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番外編74ひと夜咲く純白の花の願い
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昨日の今日で…?
何故か荷物を抱えた百目鬼さんの元に、またまた荷物を抱えた矢田さんが門の所で合流する。
なんだあれ、と思って目をパチクリすると、賢史さんが説明しだした。
賢史「俺は自分の車で運転してきたから真っ直ぐ着いたが、神は矢田が運転したからな、道間違えて遠回りしてやんの」
マキ「あは♪流石矢田さん♪」
思わず吹き出すと、賢史さんが僕を見下ろしながら言った。
賢史「お前、神に何も言わなかったんだな、俺に言いたいこととかねぇーのかよ」
マキ「…ふふ、無いよ♪貴方は貴方の仕事をしただけでしょ」
賢史「…肝が据わってんなぁ」
賢史さんが感心したように言う。
すると門の所からこっちを見た百目鬼さんが怒鳴り声を上げた。
百目鬼「オイ賢史ぃ!!何勝手に先に行ってだ!!」
賢史「俺はこの後まだあるんだよー」
百目鬼さんは、僕と賢史さんが話しているのを見て眉間にシワを寄せて走り寄ってきた。矢田さんは置いてけぼり。
百目鬼「まず俺が話してからだっつったろ!」
賢史「悪い悪い、来る途中で無線入ったんだよ。現場近いから俺は直ぐ行く」
百目鬼「…」
賢史「マキ、朱雀だと誤解して悪かった」
百目鬼「それで謝ってるつもりか」
賢史「…まぁ、後はこれで許してよ」
おもむろに出された小さなビニール袋。
手渡されて中身を見てみると、それは僕が、ずっとずっと探してた物、百目鬼さんからもらったキーホルダーだった。
マキ「あっ!」
賢史「役所は昨日までだったんだぜ、見に行ったら残ってたからお詫びに取ってきた。大事なものなんだろ?」
百目鬼「…」
賢史さんの態度に不満げな百目鬼さんが、僕が渡されたものを眺めていた。
賢史さんは、これがどんな意味の品物なのか知ら無い。
マキ「あ…うん…、ありがとございます」
ああ…、百目鬼の前で渡してこなくて良いのに…、まぁ、でも、百目鬼さんもいちいち覚えてないか…。
キーホルダーを見ても特に反応がなかったのを少しだけ残念に思いながら、今度こそ大事にズボンのポケットにしまいこむ。
賢史「朱雀と勘違いした件はそれでチャラにしてよ。だけど俺が最後に言った言葉は謝ん無いぜ、俺は〝反対〟だからな」
マキ「…」
賢史さんは、僕の存在が修二を連想させ、百目鬼さんを苦しめることを心配している。
だから〝お前は危険だ〟と言った。
その通りだと思う。
賢史「じゃあな嬢王様。俺は仕事に行くからよ」
悪びれる様子のない賢史さんは、自分流を変えることなく、足早に帰って行った。
百目鬼「マキ、すまん…」
マキ「あは♪どうして百目鬼さんが謝るの?大丈夫、僕は何ともないし、彼は百目鬼さんを守りたかっただけなんだよ」
ニコッと微笑んでも、百目鬼さんの眉は寄ったまま。
そこへ、荷物を抱えた矢田さんが到着したかと思ったら、いきなり僕の目の前で土下座してきた。
矢田「マキさん!申し訳ありませんでした!!」
マキ「ぇえ!ちょっ、頭あげてよ矢田さん!何々!?」
地面に顔面を擦りつけるようにした矢田さん。
人に土下座されたことなんて無いからギョッとして矢田さんを立たせようと思ったけど、矢田さんの手は地面にくっついたんじゃないかくらい離れない。
矢田「お、俺、俺、とととんでもないご無礼の数々、謝っても謝りきれません!」
マキ「あー、矢田さん?顔上げて、矢田さんは悪くないよ、矢田さんは百目鬼さんに早く幸せになってもらいたかっただけなんだよね。矢田さんは間違って無いよ」
矢田「いいえ!俺が間違ってたんです!俺、百目鬼さんから全部聞きました!ど、ど、どど百目鬼さんは、お、女性とは……し、寝所を共にでき…で、でき無いと…」
マキ「え!?百目鬼さん矢田さんに言っちゃったの!?」
ビックリして尋ねると、百目鬼さんは涼しい顔で頷く。
いやいやいや、矢田さんにはショックがデカすぎる話でしょ!ってか、矢田さん超パニってんじゃん!可哀想だろ…
矢田「ど、ど、百目鬼さんは、おと…おと…」
マキ「矢田さん、無理しなくていいよ」
矢田「いいえ!無理じゃありません!お、俺は百目鬼さんを尊敬してやす!!それだけは揺るが無いっす!!」
真っ直ぐな曇りのない目が、僕に向けられた。矢田さんは、本当に本当に、ただただ百目鬼さんの幸せを願っただけ…。
矢田「マキさんが、百目鬼さんの秘密を守ってるって知らなくて!その為の女装だったって説明されやした。マキさんは、百目鬼さんとの約束を守る為に、そして、お、俺の為に色々嘘をついて百目鬼さんの秘密を守って下さってたのに…、お、俺ってやつは…俺は…ぐうぅぅ…グス…グス…」
あーあ、泣いちゃった。
百目鬼さんもフォローしてあげなよ!可愛いおバカな忠犬じゃん。
百目鬼「謝ってる時に泣くやつがあるか」
矢田「は、はい!すいやせん!」
追い討ちかけちゃったよ。
矢田「マキさん!失礼な暴言の数々本当に本当に申し訳ありやせんでした!!」
それは、本当に立派で見本DVDとか作れちゃいそうなほど立派すぎる土下座だった。
マキ「矢田さん、顔を上げて、僕は初めから何とも思って無いから、矢田さんは矢田さんなりに一生懸命百目鬼さんを守ってたんだもんね♪」
優しく微笑みかけると、ようやく、地面に擦りつけるようにしていた顔を上げてくれた。
矢田「…天使…」
僕を見つめる矢田さんが、目をウルウルさせて呟く。
百目鬼さんは、いつカミングアウトしたのかな?矢田さん目の下にクマが出来てるんだけど、昨日寝れなかったのかな?
百目鬼「矢田、いつまで見つめてるんだ、次の行動に移れ」
百目鬼さんに速されて、矢田さんが慌てて荷物の中から紙袋に入ってたものを取り出し、僕に差し出してきた。
矢田「これ、お受け取りください!」
マキ「これ…」
それは、10円饅頭の詰まった菓子折りだった。矢田さんは、今回僕に凄く酷いことしたお詫びを考えていたら、琢磨君が事務所に来ていて話しを聞いてもらい、以前僕が美味しいと言った10円饅頭が喜ぶよとアドバイスもらったと熱く語った。謝罪に来て10円饅頭って…。あまりに矢田さんらしくて、お腹を抱えて笑ったら、喜んで貰えて良かったと、安心した様子だった。
百目鬼「矢田、マキはこう言ってるが、次は無いぞ」
矢田「は、はい!」
百目鬼「よし。荷物を置いてお前は帰れ」
矢田「はい!明日は8時半にお迎えに上がりやす!百目鬼さん、マキさん、失礼しやす!」
は?
百目鬼さんと矢田さんの会話に疑問を感じ首をかしげる。
荷物を置いて帰れ?
百目鬼さんは帰らないの?
明日の朝8時半にお迎え?
まさか…
マキ「何?!」
百目鬼「俺、今晩泊まるから」
マキ「はぁあー!?!!!!」
しれっと言われて、僕は絶句した。
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