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番外編65ひと夜咲く純白の花の願い
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マキを探していいのか…。
探さないべきか…。
答えは出ない…。
答えが出ないから、先生宅の玄関から動けずにいる。
携帯灰皿がどんどん膨らんできていた。
〝マキを探す〟ということは…、マキの最後の言葉、『修二と会う』を頼りに修二の家を見て来なきゃならない。
だが、それは俺がやってはいけない事だ…。
修二と話しをするにしても、そっちが後回しでマキの所在を聞くなど出来ない…。
マキの所在を修二に聞くという事は…マキとの関係を修二に話さなきゃならない…
いや…、すでにマキが話してるかもしれない…。
マキが修二の所に行くと言ってから7時間以上経ってる。修二の家に行ってたとしても、もういないかもしれない…
どうする…?
百目鬼が悩んでいると、玄関の門の前に不審な目でこちらを睨む年配の女性が、携帯を握り締めながら話しかけてきた。
女性「ちょっ、ちょっと!失礼ですけど先生の家になんのご用ですか?先生はいらっしゃいませんよ」
自分のなりと人相が周りに与える印象を百目鬼はよく分かっている、煙草を携帯灰皿で消して、背筋を正し、なるべく柔らかく返答した。
百目鬼「ああ、すいません。こちらにお住いのマキ君に渡したいものがあって待ってたんですが…、わたくしこういう者です」
百目鬼はありったけの優しい微笑みを浮かべて、探偵事務所の名刺を差し出した。
百目鬼「先生にお願いして、マキ君をうちの事務所でお手伝いをしてもらってました。マキ君はとても人当たりが良くて、凄く助かりました。今日は、お礼を渡そうと思って来たのですが留守のようで、待ってるんですよ」
すると、名刺を訝しげに見つめながら、年配女性がボソリと呟いた。
女性「また?」
百目鬼「!、また?」
女性「…ぁ…」
年配の女性は小さな声を上げて口元を隠す。
百目鬼は女性が何か知ってると見て、女性を恐がらせないように柔らかく質問した。
百目鬼「またとは?」
女性「いえ、あの…」
百目鬼「他言はしません。私について不安でしたら先生に電話して身元確認していただいてもかまいません。マキ君の周りで何か良くないことが起ころうとしてるなら、どうぞ教えていただきたい。先生も心配しているだろうし…」
女性「…ぁ…あの…。マキ君の事聞きまわってる人達が居るみたいで…」
〝人達?〟
複数人いるって事か?
百目鬼「…その話し、宜しければ聞かせて頂けませんか?怪しい奴なら、貴方の身の安全にも関わるかもしれませんし…」
優しく丁寧に説得すると、年配の女性は名刺と百目鬼の顔を見比べて、重い口を開いた。
女性「…実は…、数日前に男達と、さっき茶髪で長髪の男の子が…」
!?
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
薄暗い道をチャラい格好をした茶髪のツンツン頭が歩いていた。
ウォレットチェーンをジャラジャラ鳴らしながら、踵を引きずり鼻歌歌いながらご機嫌に夜の街へ向かっている。
通りかかった公園で、〝キィー、キィー〟とブランコの音が聞こえて、ふと中を覗く。
するとそこにチャラい男の見知った人物がブランコを揺らして座っていた。
トム「よぉ〜!マキじゃん!俺だよ!トムだよトム!」
公園の入り口から叫ぶトムに視線を向けたマキは、一瞬考えて、あぁ、と思い出したようにニコリと笑った。
マキ「久しぶり♪トム」
トム「マジ久しぶりだなぁ、2年振り?いや、3年?4年か?」
マキ「ふふ♪そんなになるんだね♪」
トムは、陽気な男で人脈の広い男だ。
知らない顔でも話しかけ、誰とでも直ぐに友達になれる。僕とも、彼が声をかけてきたのが始まり。トムとは肉体関係はない。
トム「ああ、全然dawnに来ねぇーんだもんよ」
マキ「…色々あってね♪」
僕が15の時、長く関係していた初めての男との関係が終わり、途方に暮れていた。
すでにセックス三昧だった僕は、直ぐに次が欲しくなり、ゲイの集まる場所に大人びた格好で紛れ込んだ。
洋風の顔立ちの僕は、18だと言っても通用して、この綺麗な顔で相手に困ることは無かった。
時々危ない奴がいたけど、死ぬような目には合わなかったし、初めての男との日々を思い出すよりそっちの苦痛のほうが数倍ましだった。
そんな時だった…、トムと会ったのは…。
トムはいつもニコニコしている。気が利くとか察しがいいとかは一切無かったけど、隣にいて気持ちのいい男だ。
トム「そうだ、今からdawnに行こうぜ。お前の人気アイドル並だったし、今も会いたい奴いっぱいいるよ。マスターにも顔見せろ、良くジュースおごってもらったろ?」
ふふ、大半がヤり目的だったけどね。
まぁ、枕探しに行ってたんだから、僕もヤり目的だったけど。
……。
先生に、あの店には2度と行くなと言われてるけど…。誰もいない先生の家に居るより、人のいる場所にいたい…、一人でいると、百目鬼さんのことばかり考えちゃう…。お金を渡されたっていうのに…、あの困った可愛い顔ばかり思い出す。
今日は飲んじゃおっかな…、トムには本当の歳言ってないし、ちょっとだけ気晴らししてこようかな?
