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〔裏番外〕狂愛♎︎純愛39
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【賢史side】
錯乱したマキはあの後、気を失い病院に運ばれた。
飲まされたものが良くないもので、検査入院となった。
事情聴取には、俺の方が話しやすいだろうと上司が配慮してくれて俺と同僚との2人で行った。
マキには申し訳ないが、意識が戻ってはっきりしてるとのことで、今日の今日、話を聞くことになってた。
辛くて悲しい思いをしているのところ悪いが、誘拐に監禁に暴行、しかも瀧本はお偉いさんとこの息子だから騒ぎが大きくなってしまってた。
被害者に事件直後に話を聞く時は、いつも申し訳ない気もする。
まだ、泣いているのかもしれない…
そう思っていた。
マキ「あっ、賢史さん♪ご苦労様でぇす♪」
マキは、個室のベッドにうつ伏せで横になってて、ニコニコ陽気に俺を出迎えた。
…。
は?嘘だろ?
つい数時間前に号泣していたのに?
マキ「寝そべっててゴメンねぇ♪もう背中痛くて大変でさー♪、ふふ♪、上向けないんだぁ♪あっ!入って入って♪」
マキはケラケラ笑って俺たちを迎え入れる。
これが監禁暴行された被害者の態度か?
唖然としながら中へと入る。
マキは点滴をしながらうつ伏せの状態でヒラヒラ手を振ってる。
その横に、四十代後半くらいの男性が立っていて、こちらに会釈してきた。
清史郎「あなたが優絆を助けて下さった刑事さんですか、本当にありがとうございます。申し遅れました、私、優絆の父の茉爲宮清史郎です」
茉爲宮?
どっかで聞いたような…
マキ「事情聴取?ふふ♪、ってか賢史さん刑事してる時は凛々しい顔してるよね、髭面だから貫禄あるし」
キャハッとギャルみたいに笑うマキは、百目鬼と別れたショックはどこへやら?、落ち込んでるとか皆無だ。
賢史「おいおい、さっきまで号泣してた癖に…」
マキ「ブブー。それは薬のせいです。〝私〟の意思じゃないもん♪泣くとかダサいじゃん。だからさ、気兼ねなくサクッとお話ししてお終いにしよう♪、何があったか1から説明すればいいんでしょう?」
賢史「…被害者なんだからもちっとさ…」
マキ「あはは、はいはい、か弱い感じで答えればいい?」
マキはうつ伏せのまま、手を口元に持って行きウルウルしながら喋り出した。
非常に馬鹿みたいな態度だが、語られた内容はヘビーなもの。そして、瀧本たちをムショに送り込む証言ばかりか、マキは平然と余罪についても語った。
瀧本の違法物の所持、過去に何人もやり部屋に強姦や調教目的の拉致を繰り返してた事…
全て瀧本がマキに語ったらしい。瀧本は脅しのつもりで言ったんだろうが、マキには全く通用しなかったようだ。
マキの証言から裏付けが取れれば、瀧本たちを木っ端微塵にできる。
聞き取りが終わったので帰るべきなんだが、俺は気になっていた。
賢史「なぁ、マキ…」
マキ「ん?」
賢史「1つだけ、あいつのために言わせてくれよ。〝代わり〟なんて嘘っぱちだぞ、あいつは〝代わり〟って言葉が大嫌いだ、過去を反省してるあいつにとって、〝代わりとか比べる〟はクソみたいな言葉だ。
あいつは、誰の代わりでもなくて、お前の事見てたぜ」
どんな反応するか、そこに興味があった。
神と別れてショックなら、この言葉に反応すると思った。
だが…
マキは、笑った。
マキ「ふふ♪、知ってる♪」
ふわっと柔らかく、でもどこか仕方のない手のかかる子供に困ったような母親のように、優しく笑った。
マキ「あれは、あの人の優しさだって、ちゃんと知ってるよ♪。
ただ、彼はあんな事言ってでも僕を遠ざけたかったんだ。ってことでしょ?」
そお、優しく笑ったマキは、最後の言葉に綺麗すぎる笑顔を浮かべた。
まるで作られたような綺麗な笑顔。その張り付いたような笑顔は、仮面の下にどんな表情を隠しているのか?
