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お兄ちゃん相関図模様
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彩さんは、〝仕事してる時の顔〟のまま、艶やかに微笑む。男子校で花と呼ばれ、彩さんに癒しを求める生徒が多くいる。
確かに彩さんは男にしては綺麗目な顔だし、指なんか昔ピアノやってたから、細くて長いくて綺麗だ。
少し長めの黒髪、整った顔、大人の色気で微笑む。
不思議な癒しの空気を持った大人の男だ。
忽那「奏一、私を信用して、奏一の嫌なことはしないし、羚凰君にもさせない」
その言い聞かすような声は、何が起こるかという分からない俺の恐怖心を見透かし和らげるように、麻酔のようにふわりと響く。
彩さんとは、もう何年もの付き合いになる。修二のことが心配で心配でたまらなかった学生時代、彩さんの事を信頼して修二の学園生活の事を頼んだ。彩さんはずっと俺たちの味方だったし、彩さんのすることが俺にとって嫌な事に繋がるとは思えないし、信じたい。
羚凰「〝させない〟って、俺は奏一さんの嫌がることをする訳がない!俺にとって奏一さんはいろんな意味で大事な人だ」
剥れた羚凰に、彩さんは優しく頭を撫で、やんわり言い聞かせる。
忽那「羚凰君は若いし性欲強そうなので、万が一我慢できず、奏一を襲うようなことがあっては困りますので、一つ教えておきますが、奏一にはトラウマがあります」
羚凰「トラウマ?」
ドキッとした。まさか修二のことを?と一瞬思ったが、いや、と思い留まる。俺は彩さんをよく知ってる、人の秘密をペラペラ喋るような常識無い人じゃない。その証拠に、俺が彩さんを見つめると、彩さんはいつもの優しい瞳を向け、わずかに微笑んだ。『大丈夫』と言うように。
忽那「失礼ですが、羚凰君はセックスする時どんなプレイがお好きですか?私は甘やかすだけ甘やかすのが好きです」
へ!?なんの話し!?
羚凰「え?…確かに甘やかすのはいいけど、甘やかされんのも好きだし、普通です」
ちょっ!何故サラッと答える!?
忽那「羚凰君。奏一はね、幼い頃、見てしまったんですよ。筋肉ムキムキのマッチョな男達の肉体がぶつかり合い情事に溺れる様を、しかもかなりマニアックなSMプレイでね。それ以来、男のソレに嫌悪感があるし。男同士はそういうものなのだと記憶に刻まれてしまってるんです」
羚凰「マッチョのSMプレイ…、それはキツイっすね…」
なんか上手く言ったよ、みたいな感じになってるんだけど彩さん!全然上手く言ってないよ!嫌だ、そんなの見たくない嘘だとしても想像しちゃうよ、マジ無理。
忽那「だから、変に迫ると逃げてしまうし、ますます男に嫌悪感を持ってしまい、私も嫌われてしまいます。それは困るので、羚凰君には、どんなに奏一に興奮しても、その大きな体で襲いかからないようにお願いしたい」
は?!!
羚凰「話は分かったけど、俺、奏一さんに無理やりとかしないし、ってか、奏一さんが抵抗して俺が勝てるわけないです」
忽那「それはそうですが、大事なのは、〝男は危険〟と思われること自体にあるんです。それに羚凰君は若いですから、分かっていても、ということもありますので、飛びかかるだけで、全て台無しになるとご理解下さい」
羚凰「……分かりました」
完全には納得いかないって顔してるが、羚凰は俺が〝男に欲情する人間を警戒してる〟と理解してくれたみたいで、ギュウギュウ抱きしめてた手を少し緩めて心配そうに俺を見上げる。
『抱きしめてたい』って顔して、俺の返事を待つ羚凰に、少し困ったけど。俺も、修二を…ゲイのソレをいつまでも〝ああだ〟と思っていたくない気持ちが強かった、だから羚凰の背中をポンポンと撫でてやった。
羚凰はパァッと花咲くみたいに喜ぶ。
忽那「いいですか奏一。私も羚凰君もマニアックな趣味はありません、それに、人を思うという点では、純粋に奏一が好きです。だから奏一も、私と羚凰の外側ではなく、中身を見て欲しい、告白の答えは〝男だから無理〟ではなく、1人の人として見て、何がダメかで答えて欲しいです。それに…」
彩さんの細い人差し指が、俺の唇にそっと触れた。
忽那「中身はこれからじっくり見てもらうとして、外側でも男と女、目を瞑ってしまえば〝同じで変わらない〟ものもありますよ」
