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お兄ちゃん相関図模様
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それから5日して、百目鬼が首謀者の目星をつけたので確かめたいと。
店ではマズイ話しになると言われ、百目鬼の指定した店で待ち合わせすることになった。
内心では、百目鬼と自分の店以外で会うことに躊躇がある。百目鬼といると胸がザワつき警戒してしまう。
修二と和解した後、修二と会う時は必ず俺の許可を取る百目鬼。そんなに何故会う必要があるのかと思っていたが、あのマキって子が関わってたのか…、修二は友達思いだからな…。
そお言えば…マキと百目鬼って一体なんで知り合いなんだ?今年の3月までマキは高校生だと修二から聞いてる。修二は、たまたま共通の知り合いだと言っていたが、あの強面の百目鬼と親しげだ知り合ったばかりには見えないし、百目鬼もやたら優しく扱ってる。年が離れてるから気を使ってるのか?
………まさか…百目鬼とそういう関係?
…………………まさかな………
あんな事修二にしといて、修二の友達に手を出すほど百目鬼も馬鹿じゃないたろ………………
…………………。
考え事をしていたら、待ち合わせの場所に着いた、緑の多いい、森林公園にあるオープンカフェ。
都会から少し離れた場所にあるから、不安だったが、開放感ある明るい場所だった。
意外だ。百目鬼がこんなデートスポットみたいな場所を指定してくるなんて…
百目鬼「奏一」
そこには、百目鬼と、長身でスタイルの良い眼鏡をかけてて仕事のできそうな女性が一緒にいた。
杏子「秘書の宇治原杏子です。本日はよろしくお願いします」
奏一「よろしくお願いします」
俺と百目鬼の2人だと思ったから、他に人がいた事にホッとしながら、それが女性であることに安堵した。
百目鬼「忙しいのに、遠出させてすまない」
奏一「いや、それはお前も同じだろ?でもどうしてここなんだ?別にお前の事務所でも良かったのに」
百目鬼「…ここなら、息がつまらないだろ」
…俺に気を使ったのか。俺の店は事務所のドアを開ければスタッフが大勢いた。オープンカフェなのは、閉鎖的空間を避けて。隣が公園で視界が開けてるのは、〝誰かが潜伏してない〟と示すため、女性を連れてきたのは、俺と二人きりを避け気を和らげるため…
奏一「……やめろよ。今は、探偵と依頼人だろ…」
百目鬼「…そうだな…」
こういう人だった。
百目鬼は凶暴で絶対的力を持ちながら、気の優しいお兄ちゃんみたいな一面を持ち、朱雀にいた頃も下をまとめる統率力を持つ人、下っ端に声をかけ、変化に気づける人。朱雀の右腕にまで上り詰めた人だった。
百目鬼「首謀者の目星をつけた」
奏一「誰だ?」
百目鬼「…その前に謝りたい」
奏一「何故?」
百目鬼「すまない、巻き込んだみたいだ」
すまなさそうに眉を寄せた百目鬼。
秘書の女性から1枚の紙を受け取り俺に提示した。
奏一「あっ!こいつ!!」
そこには見覚えのある顔が…
滝本学(たきもとまなぶ)
こいつは、以前マキを探しに発展場に行ったら、修二に切り掛かりマキを負傷させた頭の悪いボンボンだ。
百目鬼「こいつが、あの時のことを恨んでやってるかもしれない」
なるほど…こりゃ参った。
百目鬼「それとな奏一、聞いときたい事がある。滝本はあの事件の直後大怪我してる」
奏一「ああ、俺が、前歯を折ってやった」
悪びれず言う俺に、百目鬼は小さく目を見開き、そしてため息まじりに頭を抱えた。
百目鬼「…………………そぉいちぃー…」
修二に刃物を向けた。
二度とそんなことしないように忠告しておいたのに…
百目鬼「お前は相変わらず、見た目に似合わず短気すぎる…」
奏一「…あんたは随分丸くなったな」
百目鬼「俺が!?」
奏一「昔の百目鬼なら、怪我人より先に、怪我させた方を半殺しにしてた」
百目鬼「……」
少し驚いた様子の百目鬼は、何かを考え込んでるようだったが、直ぐに切り替えた。
百目鬼「滝本を引きずり出して、真相と証拠を掴み、逆恨みを止めるようにさせなきゃならないが、ちょっと手強いバックがついてる」
奏一「だろうなぁ、元朱雀特攻隊長の俺に喧嘩を売るんだ、親のスネ齧りの頭はないけど金あるボンボンってだけじゃ立ち向かいに来ないだろ」
百目鬼「奏一…」
奏一「なんだ」
百目鬼「この件以外で、なんか悩み事でもあるんだろ」
は?
