
37度7分…やっぱり上がっちゃった…
すると、大人しくしていた百目鬼が、マキの腕を掴んだ。何かを決意したように、真剣な瞳がマキを見つめる。
百目鬼「マキ」
マキ「ッ…何?」
うっ…ビックリするから、いきなり名前呼ばないでほしい。
百目鬼「さっき言った事、悪かった、忘れてくれ、惚れ薬は飲まなくていい」
マキ「え!?どうして?。僕、やるよ」
百目鬼「薬はもう、たくさんだ…。人の気持ちを薬で操るなんて良くない。俺は苦しかった。だから、やらないで良い」
百目鬼さん…ごめんね…
百目鬼「それに、俺は勝手なイメージでお前を見てた部分がある。それがここ数日お前と一緒にいて、少し分かった…。だから………………………………」
マキ「だから?」
百目鬼「…………お前の言ってること、信じてやる」
え?
百目鬼「ただし…、もう、誤魔化しも嘘もヘラヘラすんのは止めろ。あれ見てるとイライラする…」
マキ「あー、それは難しいねぇ」
百目鬼「何でだよ」
イラっとした百目鬼さんが、眉間にシワを寄せたけど、僕には不機嫌なティーカッププードルにしか見えないから、思わず口元がにやつきそうになるけどなんとか耐えた。
マキ「さっき言ったでしょ?僕はヘラヘラ適度にしてないと、好きな人襲っちゃうんだよ」
百目鬼「…今までそんなことしなかったじゃないか」
マキ「…我慢してたんだよ。でも、もう百目鬼さんに告白しちゃったし、僕に素直でいろってことは、僕が百目鬼さんを好き好き言って襲っても良いってことにならない?」
百目鬼「…お前は馬鹿か。矢田並みに馬鹿で頭の中ポジティブパーティーか…」
呆れた百目鬼さんが深いため息をつくけど、そんな仕草も堪らない。
好きだと言ってしまった事で、なんだか吹っ切れた。
そんな百目鬼さんに向かって、僕は、小首を傾げて上目遣いで甘えた声を出す。
マキ「んー、襲っちゃ駄目?」
百目鬼「ッ!…駄目に決まってんだろ!ちょっと見直したらすぐそれか!それに、悪いが、お前の気持ちには答えられない」
きっぱりはっきり飛んできた言葉。
その言葉を心がけ受け止めきる前に、さらなる言葉が飛んできた。
百目鬼「…お前は、修二の友達だからな…」
………………………………………。
雪哉『神はマキ様には特別優しいと思うけどな…』
…………………ああ、なるほどね。
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