マキ「それに…、こうなるって分かってた。分かっててやったんだ♪仕方ない、いつか終わるものが今終わっただけだよ」
賢史「お前はそれでよかったのか?」
マキ「ふふふ♪ゴミが1つ片付いたでしょ?。
ふふ♪今更なんでそんな事聞くの?ずっと釣り合わないって反対してたのに♪」
賢史「ああ、反対だ」
マキ「ふふ♪だったらいいじゃん。おかしな賢史さん♪♪」
ああ、反対だ。うまくいきっこない。
だけど、あの馬鹿は、今この瞬間も、俺の携帯にメールよこしてきやがる。
「マキの事で何かわかったか?」「マキはどこに運ばれた?」「怪我してなかったか?」「様子見てきてくれないか?」「マキは意識は戻ったか?」「誰かそばにいていいなら連絡してほしい所がある」
自分でやれッ!!
俺は今仕事中なんだよ!!
泉「失礼ですが、どなたですか?」
!!
ヒヤッとした冷たい声が入り口から聞こえてきて振り返ると、そこには凛とした空気を纏いながら、冷ややかな怒気を滾らせた眼鏡男子が立っていた。
俺と連れの刑事は私服で、パッと見刑事に見えない。警察手帳を見せると、眼鏡男子は静かに病室に入ってきた。
マキ「泉♡来てくれたの?どうしてここが分かったの?」
ヘラヘラ笑ってとマキの瞳が輝いた、というより、ホッとした?ように見えた。
泉「告げ口がありましたからね」
ニッコリ微笑みながら、その笑顔は黒かった。不本意な人間からの告げ口のようだ…。それってもしかして神か?
泉「刑事さん、お話はまだかかりますか?」
賢史「いや、今終わりました」
泉「そうですか、犯人は死刑になります?」
賢史「…いや…死刑は無理ですね」
ニッコリとブラックな笑顔の眼鏡少年は、「残念」と言って茉爲宮清史郎の方を向く。
泉「初めまして茉爲宮清史郎さん。私は水森泉。マキの親友です。大変申し訳有りませんが、マキを休ませてやりたいので、今日はお引き取りください」
清史郎「ッ!私は優絆の家族だ!」
泉「はい、〝良く存じ上げてます〟。ですが、久々の家族の再会がこのような状態では、マキも少し気疲れてます。マキの…優絆さんの気持ちを考えてあげるなら、ここは1度私に任せてはくださいませんか?事件の内容が内容ですので、優絆さんのことを誰よりわかる父親の清史郎さんなら、私の言わんとすることお分かりいただけますよね?」
圧巻の迫力だった。
静かな重みのある言葉は、相手に隙を与えない。そして、茉爲宮清史郎は、後ろ髪引かれるようだったが、マキの為と今夜は帰ることになった。
マキはその間、「ごめんね清史郎さん、私、今日は疲れてて、明日には元気になるから♪」とか猫なで声で媚びながら、なぜか、見えない布団の影を利用して、目の前に立つ水森泉の服の裾を握りしめていた。
なんだ?親しいから?
いや…、マキの手が、震えてる…
俺たちと茉爲宮清史郎は、さっさと病室から追い出された。
水森泉はご丁寧に、俺たちと茉爲宮清史郎が見えなくなるまで部屋の入り口から手を振ってた。
俺は、何かあると思い。一度帰ったフリで暫く隠れてから、そっとマキの病室の前に戻ってドアに耳を当てた。
『……』
『……』
会話は、聞こえない。
『……』
『……』
聞こえるのは、会話ではなく、
マキのすすり泣く声……。
『グス……すんすん……うぅ…』
悲しくなかったんじゃない。
さっきは薬で興奮してたから泣けたけど、今は、泣きたくても泣けなかったのか?
だから、水森泉を呼んだのか?
神くんよぉー。
賢史「女王様の仮面は分厚いけど、不器用な馬鹿の仮面も分厚いなぁ…。
似たもん同士…だから、反発すんだよ。今百目鬼の本音をマキにぶちまければ、丸く収まるんじゃないか?だが、マキの自己犠牲が治るわけじゃない。結局その場しのぎだ。悪いけど俺は協力はしないぞ、泣くくらい好きなら、好きな奴のために体張るんじゃなくて、可愛く守られとけよ…」
病室の中から聞こえる啜り泣きは、いつまでもいつまでも悲しく響いて、関係ない俺の胸まで痛み出した……
マキ『…ぐしゅっ……うぅ…ズッ……』
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