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(番外編)純愛♎︎狂愛33
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『受け入れたいと思ってるのは百目鬼さん?』
その答えはまだ返ってこない。
緊張感で強張る心を隠し、奏一さんの手を握りしめながら。黙って固まる奏一さんの本音を引き出すように微笑む。
マキ「全部取っ払って考えてごらんよ、百目鬼さんが気になってるでしょ?」
奏一さんはなんかぐるぐるしてるみたいで言葉をなくしてる様子。
仕方ないので一つ一つ順序立てて話そう
マキ「奏一さんは、今、色んな悩みを一緒くたに考え過ぎ、悩み事はさ、根っこみたいに別れて増えて、どれも関係あることかもしれないけど増えて別物になってる。一緒くたに悩んでも土の中に潜るだけ。根本を見失ってるよ。それに、大人になると立場だとか何だとか人間関係もあるし、あっつこっち波風立てないようにやらなきゃならないかもしれないけど、奏一さんはどうしたいの?奏一さんはどう思ってるの?」
奏一「…俺は…」
マキ「修二はね、奏一さんが大好きだし、絶対的信頼を置いてるし、でもそれって、修二が兄貴なら自分を何でも理解してくれるって考えてるからじゃないよ、奏一さんなら、兄貴なら、丸ごと受け止めて分かり合おうとしてくれるって思ってるからだよ」
奏一「分かり合おうと?…」
マキ「修二が言ってたよ。『全部を知ることはできない、全部分かり合うことは難しい、だけど、分かってもらうように話すことは出来る、話さなきゃもっと分からない。兄貴は、いつでも、何度でも話しを聞いてくれて、正面から向き合ってくれる人。否定も肯定も尊重もしながら、分かり合うまで話してくれる。だから、今まで、気持ちを曲げずに済んだ』って。たしかに、修二は頑固だからね、結構ネガティブだけど、ずっとずっと温めた気持ちは曲げないでいた。奏一お兄ちゃんが、真正面から修二を抱きとめ続けたから、〝修二の心は、曲がらずに済んだ〟んですね」
奏一「俺は、何もしてない…」
マキ「ふふっ、違うよ奏一さん。貴方はずっとずっと、修二の帰る場所でいてあげたんだよ」
奏一「!!」
マキ「奏一さんはきっと、ずっと何度も悩んだよね。家族3人、修二のために今は父親として叱るべきか、兄貴として励ますべきか、年の離れた可愛い弟に、寂しい思いをさせないように両方頑張ってきた。今の修二を見れば分かる、奏一さんは修二にとって素晴らしい家族で、帰る場所」
奏一「…」
マキ「だから、奏一さんは何もかも全部呑み込んで理解して、アレコレしなくていいんだよ。理解するって、全部賛成することじゃない。
修二が一番頼りにしてるのは奏一さん。可愛い弟と〝付き合う奴〟はどんな相手だって弟を幸せにできんのかって厳しい目で見るし、大事な弟を取るみたいでちょっと気に食わない。
奏一さんの好みと修二の好みも恋愛感も違うんだから、その好みが分からないなんて普通だし、修二がゲイであることを理解してあげたいあまり、男同士に捉われすぎてる。男女だって変わらないよ、〝人としてみれば〟、好みが違うのも、大好きな弟の付き合ってる相手が気にくわないのも別に普通のことだよ。奏一さんは、意見が違ったからって相手を嫌ったり、相手の意見を押さえつけて従わせたりしないでしょ?男同士だとか男女だとか、理解しようとしたあまり、かえってこんがらがってる。人間って大きなくくりで見れば、どれもわりと簡単なことじゃない?」
奏一「…」
マキ「奏一さん、修二を分かってあげるのと、百目鬼さんを許したり受け入れたりは、別問題だから。奏一さんの気持ちで決めればいんじゃないかな?修二に聞いても、修二もそう言うと思うよ」
奏一さんの瞳が揺れていた、僕の話をちゃんと聞いて色々考えてくれてる、その証拠に、表情が和らいできてる。
マキ「迷ったら胸に手を当てて聞いてみて、ほら…」
僕は、歯形とキスマークの付く左胸に奏一さん手を持っていく。
奏一「おい!」
マキ「シー、聞いて」
僕の鼓動が、トクン、トクン、と脈打つ、そして百目鬼さんのことを考えると、だんだんトットットッと早く弾む。
マキ「好きな人のことを想うと、鼓動が早くなって、きゅぅーって苦しくなるんだよ。それを感じたら、男とか女とか、役割とか立場とか一度忘れてその気持ちと向き合ってみたら?」
奏一さんは、固まったまま、まだ喋らない、もしかして、傷のある体なんか触らせたから、具合悪くなっちゃったかな?
でも、奏一さんが喋り出したら、そしたら、百目鬼さんをどう思ってるか言われる、そう思うとさらに怖くて緊張した。
マキ「奏一さん?大丈夫?」
緊張する気持ちを隠し、頭を抱える奏一さんに話しかけると、奏一さんがボソッと言った。
奏一「…り……い」
マキ「え?」
聞き取れず、顔を覗き込もうとしたら、奏一さんはガバッと顔をあげ、〝凛としたお兄ちゃん〟の顔が崩れ、苦くて不味いもの口にしたみたいに顔を歪ませて、子供みたい「うえ〜」と舌を出した。
奏一「うぇ〜、ありえない」
マキ「えっ…」
あまりの変わりように驚いてパチクリ瞬きしてると。奏一さんは子供みたいに続けた。
奏一「全部バラして考えたって、百目鬼となんてありえない、そもそも男となんて考えたことないのに、いきなりあんなレベルの高い面に行く?」
あれ?
マキ「ぇ…あ…の…」
あれれ?
奏一「男同士について初心者なんだから、せめて、君みたいな女の子みたいな綺麗な顔の子からなら分かるけど」
奏一さんは、僕に握られた手と反対の手で、僕の顎をクイッと引いて顔を近づける。
マキ「ふえ…?」
奏一「君は、男だって分かったけど、顔は凄く可愛いし」
あの…あの…、目が座ってるよぉ
修二似の、修二より大人の男の顔してる奏一さんの顔が、ドアップな上に、僕…く、く、口説かれてりゅ?
僕は動揺を隠せない。
あっ、わしゅれてた…奏一さん酔っ払ってた
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