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番外編48ひと夜咲く純白の花の願い
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桜木「じゃあ、服はまた今度連れて行ってあげるね。じゃあ移動しようか」
桜木さんは、僕の意見を聞いてくれて、行き先を変更し、この街から離れることを選んでくれた。
ホッと胸を撫で下ろし、電源の入って無い携帯を眺めた。
百目鬼さんはまだ、探してる?
もう、諦めた?
探していてくれたら嬉しいけど、諦めてくれなきゃ困る………。
桜木「マキ、今夜はこのまま一緒にホテルで良いのかな?」
マキ「あっ!そうだゴメンね桜木さん、そう言えば仕事とか予定とか大丈夫だった?」
桜木「ああ、今日は速かったから、明日は朝先に出ると思うけど」
マキ「桜木さんが一緒に居てくれるなら一緒にいて欲しいな、明日の朝は一緒に出るよ」
桜木「一緒はちょっと…」
あっ、そうだった。
桜木さんは結構大きい会社で働いてて、ゲイであることを隠して生活してる。だから世間体を気にしてて、ホテルとかもいつも出入りは別々。街で見かけたりしても知らん顔がルール。
マキ「大丈夫♪ちゃんと別々に出るよ♪」
桜木「…ゆっくりしていけばいいのに」
マキ「明日は、やるとこがいっぱいあるから…」
車が信号で停車して、桜木さんが僕の方を見た。桜木さんは僕の頬にかかる髪を耳にかけて優しく囁いた。
桜木「マキ、年末年始はどうするの?先生はもう田舎に行ってしまったんだろ?追いかけるの?」
マキ「行かない。一人で家にいるよ」
桜木「そう、じゃあ今年中にもう一度会えそうだね」
マキ「本当♪いつでもいいよ♪連絡し…」
ーバン!!!!!
突然、車のフロントガラスが叩かれ、助手席側のボンネットの上に人が腰かけた。
驚いて見ると、その人物は、細身の今時の若者。
車の中を確認するようにフロントガラスに張り付き、ニヤリと笑う。
パーに開いた左手をフロントガラスに貼り付け、耳に当てた携帯を右手で持ち、通話相手に大声で言った。
檸檬「マキちゃん見つけたぜ!百目鬼さん」
ゲッ!?
檸檬さん!!
驚きのあまり声が出ない。
信号停車中とはいえ、ボンネットの居座るとは一体どうゆうつもりなのか…
檸檬はニコニコしながら、フロントガラスをノックした。
ーコンコン
檸檬「すんませんお兄さん。マキちゃん置いてってくれませんか?じゃないと誘拐になっちゃいますよ〜」
桜木「…」
桜木さんは、冷静に檸檬さんを観察した。
桜木さんと一緒にいてこんなことになるのは二回目。
以前は、明け方の街でむつに見つかり、えらい剣幕で僕を桜木さんから引き剥がした。
桜木さんは世間体があるから、トラブル厳禁。
桜木「知り合い?」
マキ「ッごめん」
ここで知り合いじゃないと答えれば、いくら世間体を気にする桜木さんでも僕を守るために車を発進させてくれるだろう。
けど、逃げきれなかったら、桜木さんを巻き込むことになる。
檸檬さんに騒がれるのもマズイけど、ここに百目鬼さんが合流したらもっとマズイ。
ーパァパァパァーーー!!!
