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番外編84ひと夜咲く純白の花の願い
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年末という賑やかな行事。
外では、新年を今か今かと騒ぐ人々の声がする。
閑静な住宅街も、近くに神社があるからこの日ばかりは毎年賑やかだ。
そう言えば…、ここでの年越しは、爺さん大先生がいた時だけだから久々だなぁ…。
シャワーを浴びて出て、濡れた体と髪のまま洗面台の鏡に映り込んだ自分を眺める。
百目鬼さんがつけた跡はまだ消えない。
バカな男に殴られた青あざも、指の切り傷も治るのはもう少し。
昔はこんなの毎日だった。
好きな男の跡、開発される体に付く傷…
そしてあいつの爪痕…
今はとっくに消えたはずの〝あの女〟のつけた肩の引っ掻き傷に触れ、おぞましい記憶に無いはずの傷を消そうと自分の肩に爪を立てた。
最後はただ辛かった…。
好きな男と体を重ねられるのは嬉しかったけど…、とっくに気づいてた。
彼の心は僕には向かない………
みんな誰かを好きで幸せになりたいのに…、そのたった1人と結ばれずに苦しんでる…。
みんな幸せになればいいのに…。
みんな幸せになれば…、
いつか…僕にも…
いつか………
フッ…………
馬鹿だなぁ………僕………
んな訳ねぇのに……
百目鬼さんは、本当の僕を知りたいと言ってくれた………………嬉しかった…
でも、本当の僕を見せる気はあっても…
過去を話す気は無い…………
百目鬼さんはきっと、それが受け入れられない。
修二の時、修二の心を手に入れられなくて暴走した百目鬼さん。今は衝動をなんとかする代わりに、相手の気持ちを全て知ることで、衝動を抑えるって百目鬼さんは自分なりに分析してコントロールしてきた。
百目鬼さんは僕とは相容れない。僕は、卵の中身を見せる気は無い。気持ちは素直になる様努力するけど、卵の中身は、とうの昔に捨てたものだ。とっくに腐ってる。
百目鬼さんはそこも知りたがる。
百目鬼さんは僕と同じ。
好きな人の全てで愛されたい人。
僕は彼に全てをあげられない…
僕は…とっくに壊れたピエロだ…………。
百目鬼さんは優しいから…僕を気にしてくれる。今は可愛いと言ってくれてる。
だから、今は努力する。
好きになってもらえる様に、努力する…
だけど…百目鬼さんが言ってた、可愛いと好きは違う。僕もその通りだと思う。
セックスするのと恋心は別物。
愛がなくてもセックスは出来る。
百目鬼さんは優しい…
セックスを強要してる僕のこと気遣って、僕のことを考えてくれてる………。
『あいつの優しさに漬け込むな』
大丈夫だよ賢史さん……もうすぐ終わる…。
この傷も消えるし、冬休みも終わる。
連絡先を聞いてこない百目鬼さんとの接点は無くなる。
ふと見ると、洗濯籠に今朝百目鬼さんの抜いだパジャマが残ってる。パジャマなんていつも引っ掛けてるだけ…、それを手に取って妄想の百目鬼さんを抱きしめた。
百目鬼さんの匂いがする…
匂いだけで発情する。
ドキドキして腕に包まれた事を思い出す。
僕は百目鬼さんとの夜を思い出し、熱くなりだしたものに指を這わせ吐息を漏れる。
マキ「んぅ……はぁ…百目鬼さん…」
毎日触れ合ってるのに足りない…
全然足りない……
マキ「百目鬼さん……欲しい……」
妄想の百目鬼さんが恋人の様に優しく口づけてきて、僕の熟れた中に入り込む。
淫らで貪欲な体は、百目鬼さんが居ても居なくても発情して、彼を欲しがる……
マキ「…き……百目鬼さん……好き……」
百目鬼さんの匂いのするパジャマを抱きしめて、僕は百目鬼さんを何度も汚す。
百目鬼さんはちゃんとしようとしてくれてるのに、淫乱な僕は、誠実になろうとしてくれてる彼を欲で犯してキレさせる…
そして百目鬼さんの苦悩を増やす……
『お前相手だと泣かしたくなっちまう』
体抜きで…心の繋がりを築く…
百目鬼さんはそう望んでる……
『次に好きになる奴を大切にしたい』
僕と一緒にいては、その願いは叶わない……
僕の体は、男を求める……
卵の中身は腐ってる…
自分を1番好きになってほしいという心ごと腐ってしまってる。
だから…百目鬼さんは僕を好きになることはない。修二との過去を整理して、誠実な人間になろうとする百目鬼さんには、僕は要らない。
百目鬼さんが過去を乗り越え一歩進んだ場所に、僕は要らない……
百目鬼さんへの〝調教〟はお終い……
僕のベッドは、微かに百目鬼さんの匂いがする様になった。シーツは毎日汚すから代えちゃうけど、どこかから微かに香る彼の苦い大人の香り……。
あのベッド……本当は持って出ようと思ったけど、捨てていこう…………………。
????????????????????????????????????
