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(番外編)純愛♎︎狂愛19
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〝積み上げるのは時間がかかる。
.......が、崩れるのは一瞬だ〟
百目鬼さんを怒らせた…。
百目鬼さんはそもそも、僕が囮になるのを酷く反対していた。
さっきは思わず体が動いた、だって…百目鬼さんにナイフが刺さるかもって思って…。
百目鬼さんに叩かれた頬より、振り払われた手の方が痛い…。
謝んなきゃ…、着替えて百目鬼さんに謝って許してもらわなきゃ…。
じゃないと…見捨てられちゃう…
フラフラしながら式場内を歩いていたら、どこかのカップルの披露宴が終わり、お客さん逹をお見送りしていた。
人が多いい…、違う方から回って試着室に行こう。
マキがフラフラ歩いていたら、その人だかりの人たちがマキを見て「綺麗」とか「人形みたい」とかなんとか言って振り返る。
その中に、マキ凝視する一人の年配男性が。彼は、マキのウエディングドレス姿を見て、目を見開いた。
男性「ッ…嘘だ…」
なにか幽霊でも見ているように震える年配男性は、マキの方に向かってヨロヨロ歩き出す。
他の人たちが引き留めるのも聞かずに、マキの後をついていき、呼び止めた。
男性「〝マリア〟」
年配男性の声が、マキに届いた瞬間。
マキは、ピタリと動きを止めた。
男性「マリア、マリアなんだろ!!」
その名前も、その声も、僕にとっては忘れることのできない人物。
僕にとって、その声は、
僕の始まりで、僕の全てだった
僕がこの声を聞き間違えるわけがない…
僕はゆっくりと、その声の主に向かって振り返った。
マキ「…」
そこには、自分の知っている顔より、少しシワと白髪の増えた40半ばの年配男性が立っていた。
結婚式に参列したんだろう光沢のあるダークスーツ。とても高級なオーダーメイド。
年配男性は何かに気が付き、恐る恐る僕に近づく。
男性「ッ!?〝ユウキ?〟〝ユウキ〟か?!」
年配男性は、僕が男だと分かったようで、驚いたように目を見開きながら、歓喜に震えて僕に抱きついてき名前を連呼した
男性「〝ユウキ!〟やっと見つけた!〝ユウキ!〟」
年配の男性は周りをはばからず、涙を流して僕を抱きしめる。
僕はその歓喜に震える彼の背中をそっと撫でた。
マキ「…………清史郎さん」
僕を抱きしめて泣くこの男性は、僕の育ての親。
僕を引き取って育ててくれ、僕が色んな〝初めて〟を捧げた人…、清史郎叔父さん。
何故…こんなところにいるの?
百目鬼さんに見つかったら、きっと良くない…
だけど…泣いてる清史郎さんを知らん顔は出来ない…
清史郎「ずっと、ずっと探してたんだぞ!どうして家を出て行ったんだ…、私はお前に何かしてしまったのか?〝ユウキ〟頼む、もう消えたりしないでくれ!今はどこにいるんだ!」
縋り付くように僕を離そうとしない清史郎さんに、周りがザワザワしてきたから、僕は清史郎さんを連れて隅に移動した。
マキ「清史郎さん、落ち着いて、〝私〟消えたりしないから、ね?」
優しく可愛らしい声でそう言っても、清史郎さんは取り乱したまま
清史郎「〝ユウキ〟頼む、帰ってきてくれ」
マキ「清史郎さん、〝私〟自立しただけだよ、清史郎さんには、新しい家族があるでしょ?
清史郎「私が結婚したのがいけないのか?〝ユウキ〟もあんなに喜んでたじゃないか。私は、お前に母親を作ってやりたかったんだ」
マキ「清史郎さん、〝私〟は、清史郎さんの家族とは一緒に暮らせない」
清史郎「何故だ!お前は私の家族だ!お前を心から愛してる」
マキ「………僕は、母さんにソックリ?」
清史郎「ッ…ああ、生写しのようだ、マリアが帰ってきたかと…」
帰って…?