信号が青になり、後続車がクラクションで煽ってきた。
マキ「ご、ごめん!降りるから行って!」
桜木「マキ、電話して」
僕は慌ててベルトを外して車から飛び出した。桜木さんが心配そうに声をかけてきて、僕はそれに頷く。車から降りると、檸檬さんがそれを見届けてからボンネットから降り、桜木さんは手を振る僕をチラッと確認してから、車を発進させて走り去った。
車から降りた僕の腕は、しっかりと檸檬さんに掴まれていた。
檸檬「超探したよマキちゃん。あれ誰?」
マキ「檸檬さん、一生のお願い♪、手を離して♪」
檸檬「それ超無理なお願いだよ。俺、百目鬼さんに殴られたくないもん。ってか、百目鬼さんのテリトリーにいてよく今まで隠れられたね、何処にいたの?」
ラブホテルに居ました。
とは言えるわけがない。
マキ「何処でしょう♪」
檸檬「百目鬼さんとケンカしたの?百目鬼さん超探してたよ」
マキ「ケンカしてませんよ、僕が百目鬼さんを襲うから怒らせただけ♪」
檸檬「あれ?そっち?俺はてっきり百目鬼さんがマキちゃんを襲ってるのかと思ったよ。マキちゃん可愛いいし綺麗だし」
マキ「ふふ、ありがとうございます。でもそう思ってるのは檸檬さんだけだよ」
隙を見て逃げようとは思ってるんだけど、檸檬さん結構握力がある。この感じからして、長袖長ズボンで今まで気づかなかったけど、結構筋肉のある体っぽい。
僕はへらへら笑って様子を見るけど一向に隙が見当たらない。
マキ「檸檬さん体調は?」
檸檬「マキちゃんの呼んでくれた先生のお陰で超元気!その節はありがとうございました」
腕をガッチリ掴んだまま、ぺこりと礼儀正しくお辞儀する檸檬。
これが矢田さんだったら、気をそらして逃げるのは簡単なのに…
マキ「ねぇ♪、恩返しに僕を自由にしてよ♪」
檸檬「あー、そいつは厳しいな…、恩で言ったら百目鬼さんの方が数えられないくらいあるし」
マキ「意地悪」
檸檬「ごめんごめん。でもマジに、百目鬼さん探してたよ。あの人口悪くて誤解されやすいからマキちゃん傷つけること言ったのかもしんないけど、許してやってよ」
マキ「百目鬼さんは何も悪いことしてないよ。僕は帰るって言っただけ」
檸檬「…じゃあ、3時間も何してたの?」
マキ「…」
檸檬「あ!百目鬼さん来た!」
道の向こうから、全速力で走ってくる百目鬼さんの姿を見つけた。
…………………………………。
込み上がる愛しさと……絶望。
終わった…。
これで…何もかも…。
3時間何してたかって?
セックスだよ……。
百目鬼「こーのー糞ガキー!てめぇー電源切るんじゃねぇーー!!」
僕たちに近づきながら叫び。
ゼェーゼェー息を切らしてたどり着いた百目鬼さんは、膝に手をついて脇腹を押さえた。
檸檬「年考えて下さいよ」
百目鬼「俺は20代だ!」
檸檬「そうでした」
賑やかな檸檬さんと百目鬼さんを冷めた目で見つめる。この後のことを考えると、感情を殺すしかない。
百目鬼さんは軽口叩く檸檬をギロッと睨みつけ、その後視線を僕に向けた百目鬼さんは、ハッとして、コートを脱ぎだす。ニットワンピースだけの僕に百目鬼さんの着ていたコートを羽織らせた。
百目鬼「ったく!上着も着ないで何やってんだ!!」
マキ「…」
走って熱いくらいあったまったコートを羽織らされた瞬間、ブワッと百目鬼さんの匂いに包まれ、心臓が飛び上がった。バクバク高鳴る鼓動…、痛いぐらい締め付けられて泣きそうだった。
百目鬼さんの手が僕の頬に触れる。
無事を確認するように、困ったような安心したような優しい表情を向けてくれた。
額は汗びっしょり。僕を必死に探してくれたんだと心は熱くなるばかり…。
百目鬼さんはブツブツ文句を言いながら、マフラーも外して僕の首に巻きつけてくれた。
僕の顔は冷静を装っていたけど、内心は嬉しくて嬉しくて………………
百目鬼さんの匂いに包まれて、至近距離の心配そうな百目鬼さんの優しい顔…
幸せすぎる…
でも…………………
百目鬼「ったく!心配させやがって、一体今まで何処に……………………ッ!!!」
でも…
それもすぐ終わる…
………僕は、冷静に変化を見守る。
突然、百目鬼さんの眉間にシワが寄る。
至近距離の顔が歪んで、唖然と睨むように眉を顰めた。
〝信じらんねぇ…〟と言いたげに…
僕にマフラーをつけてくれながら、僕に触れていた手が離れていく…
百目鬼さんは気がついた。
僕の髪から…
百目鬼さんのシャンプーと
違う匂いがすると…
マキ「…」
百目鬼「…」
僕の予想どうり
彼の瞳は
軽蔑の眼差しに変わった………
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