こんな風に落ち込む僕は、僕じゃない…。
dawnに着くと、マスターが懐かしそうに歓迎してくれた。
トムとカウンターに座ると、直ぐにトムの知り合いが寄ってきて、「その美人誰?トムの彼氏?」なんて言ってきたけど、トムは笑いながら僕を〝マブダチ〟とかって紹介してくれた。なかには知り合いもいて、「超綺麗になってんじゃん、今夜は俺のお相手してくれよ」と冗談に口説きながら話しかける奴もいた。トムの友達はいい奴ばかりで、僕の体や容姿を狙ってはいない。口説くのも冗談の範囲で。言っても〝朝まで飲もうぜ〟って意味。
僕の体が目当ての奴は、こんな堂々と話しかけて来ない、特にトムと一緒の時は。
店の隅で、こっちを見ながらコソコソ話をしている奴らがいる。
あいつらは、明らかに僕を盗み見て噂してる。〝あのマキがいる〟と。
店に来て数時間。トムとその仲間たちと楽しく飲んでいたら、徐々に店の中の客が増えてきた。
どいつもこいつも獲物を見つけたオオカミみたいな目で僕を見てる。
中には僕と寝たことのある奴もいる。
過去の自分のやったことの結果だが、本当にあの時はどうしようもない日々を送ってた。
誰でも良かった…
セックスできれば…
何もかもどうでも良かった…。
先生に出会って。
泉やメイちゃんに会い。
セフレとして桜木さんを紹介されて、やっと落ち着いた時、自分がどれだけ自暴自棄だったか自覚した。
今、百目鬼さんに振られてお金をんたされて、何もかもどうでもいいと思う部分もあるけど。あの過去に戻ろうとは思わない…
だけど…
誰か…気晴らしに付き合ってくれないかな?
だって…僕の体には、今朝までの百目鬼さんの感触が残ってる…
早く消してしまわないと…、また気分が沈みそうで…、そんな乙女思考の自分に吐き気がする。
……。頭の中がグルグルしだした…。
ちょっと飲みすぎたかな?
顔洗ってこよう…
カウンターのトムに声を掛けてトイレに入る。洗面で顔を洗って鏡を見ると、瞼が少し腫れていた。
前髪が長いから、どかして見ないと分からない程度だけど、こんな酷い顔でいるのかとまたため息が漏れる。
ーキィィ
トイレの入り口の扉が空いて、見知らぬ男たちが入ってきた。
口元をニヤつかせながら、1人が扉の前に立ちはだかり、残りが僕を囲んだ。
……4人…。
1人だけ毛色違うのがいるな…。そいつがボスか?
マキが目を付けた、1人だけ高級なブランド服を着た若者が、ニヤニヤしながらマキに話しかけてきた。
男「君、マキだろ?調教師のマキたよね?」
どうやらこいつは、ただのヤり目的じゃなくて、僕の裏の活動を知ってる、そっちが目的の奴みたいだ。
こうゆい風に近づいてくる奴は、大抵会員審査で落ちた奴。つまり、体の悩みがある人じゃなくて、SMクラブと勘違いしてる下品な野郎が大半。
マキ「僕の名前は確かにマキだけど、調教師とかってーのは意味がわからないな♪」
男「とぼけんなよ、ずっと探してたぜ、誰も落とせない孤高の嬢王様って噂なんだって?」
噂とはあてにならない。尾びれに背びれがついて、大抵とんでもない話になってる。
ってか、そんなことを鵜呑みにするなんてこいつは頭が悪い。
マキ「意味わかんないなぁ♪通してくれない?友達が待ってるんだけど」
男「とぼけんなよ。その容姿に、その目の色。囲まれてんのに余裕そうな所とか、ネットで噂の調教師様だろ?嬢王様が簡単についてくるとは思ってねぇよ、特別なおもてなしの準備がしてあるぜ」
男が手にしていたのは、スタンガン。
これはこれは、イケテない顔の男は発想もイケテない手荒なおもてなしだね。
この狭いトイレじゃ、抵抗するだけ無駄だって言いたいのかな?
男「昔はヤりたい放題だったのに、今は金取るんだってな。嬢王様はリッチな男がお好みなんだろ?俺なら満足いく額用意するぜ?だから騒がず着いてきな」
…くだらない…。
さて、この頭の悪そうなワンちゃん達、どうしようかな…。
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