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番外編87ひと夜咲く純白の花の願い
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ドクン…!!…
大砲が撃ち込まれたようなショックと衝撃。
ビリビリと全身が痺れて、一瞬で冷静さを失う…。
『俺んとこ来ないか?』
頭の中で響いてジンジン全身が痺れて一瞬で思考がとっ散らかった。
嘘だとか、悲しいとか、痛いとか、苦しいとか…嬉しいとか…
僕を……殺すつもりか……
普段は暴言とイラつく睨み顔ばかりなのに、唐突な殺し文句。
誤解するな、落ち着け、仕事の話だ…。
普段がコレなら、好きな相手だった修二には相当殺し文句言ってるだろう。そういえば惚れ薬で僕に惚れた百目鬼さんは、殺し文句のオンパレードだった。『俺のものになれ』とか『俺に溺れろ』とか…。
そんな口説き文句、好きな人には一度も言われたことのない僕には、耐性がないから、破壊力半端ない…。
でも、長年素直じゃなかった僕は、目を見開いただけで。感情が顔に出る前に、全てを遮断して、体の中に感情を閉じ込める。
危ない…
落ち着け…
落ち着け…
これは仕事の話…
……大丈夫…僕は冷静だ…
マキ「……突然で…ビックリ……」
百目鬼「なぜそんな驚く。矢田がずっと勧誘してただろ」
いやいや、経営者の百目鬼さんと矢田さんじゃ言葉の重みが違いますよ?
それに、今までは百目鬼さんこの手の話を誰かがしても、仕事は遊びじゃないって…
百目鬼「お前の接客と勧誘の能力は社員全員に見習って欲しいもんだ。刑事事件の潜入や雑用を扱うだけなら今のままで良いが、一般客を取るには、お前の力が必要だと思った。俺たちには、お前のような接客力や気配りが足りない。それに一般の依頼があれば檸檬を育てられるし、檸檬が育てば事務員も欲しい。お前なら、全部こなせるだろ?こんな良い人材だ、スカウトするだろ」
マキ「…あは♪でも大学行くし」
百目鬼「そうなったらバイトで構わない」
マキ「僕、先生のとこのバイト辞めないよ」
そう言ったら、百目鬼さんの表情が曇った。
よっぽど先生のところのバイトに嫌悪感があるようだ。
百目鬼「…………。…琢磨も梅さんもしょっちゅうお前に会いに事務所に来てる」
琢磨…。そういえば会えずに帰って来ちゃってた…
マキ「……………少し…、考えさせて」
百目鬼「ああ、考えといてくれ。とりあえず、包帯取れたら一回顔出してくれよ」
マキ「うん」
百目鬼さんの言葉に頷く。
琢磨の名前出されたら、会いに行かないわけには行かない。
百目鬼さんこそ今後どうするつもりなのかな?
確かに、僕の接客能力を褒めてくれてるのは本気みたいだけど、そういう相手に合わせた話し方や求めてそうな言葉を使うのって、全部先生のバイトで培ったことなんだよ。
仕事…だけの意味じゃない?
こないだ百目鬼さんの言った、時間をかけて僕を知ろうとしてる…のかな?
でも、振るかもしれない相手を職場に置くって、リスクがあり過ぎるだろ。気まずくなったらどうするつもり?