それは唐突すぎて、完全に口があんぐりと開いた。
百目鬼は、ビックリするぐらい優しい眼差しで俺を見る。頼りにしてたお兄さん的存在〝神さん〟と出会った頃のように…
奏一「……そんなもんはない」
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奏一が車で帰っていくのを眺める百目鬼。
少し、奏一の表情に影があることが気にかかったが、誤魔化された。自分が心配したところで、どうにかしてやれる立場にないことが悔やまれる。
修二へ自分の欲望をぶつけた結果、好きであるはずの修二と、大事にしてきた奏一、両方いっぺんに失った。
犯人の目星がつき、百目鬼は安心と不安の両方が胸の中でザワつく。
百目鬼「証拠を掴み、滝本を締め上げるまで、マキにはこのことを伏せておかなければ…、マキのことだ、自分がきっかけだと知れば勝手に背負い込むだろう。しばらく事務所にも顔を出させないほうがいいか?……ますます会う時間が減るなぁ…。まぁ、これでしばらく〝清い〟関係になるか…」
携帯を取り出す百目鬼は、マキに忙しくなるとメールを送る。だが、〝今このタイミングで〟こういう内容よメールを受け取るマキが、何を思うのか…。百目鬼は、知らない。
マキ「…………やっぱり…」
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奏一「妙に良く気がつくし、優しいんだよなぁ…。罪悪感にしても気持ち悪いくらいで…、いくら修二と和解したって言っても、豹変しすぎだろ。修二が高校生の時会った時は、もっと鋭く尖ってて、危険だって思えたのに…」
いつものようにクダを巻く。
今はここが唯一、ただの奏一としていられる場所。
谷崎「まだお前のこと好きなんじゃないか?」
奏一「はぁあッ!?」
忽那「亮司、余計なことだよ」
亮司の言葉に驚きすぎて、持っていたビールの缶がポロっと溢れ落ちた。
彩さんが冷ややかな声で亮司を注意しながら、ビールの缶を片ずけて拭いてくれる。
谷崎「え!?イヤイヤそういう意味じゃなくてよ!」
自分の言葉が誤解を生んだことに気がついた亮司は青ざめて全力で弁解。しかし、俺は想像してしまったから、亮司を睨みつけたままでいた。
谷崎「好きは好きでも人としてだよ!
