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お兄ちゃん相関図模様
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奏一「ん…んー…」
気持ち悪い…飲みすぎた…、息苦しさにもがきながら、俺は夢の残像にうなされる。
百目鬼が修二を襲い、その修二はむつと華南と抱き合う。
奏一「…何で…男なんだ…」
自分の気持ちが音になったことに驚いて、ハッと目を開けた。
天井が違う。自宅じゃない…良かった修二には聞こえてな……、ああ、修二は家を出たんだった…。
忽那「修二君のことですか?」
奏一「わっ!?お、脅かすなよ」
部屋の隅に忽那彩さんがいて、テーブルスタンドを点け何か書き物をしていた。壁掛けの時計が目に入り、時刻は深夜3時、4時間弱寝てしまったようだ。
忽那「それは失礼。お水をどうぞ」
部屋にすでに準備されていた水。忽那さんは保険医だけあって気が効く人だ…時々効きすぎるくらい。
忽那「修二君のことですが…」
奏一「やめてくれ、誤解だ。俺は修二がゲイであることも、むつや華南と付き合うことにも反対なわけでも後悔してるわけでもない…」
忽那「水を一口飲んで、ちゃんと聞きますから」
彩さんが俺の寝かされてるベッドの横に椅子を持ってきて腰掛ける。速されて、水を一口飲み込んだ。
彩さんは静かな優しい目をしながら、綺麗で優雅な仕草で足を組んで俺が話し出すのを待ってる。
奏一「…あんな酷い目にあって、トラウマまで出来たのに、男を好きになるもんなのかと…」
忽那「そうですね。修二君の場合はゲイですから、元々恋愛対象が男です。それに酷い目に合う前からむつ君が好きでしたから」
奏一「…俺は、修二の苦しみを経験したわけじゃない…、だから、分からない…修二の痛みも苦しみも、…時間が経てば経つほど…遠のいて。こんなもんじゃなかったんじゃないかって…、修二は乗り越えようとしてるのに…乗り越えて欲しいのに、なんで平気そうにするんだって矛盾する」
忽那「苦しんだのは貴方も同じです。痛みも悲しみも…」
奏一「違う…、俺が気づいてやれなかったからだ…。修二の悩みも、百目鬼が修二に手を出したことにも…」
忽那「修二君の過去を、貴方が抱え込むのは間違ってますよ。それに、貴方のは風化しそうな気持ちを無理やり起こして悲観してるに過ぎない」
奏一「ッ!」
忽那「もし、修二のことが本当に心配なら、過去を悔やむのはやめなさい、修二君の行く末を見守ることが貴方のするべきことです。過去を悔やむことも支えなきゃと無理する必要もありません。あの子は自立しました。今のあなたの考えは修二君を悲しませる」
奏一「…俺は…」
忽那「修二君は、1番素晴らしい気持ちを備えてます、誰も恨まず憎まず、許すという心です。そうゆう素晴らしい心の持ち主に、貴方と貴方のお母様が育てたんです。そして、むつ君と華南君に出会い、許す気持ちと諦める気持ちは違うということを学んだ。奏一が心を鬼にして、彼らの同棲を反対し、戦う力を身につけさせた。修二君は立派な男になりました。今の修二君を見ましょう」
奏一「今の…修二…」
毎日楽しそうで幸せそうで、時々喧嘩したとか元気が無くなるけど、あの3人で暮らす家に帰るのを、心待ちにしている…。
今の修二は、よく笑うようになった。
しかも楽しそうで幸せそうだ…。
忽那「修二君は、奏一の大事な弟です。父親代わりの時間は終わりにしても良いんじゃないですか?別々に暮らしてたって、一生家族であることに変わりはありません。今度は兄として弟を可愛がってあげれば良いじゃないですか」
父親代わりの時間は終わり…。
兄として可愛がる…。
寂しいような、でも、スッと肩の力が抜けるような。
忽那「今日は眠りましょう…、明日も仕事でしょ?」
奏一「ああ…」
大きな温かい手に頭を撫でられながら、ウトウトとまた眠気が襲ってくる。男なのに綺麗な指、そういえば昔ピアノをやっていたとか言ってたっけ?きっと綺麗な音を奏でるんだろうな……
ふわふわする眠気の中で、温かい手だけがいつまでも頭を撫でてくれた。修二と一緒に住んでる時も。時々修二が俺の頭を撫でた。「お兄ちゃんイイコイイコ」って。…ああ、あれは小学生低学年の修二だったっけ……あの手は暖かかったけど……とても小さかった…
忽那「オヤスミ、お兄ちゃん…」
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奏一「あ¨ーー、飲み過ぎたぁー」
羚凰「奏一さんお酒弱すぎですよ、ってかズルい、何で俺を誘ってくれないんすか!俺がいたら朝まで介抱してあげるのに」
翌日の職場で、俺は胸やけに襲われていた。
奏一「介抱ならいらない、お前より頼れる保険医様がいるからな。昨日は空きっ腹に入れたからちょっとな…」
羚凰「保険医!なんてエロい!奏一さんそんな知り合いまでいるんですね。忙しすぎるからいつ処理してるのかと思いましたけど、そうですよね、奏一さんならよりどりみどりですよね」
奏一「…羚凰お前、暫く口を開くな」
嫌悪を含んで言い放つと、羚凰は失言に気がついたようで、丸いコロコロした大きな瞳を潤ませて〝ゴメンなさい許して下さい〟ってこっちを見る。
羚凰は、保険医=女性だと思ったのだろう。だけど俺は彩さんがパッと浮かび男の手が男を組み敷く夢を思い出し百目鬼がチラついてゾッとした。
羚凰は悪気があったわけじゃない。
〝だって構って欲しかった、だって構って欲しかった〟〝ゴメンなさいゴメンなさい〟って、捨てられた犬みたいな顔して、俺の言葉を守り口を開かず、目で訴える忠犬ぶり。
奏一「グッ……、もういい!仕事しろ!」
羚凰「奏一さん…」
奏一「なんだ!」
羚凰「コレ、飲んでください」
コトっと申し訳なさそうな指が置いたのは、二日酔い・胸焼けに効くドリンクだった。
羚凰「奏一さん口にはしないけど、最近、店への嫌がらせで、ストレス溜めてるでしょ。たまの息抜きの次の日って飲みすぎてるみたいだから………、下世話な冗談言ってゴメンなさい、笑って欲しかったんだ」
そんなに顔に出てたか?