ーキィィー…
微かな音に、自分がいつの間にか全裸のまま寝てしまっていたことに気づいた。
薄い青の広がるベッドの上で、掛け布団も掛けず、百目鬼さんのパジャマを握りしめながら裸で寝たことに気がついて一瞬焦ったが、部屋の中に誰かがいる気配に身を硬くした。
ドアに背中を向けていたために誰か分からず寝たふりをしたら、その人物が深いため息をついた。
「………勘弁してくれ……」
ため息交じりの声は……百目鬼さんの声。
彼はもう一度大きなため息をついて、僕の体に掛け布団をかけてから部屋を出て行った。
ドアが閉まり、部屋の中に百目鬼さんがいない事を確認して身を起こし、時計を見た。
31日の夜10時を過ぎたところ。
忘れ物でもしたのかな?
ってか、パジャマ握りしめてるの見られたぁ…恥ずい…夢だったら良かったのに。
パジャマ持ってたのはマズかった…ハハッ…
乾いた笑いで自分の変態行為を反省。
耳をすましていたけど、百目鬼さんが玄関から出て行く音が聞こえない。
不思議に思って数十分ほどして、階段を上ってくる音が聞こえてきた。僕は慌てて元の体制に戻る。
百目鬼さんのパジャマを握りしめて寝るという恥ずかしい状態で寝たふりをした。
ーキィィー…
静かにゆっくりドアが開いて、誰かが部屋の中に入ってきた。
寝たふり継続?起きる?迷っていたら、髪にふわりと温かいタオルが巻かれて、髪を拭きだした。
そういえば濡れたままだった。
濡れた髪は冬の空気に冷たくなってた。
暖房は入れていたが、濡れたままではいつまでも乾かない。
大きな優しい手…百目鬼さんの手…気持ちい…。あぁ…好きだなぁ……
………………………うぅ…ムラムラする。
百目鬼「……………おい」
低くイラついた声が降ってきた。
裸だから、僕のが反応したの丸見え。
百目鬼「起きてるなら服を着ろ。何月だとおもってる」
マキ「着せて♪」
掛け布団を剥いで、裸の僕は両手を広げておねだり。
驚いた事に百目鬼さんはパジャマ着ていた。
あれ?菫ママの年越しは?良い匂いする、お風呂入ってきた?え?なんで?
そうは思ったが、広げた手を引っ込める事も出来ず。百目鬼さんを煽るように、可愛らしくしてみた…
百目鬼「ッ…、その手には乗らないぞ」
眉間にシワを寄せた百目鬼さんは、クローゼットから僕のパジャマを出して僕の顔に投げつけ「着ろ」と低く唸って、
百目鬼「それしかないのか…」
呆れた声で言っだと思ったら。
なんと。布団に入ってきた。
マキ「え?」
百目鬼「早く着ろ、そんで寝ろ」
マキ「年越しは?」
百目鬼「行った。疲れた…」
マキ「今日修二と上手く話せなかったの?」
百目鬼「…修二は聞いてくれたさ」
マキ「…よかったね♪」
百目鬼「…。早く寝ろ」
額を小突かれ、パジャマを羽織った。羽織ったけど、百目鬼さんが髪を触ったから僕の体の疼きが止まない。開けっ放しの前から胸をチラつかせて、可愛らしく小首を傾げて誘ってみた。
マキ「…百目鬼さん♪僕…」
百目鬼「…寝ろ。俺はシないぞ」
マキ「…ケチ」
百目鬼「うるせぇ、抱っこしてやるから寝ろ」
子供扱い…
百目鬼さんは、本当に何もしないで添い寝した。僕がどんなに煽っても、昨日までと違って意思は固かった。
流石、修二効果…。
修二だけが百目鬼さんを癒せる
百目鬼さんをまともな道に導いて…
百目鬼さんの願いは叶うだろう…
僕の予想通り……
百目鬼さんは前に進んだ…
迷子の子犬はもういない…
僕を腕枕で抱きしめる百目鬼さんの寝顔は柔らかく優しい表情だった…。修二と上手く話せて修二に癒されて、眉間のシワが薄くなった気がする。
よかったね百目鬼さん…
…よかっ…た……
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