百目鬼はその昔お前が好き過ぎて修二を…」
奏一「ッ…」
谷崎「いやいやだから、そうなってお前に病院送りにされても、お前の言うことは聞いてたじゃんか、再会した時も、修二をチンピラから救う役割を果たしたけど、後日再会した制裁を受けに来たり…。奏一に会えば半殺しだって分かってて会ったり、そういうの見てるとさ、罪滅ぼしだけじゃなくて、奏一、お前に対する気持ちの表れじゃないかって。昔は誰より親密で、弟みたいに可愛がってたじゃんか」
信じてた…。誰より信頼して、誰より頼りにしてた。
あの人は、俺がどれほど家族を大事に思ってたか知ってるはずだった。それなのに、あいつは修二を傷つけた………。
許せなかった。俺の全てを裏切った。俺の弟に大きな傷をつけた。許せるはずがない…。
だけど………
百目鬼『すまない…。許してくれなくていい、奏一の気の済むまで殴ってくれ……』
2年前、修二と再会しチンピラから修二を救った後、百目鬼はこの再会が意図的だった事、本当は誤って気持ちを伝えたかったと言って俺の前に土下座する。
百目鬼『俺は…、本当にただ奏一のことが好きで、気が狂うほど好きで…。最初はお前に似てると思って修二に手を出した…、でも、修二は…俺なんかのことを理解してくれて…駄目だと思っても好きになるのを止められなかった、修二のことが好きなんだ…。あんなことしといて…信じてもらえないと思うが、修二が…好きなんだ…。許されなくても…好きなんだ…』
そう言って、再会したことを土下座した百目鬼は、俺から逃げず、制裁を受けた。
百目鬼『明日の修二の卒業式を遠くからでいいから見に行きたい。むつと華南と一緒にいるところを見て、終わりにする』
ダケド………
修二『兄貴、今までごめんね。僕、百目鬼さんと話してきて、終わりにするから。あの人とちゃんと話さなきゃいけないんだ…』
ダケド……
俺は終わりに出来ないし、百目鬼が憎いし…
終わりに出来ない……
ダケド……
怨むのに疲れてる…
忽那「奏一は、可愛らしいですからね」
奏一「は?どこが!?」
忽那「見た目の話しじゃないですよ、中身ですよ」
ますます意味が分からない。
忽那「奏一。修二君のことは、身内でよく知ってるから、自然と個人として受け入れてますが、それが自然過ぎて、ドツボにはまってますよ」
奏一「…どういうこと?」
忽那「修二君のセクシャリティーを理解してあげたい、修二君を理解したい気持ちから、修二君を人として見て受け入れていますが、ゲイのセクシャリティーについては理解できてないし、受け入れることが出来ない。その気持ちが、修二君を理解できてないんじゃないかって悩みの種になってるし、百目鬼やむつや華南が男を好きだという事に疑問を感じてる」
心の中で全く言葉にならなかった靄が、彩さんの魔法のような声で言葉に変わってく。
忽那「奏一、貴方が男を好きにならないのはそれで貴方〝の〟普通です。あなたの常識の範囲で、修二君のことやゲイというものを理解しようとしても、理解できません。理解したいなら人を見なければ。
奏一は、女の子なら誰でも好きになりますか?」
奏一「いや…」
忽那「それは女の子の中身、つまり人を好きになりますよね?」
奏一「…ああ」
忽那「人それぞれですが、ゲイもバイもレズも変わりません、人を好きになります。その上で、好みが加わります。それは性格的なことかもしれない、優しいとか頼りになるとか、もしくは体的なことかもしれない、胸が大きいとか筋肉質とか、もしくは見た目かもしれない、可愛いとかかっこいいとか」
彩さんは柔らかく微笑んだ。
忽那「奏一は、修二君のことはちゃんと人として見てます。だけど、他の人はそうは見えてない」
奏一「…」
忽那「百目鬼がどうして修二君を好きなのか知りたいのに、男同士だというフィルターの上から見てる。むつや華南達の事も、男同士でノーマルなのにという気持ちが邪魔してる。そのズレが君の悩みの種の一つ」
彩さんは、俺のこと良く分かってる…。悩みの種の一つと言った…。きっと、他の事もお見通しなんだ…。
忽那「体は入れ物です。本物は中身なんですよ」
奏一「…そんな、簡単そうに言うなよ…、彩さんは〝そう〟だから、そう思えるのかもしれないけど…」
忽那「フッ……〝バイ〟だから?関係ないですよ。私は人として、一生懸命修二守ろうとするお兄ちゃんであり、本当は可愛らしい奏一が好きですよ」
奏一「ッ…」
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