今年入った年下のヒヨッコに心配されるほど情けない顔してたのか?
羚凰「奏一さん…一人で頑張りすぎるよ…」
修二に言われたばかりの言葉を、羚凰に言われた。
俺は今、上手く立ち回れてないのか?
昨日の亮司にも綾さんにも…。
修二が自立してから、俺は、周りに甘えてるのか?
……最悪だ…。
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最悪な時は、最悪なことが続くもんだ……。
店に営業妨害していた人物と、2号店の社員が出くわし、社員が怪我をした。
幸い軽傷で、突き飛ばされた拍子に倒れた事による捻挫と打撲。本人も捕まえられず面目無いと言ってくれていて、精神的にもダメージはなさそうだった。
そして、病院の帰りに、百目鬼神と会ってしまった。
会っただけなら、まだ許せた。
だが、百目鬼は、若い女と腕を組み歩いていた。
修二の人生を狂わせておきながら、今更女だと?!
色々なことにストレスの溜まりすぎてた俺は、この時、馬鹿みたいに爆発してしまった…
奏一「よお、百目鬼」
百目鬼「そ…いち…」
奏一「それは彼女か?」
百目鬼「…違う」
社員の前だというのに、睨み殺さんばかりに百目鬼を見上げ、睨まれた百目鬼は驚きで言葉を失っていた。
すると、百目鬼の腕にくっついてた美少女が俺に向かってニコッと笑いかけてきた。
は?
俺に睨まれて笑顔を返す女なんて、そんな奴に出くわしたことがなくて驚いた俺に、美少女はニコニコ近づいてきた。
マキ「ワァーイ♪奏一さんだぁ♪こんにちは♪えへへ僕だよ♪」
奏一「…あっ」
その綺麗な顔立ちと、不思議な色の瞳に見覚えがあった。修二が早朝家に上げたり、ハッテン場に探しに行った、お騒がせ少年。
奏一「…ま…」
マキ「マキ♪」
百目鬼「こら、お前は引っ込んでろ!」
マキ「はーい♪奏一さん、僕たち仕事中なんだよ、今ね、尾行中♪」
百目鬼「黙れマキ!」
不思議な目の色した綺麗な少年マキは、女装の可愛い格好を着こなし、ふふっと笑って、その不思議な空気で俺の毒気を吸い取ったようだった。
百目鬼「悪い奏一、直ぐに見えないところに移動する」
奏一「あっ、いや、いきなり仕事の邪魔して悪かった、ちょっと気が立ってて。すまない、俺は終わって帰るところだから、仕事を続けてくれ…」
百目鬼「終わって?病院からでてきたよな、まさかどっか悪いのか?」
奏一「いや、違う。店の社員が怪我を…」
少し離れたところにいた社員を指さすと、百目鬼がさらに心配してきた。
百目鬼「トラブルか?」
奏一「…いや」
百目鬼「嘘だな、奏一は嘘つくと唇に力が入る」
百目鬼は、過去の事件を起こす前は、俺を理解してくれる良き兄貴的存在だった。
父親のいない俺に、〝肩の力を抜け、誰かを頼ることも必要だ〟と教えてくれた。百目鬼の家庭も片親で、途中、良き相手を見つけた親が付き合いだした相手の連れ子がいっぱいいたから急にお兄ちゃんしなきゃならないと言って苦笑いしていた。そんな百目鬼だから、肩肘張らずに言うこと聞いたり頼った部分があった。
あの事件までは…、
この人だけが、俺を父親役から休ませてくれた。
百目鬼「怪我とは穏やかじゃないな、言ってみろ力になる」
奏一「…」
正直ありがたい話だ…だけど…
マキ「ねぇねぇ、奏一さん、お店が何者かに営業妨害されてるって、修二にも危険な話じゃない?百目鬼さんなら直ぐに犯人捕まえると思うよ♪」
百目鬼「ッ!!」
奏一「なっ!?どうしてそれを…」
マキ「今あの社員さんに聞いた♪♪」
へらっと笑うマキは、可愛子ぶりっ子ポーズでお茶目に笑う。
この子は一体なんなんだ?
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