彩さんの指先が、俺の唇をゆっくりとなぞる。
忽那「キスは、男女変わらずシンプルでとても素敵な愛情表現です」
ツッと指先が唇のふくらみをなぞりながら、唇の割れ目を辿って刺激する。その指が、ゆっくりと頬をなぞりながら彩さんの掌が優しく艶めかしく包み込み、親指でまた擽るように唇を触れられてゾクッとした。
彩さんの指は、手入れが行き届いていて、男だけどごついというより細身で柔らかい。
忽那「それに、スキンシップ」
彩さんが、羚凰の頭を撫でながら、俺の腕の中にもたれるように指示し、羚凰は俺の様子を伺いながら、俺に抱きつき胸に顔を寄せた。
ピクッと体が強張ったが、羚凰が心配そうに見上げ、彩さんが優しく微笑む。
忽那「触れ合いは大切です。奏一が修二を守るように、何度も心を込めて抱きしめたのは、愛情であり、欲ではない。男女のソレや、下心だけじゃない、触れ合いはいろんなものを与えます。兄弟愛、友達の友情、親子の愛情、仲間への親愛、人だけじゃない、ペットだったり、野生の動物との触れ合いだったり、触れ合うことで気持ちを伝えることもある、語り合うこともある。触れるとは、とても簡単だけど奥深い」
目の前に抱きつく羚凰は、体は俺より大きいけど、俺より年下で、幼い。男だけど、俺を慕ってて、俺の様子に注意を払いながら、キュッと遠慮がちに腕に力を込めた。
羚凰「俺、正直奏一さんに触れてると下心ゼロじゃないけど、欲望じゃなくて、愛情込めてるから、好きな人に触れてるんだ色んな意味でドキドキするのは許して下さい」
正直な羚凰は、彩さんがせっかく〝触れ合いは邪な気持ちだけじゃない〟と言ったのに、下心有りだとワザワザ口にするし、言われて気がついたが、羚凰のやつ、ズボンの前が膨らんでやがる。
奏一「…羚凰…」
羚凰「ごめんなさい奏一さん!だって!奏一さんに抱きつけてるんだよ?奏一さんだよ?俺にとっては夢みたいな事だし、好きなんだよ!好きな人に抱きついたら心拍数も上がるし、下半身だって元気になるよ!」
純粋な気持ちとそこから生まれる欲を赤裸々に告白する羚凰は、いっそ清々しい。
忽那「ふふ、羚凰君の場合、憧れも混ざって舞い上がってしまいますよね、でもしっかり正気でいて下さいよ」
羚凰「分かってますよ」
プクッと膨れる羚凰は、彩さんに上手く手綱を引かれてるみたい、ハハッ、彩さんがすごいのか、羚凰が人懐っこすぎるのか…。
忽那「奏一、好きだという気持ちを伝える方法は様々です。言葉もそうだし、スキンシップもそうだし、それ以上のことも」
それ以上…。
でも、〝アレ〟が愛情表現だと思えない。修二は庇うみたいに色々説明したけど、〝アレ〟を許せるわけもない。
忽那「奏一…こっちを見て、今は、私と羚凰君とのことについて話してますよ。違うことは考えてはいけません」
奏一「…分かってる…、けど」
忽那「〝アレ〟は、その人の好みです」
奏一「好みなんてぬるいもんじゃない」
忽那「奏一、そういう愛し方しか出来ない人もいますし、そういう愛され方じゃないと満たされない人もいます」
それは、修二も言ってた。
『百目鬼さんは、ああいうやり方で愛情を確かめてしまうんだ、ああいうことが誰より嫌いだけど、自分をコントロール出来ないんだよ、本当は誰より相手を大切にしたいと願ってる』
修二は、百目鬼に恨み事を言ったことがない。
百目鬼を憎んでもいなかった。
忽那「焼けますね」
奏一「え?」
忽那「奏一、その強烈な体験を手っ取り早く忘れる方法がありますよ」
彩さんの細い指が再び俺の頬をなぞり、下顎を持ち上げられ、彩さんの顔が近づく。
忽那「それより強烈な体験をすればいい」
ーチュッ
柔らかな彩さんの唇が、おでこに触れて離れた。
俺は何が起こったのか分からなくて固まっていたら、俺より先に羚凰が吠えた。
羚凰「あー!!ズリぃー!!俺も!!」
そう聞こえたと思ったら、羚凰が俺のホッペに唇を寄せ、プニッとした感触が…
奏一「!!」
羚凰「へへッ、奏一さんのホッペって柔らかい」
照れ笑いする大型犬に、
微笑む保険医
俺は唖然と2人を交互に見つめる。
奏一「奏一、一瞬忘れられました?」
忘れたっていうか…
思考回路がショートしそうだ…
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