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蝉しぐれ
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禅さんは、生まれつき霊力が強く、将来を期待されていた。
幼い頃より優秀で、剣道・弓道・合気道と、才能溢れ。僕も同じように習っていたが、彼に敵うものはない。ただ、体格も良く筋肉質だったためか、唯一繊細な作業が苦手で、茶道や華道などの文化系は苦戦していた。それを差し引いても、何もかも飛び抜けていて、僕はずっと禅さんを慕って憧れていた。
僕は将来。禅さんをサポートするのだと思っていた。
だけど…
禅さんが中学生の時、5歳上の姉、桜さんが巫女になってから。禅さんの様子が変わってしまう。
反抗的で、勉強も修行も次第に手を抜くように…。
僕が中学生になった時には、禅さんは何もかも投げ出してしまっていた。
僕の憧れは、簡単に消えてしまう…。
僕は主を失った…
禅さんが巫にならないなら、浄さんがいる。
しかし、浄さんは霊力が弱く、将来跡を継ぐのは難しいだろうと言われていて。僕は、父に言われた。
『お前は、お前の好きなように生きなさい』
将来、父の後を継ぐのだと思っていた僕は、突然放り出されたような気持ちだった。
〝好きなように〟神託になる禅さんを支える事を目標に勉強していた僕に、〝それ以外の好きなもの〟など、なかったのだから…
そんな時だ。
マキと出会ったのは…
マキは、ヘラヘラとあんな感じだった。
はっきり言って第一印象は最悪。
僕は、尊敬できないようなふざけた人間は好きにはなれない。マキはまさに、最悪。男を取っ替え引っ替え枕代わりにしているハッテン場で有名な魔性だった。
そんなマキとたまたま出会い。
何故か僕のうちに泊めることに…
マキほど相手の懐に入り込むのが上手い人間に出会ったことがなかった…
だけど…、印象最悪のマキは…。話してみるとビックリするぐらい大人で、何もかも見透かすみたいに僕の悩みを言い当てた。なのに、不思議と幼い子供のようで、なぜかマキの話す言葉の一つ一つに考えさせられ、僕は、迷子の状態から脱出の道標を見つける。
マキには感謝している…
その時危うく跨られて食われそうになったのを差し引いてもね…。
マキも丁度、迷子だったのだから…
でも、迷子だからって許されることと、許されないことはある。
翌朝。
マキの姿が無いので探していたら…
泉「ゴホン!」
わざとらしい咳払いをすると、布団の中にいた禅が飛び起きた。
禅「え!?」
何が起こってるか把握出来てない禅。
取り敢えず、ここは泉の部屋。
布団の中の禅は昨日の格好のまま。
頬に大きな青痣…
そして隣には、寝乱れはだけ丸まってるマキ。
禅「えーーーッ!!」
禅は慌てて布団をめくり、自分の下半身を確認。
ジーンズを履いていてホッと胸を撫で下ろした。
なんたる間抜けな光景。
禅「俺…」
泉「頭は冷えましたか?」
禅「あ…」
冷めた声で言うと、禅はおでこと後頭部に触れ、思い出したようだった。
昨日は、迫る禅に頭突きを食らわせ、ヒヨッたところで下敷きにされていた右腕を引き抜き、そのまま殴り倒したら、棚に頭をぶつけて意識を失ってしまった。
だから、禅には、何故隣にマキが居るのか分かっていない。
泉「マ〜キ〜」
マキ「…んー…」
低い声で呼びかけると、丸まった猫みたいに寝乱れ浴衣から白い肌が見え放題のマキが寝返りを打った。
泉「マキ、何やってるんですか!」
マキ「ふあ?…あ…いじゅみん…おはよう」
泉「おはようじゃありません、貴方禅さんに夜這いしたんですか?」
マキ「んふふ、しようかと思ったんだけど、禅さんって体温高いんだね、なんか眠くなっちゃった♪」
禅「冗談じゃない!誤解されるような事するなよ!」
一世一代の告白の後だけに、禅は必死。
しかし寝起きのマキはぽやっと笑う。
マキ「まだ、何もしてないよぉ〜♪」
禅「なッ!」
マキ「ふふ、慌てちゃって可愛いサボテンさん♪昨日は随分先走っちゃったね♪あんな強引なやり方じゃ泉は靡かないよ♪」
見てたのか…。
頭が痛い。
口をパクパクする禅に変わり、僕が低い声を出すと、マキは駄々っ子のように喋り出す。
泉「マ〜キ〜」
マキ「だってぇ〜、泉が昨日は怒って一緒に寝てくれなかったからぁ〜、テヘペロ♪」
泉「反省の色が全く見受けられません…」
マキ「ごめんチャイ♪」
おちゃらけて笑うマキは、めちゃめちゃ含みを感じる。一体、禅さんに何を言って、何を企んでるのか…。
なんだか非常に疲れる。
朝食を済ませ、庭の池で2人で鯉に餌をやりながらマキを問いただすと、マキはケラケラ笑って言った。
マキ「あはは♪マジ?昨日告白されるまで気付かなかったの?禅さんご愁傷様ぁ〜」
泉「…、マキはいつから気づいてたんですか?」
ムッとしながら聞くと、マキはサラッと言った。
マキ「始めて会った日ぃ〜♪。だから、3、4年くらい前?」
なッ!?
マキ「あはは♪リアクション素敵だよ泉♪」
泉「ふざけないでください!マキのせいで危うく襲われるところだったんですよ!」
マキ「ふふ、大丈夫だよ、僕見張ってたし♪」
泉「見てたなら止めて下さい!」
マキ「やん♪知らないのぉー?人の恋路を邪魔するものは馬に蹴られてなんとやら♪♪」
泉「…楽しんでますね…」
マキ「楽しんでるって言うかぁ♪、禅さんには悪いけど、泉が困ってたみたいだからぁ?」
泉「は?」
妖艶に微笑むマキは、小悪魔のように何か企んでいた。
マキ「大丈夫♪全部上手く行くよ♪」
意味深なマキの言葉通り…
翌日。
自体は急変した…。
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