清史郎「………そのことを怒っているのか?、だから出て行ったのか?」
マキ「ううん。アレは、〝私〟が代わりになるって言ったから。清史郎さんは悪くない…」
清史郎「なら!どうして!!」
本当のことなど、言えるわけがない。
マキ「清史郎さん、僕、今幸せだから…、幸せに暮らしてるから、安心して。大好きな清史郎さんと暮らせないのは残念だけど、僕は自立したかった、いつまでも皆さんのお世話になりっぱなしにはなりたくなかった…」
清史郎「…結婚…、するのか…」
マキ「ふふっ、しないよ。〝私〟は結婚できないでしょ」
清史郎「どこのどいつだ」
マキ「清史郎さん」
清史郎「私の〝ユウキ〟を…」
マキ「清史郎さん!、これは仕事、変装だから」
清史郎「……、そうなのか………。
〝ユウキ〟頼む…帰ってきてくれ、私は納得できない…、私に至らぬ点があるなら言ってくれ、全部直すから!」
マキ「…清史郎さんに、直さなきゃいけないところなんてないよ……。でも、帰れない。ごめんね」
清史郎「〝ユウキ!〟頼む。マリアのように消えないでくれ、私に、〝二度もマリアを失わせないでくれ!〟」
マキ「清史郎さん…」
その時、フロアの階段から矢田さんがキョロキョロしながら登ってくるのが見えた。矢田さんがからはこっちは見えずらい。
しまった、僕を探しに来たんだ。
僕は身をかがめ、とにかく清史郎さんを説得した。
マキ「分かった、一度帰る。でも今、仕事中だから、邪魔しないで!邪魔するなら帰らない!」
清史郎「わ、分かった。じゃあせめて連絡先を…」
マキ「清史郎さんの携帯変わってないでしょ?かならず連絡するから待ってて」
清史郎「しかし」
マキ「〝私〟が信じられない?」
清史郎「………すまない…。分かった」
僕は項垂れる清史郎さんをソファーに残し、その場から立ち去った。
本当は、もう二度と、清史郎叔父さんに会いたくはなかった…。
会えばこうなるのは分かっていたから…。
どうして、こんな遠いい土地に来てるんだ…、大学に入ったらもしかしたら見つかってしまうかも知れないとは思っていたけど、こんな偶然が訪れるなんて…
あの人は、今だに僕の産みの親
〝マリア〟を愛してやまない。
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矢田「ッかしいなぁ…、どこ行ったんすか?」
矢田がキョロキョロしていると、年配男性が近づいてきた。
清史郎「誰かお探しですか?」
矢田「あっ、すいません、花嫁の格好した人見ませんでした?、細身の衣装で足のとこサーっと広がってるやつ」
清史郎「マーメードラインのウエディングドレスですか?」
矢田「そうそう!確かそんな名前…」
清史郎「いらっしゃいましたよ。貴方は?新郎?」
矢田「あ!イヤイヤ!俺たちは仕事でここに来てて、その子も同僚でして…」
清史郎「おや、何かあったんですか?」
矢田「ええそう…、あ!イエイエ!大丈夫です!問題ないですよ!おめでたい日に物騒なことなんかぜーんぜん起きてないですから!!」
清史郎「ああ、いろいろ聞いてすいません。申し訳ないのですが、貴方が不審な動きが多かったもので…」
矢田「あっ、こりゃ、失礼いたしました。俺は、探偵事務所の者でして」
清史郎「お名刺頂けますか?」
矢田「え、あ、はい!」
矢田はワタワタとポケットのシワくちゃの名刺を手で伸ばし、清史郎に手渡した。
清史郎「百目鬼探偵事務所…
ウエディングドレスの子もここで?」
矢田「あ、はい、マキちゃんもここで働いてます。バイトですけどね。彼は大学生だから、その合間の週3くらいできてます」
清史郎「マキちゃん?」
矢田「ああ、彼は、マキって言って男の子でして、今日は仕事であんな格好を、あはは、どっからどう見ても女の子にしか見えないですよねぇ」
清史郎「へー、そうなんてますか。私はてっきり追われてるのかと思ってしまって、失礼いたしました。
あちらに行かれましたよ」
矢田「あっ、これは丁寧にありがとうございやす。それでは失礼いたします!」
清史郎「お仕事頑張ってください」
清史郎がニコニコ手を振ると、矢田はペコペコ頭を下げて、その場を後にした。
清史郎「…百目鬼探偵事務所……マキ…」
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