まぁ、そうなったら百目鬼さんが僕のクビ切れば良い話か……。
初詣から帰った僕らは、皆んなからめちゃめちゃ絡まれた。百目鬼さんは菫ママと賢史さんに管を巻かれ、しこたま飲まされて潰された。
矢田さん一人じゃ運ぶの大変だから、僕と矢田さんで百目鬼さんを事務所に運んで、自宅ベッドに寝かせた。
矢田「お、お疲れ様ですマキさん。今日はどうされますか?」
マキ「まだ陽があるし、電車で帰るよ」
矢田「と、泊まっていかれては?」
今日は矢田さんもお酒を飲んでた。
動揺丸出しの矢田さん。このシュチュエーション、始めて会った日にキスを目撃としたのと被ってるもんね、想像してるんだろう。可哀想に。僕を追い出そうとしたの相当絞られたんだろうか…。普通にしようと努力してくれるのはありがたいが、申し訳ない気もする。
マキ「ふふ♪僕本当は外出禁止だから。百目鬼さんが気を使ってくれて連れ出してくれたんだけど、夜は帰ってないとマズイから」
矢田「それでは、駅までお送りしやす」
マキ「いらないよ♪。さてさて、百目鬼さん!、僕は帰るからね♪」
ベッドに突っ伏した百目鬼さんに声をかけて、寝室を出ようと立ち上がろうとしたら、後ろから服を掴まれ引き倒された。
マキ「わっ!?」
百目鬼「…行くな」
マキ「ど、百目鬼さん?」
あーあ、目が座っちゃってるよ。
百目鬼「…外は危ない」
マキ「やだなぁ♪、今はまだ夕方だよ?酔ってよく分かんなくなってるんでしょう。仕方ないなぁ、水取ってきてあげるから離して」
手の傷のことで敏感になってる?心配とかは超迷惑なんですけど。
水取ってくるフリしてその隙に帰ろう、キレられたら収集つかなくなる。
矢田「マキさん!俺がお持ちします!」
マキ「あっ!矢田さん!僕が行く!僕行きたい!!」
呼び止めるのも聞かずに矢田さんが俊敏な動きで寝室から立ち去る。僕は百目鬼さんに服を掴まれてベッドに引き倒されたまま…
ああ…、矢田さんのバカ
マキ「…百目鬼さん?今日は僕帰るから、先生から電話来るからさぁ」
百目鬼「…ッ…声デカイ…」
百目鬼さんは頭が痛いらしく、頭を抱える。
もう、飲ませ過ぎだよ賢史さん…。
って、最後は菫ママも賢史さんも潰れてて、雪哉さんが面倒見てたけど…。
マキ「はぁ…ったく…」
呆れてため息がもれる。
こんな可愛い潰れざまを見せられたら、そばに居てあげたくなっちゃう。
そんな自分へのため息だ。
矢田さんが水を持ってきて、それをなんとか飲ませ、横にしてあげたら百目鬼さんは寝てしまった。背広とか脱がしてあげたほうが良いんだろうけど、今日の泥酔具合じゃ、それも難しそうだ。
仕方ないので可愛い百目鬼さんを放って、事務所をあとにした。
矢田さんは結局しつこく駅まで付いてくる。
僕が電車に乗ったのを見届けてから帰っていった。
家に帰り着いた僕は、自分の部屋のベッドにダイブし身を沈め、長い長いため息が漏れた。
マキ「はぁーーーー。………………あっ…百目鬼さんの匂い……」
昨日は何もしなかったから、シーツを替えてない。ベッドの左半分から百目鬼さんの匂いがする。
『俺んとこ来ないか?』
要らないことを思い出し、ズクンと疼いた。
ジワジワと痛む胸と…。
ドキドキと期待する体。
頭は冷静に冷えるのに、淫乱な体は熱を持ち始める。
今日も、百目鬼さんとシなかった。
百目鬼さんはどうするつもりなんだろう?
側に居るのは望まれてるみたい…
それは嬉しい…
だけど…
恋と、肉体関係は望まないみたい…
百目鬼さんは誠実になりたいんだ…
僕は、誠実になれない
だけど…
『俺んとこ来ないか?』
僕は、誘惑に勝てるだろうか?
初詣で貰った合格祈願のお守りと、キーホルダーを眺めながら、僕は板挟みの気持ちに苛まれる。
側にいたい…
報われないなら消えたい…
だけど…、百目鬼さんは僕を側に置いてくれようとしてる…。その希望を捨てることもできない…。グラつく気持ちの繰り返し……。
1月2日朝。二日酔いの百目鬼さんから謝罪の電話があった。仕事終わりにまた来るそう。
僕の部屋での添い寝は、今晩が最後…
今晩も抱いてもらえなかったら…、もう、確定だな…。
そう思ってた夕方過ぎ…
玄関のチャイムの音がして、僕は疑問を抱いた。
百目鬼さんが来るには早すぎる…。
そう思って玄関のに向かう。
そこにいたのは…
マキ「あれ?……帰ってくるの明日じゃなかった?泉」
泉「あけましておめでとうございます。マキが心配で早く帰って来ました。帰省してるのに何度も何度も百目鬼さんからお電話あるもので。さあ、全部説明して頂きましょうか?マキ」
棘のある言い方。ニッコリと微笑んだ顔は修羅のようなオーラを放っていた。
ヒィ〜!泉が、超怒ってるぅぅ!!
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