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(番外編)純愛>♎︎狂愛
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修二「で?」
なぜでしょう?
修二が来たら助けてもらえると思ってたのに、なぜか今、僕は姿勢正しく正座して、隣のむつ君はプリプリしながらあぐらをかき修二の前に一緒に並んでるんだろう。
僕とむつ君の目の前には、ニッコリ微笑み、オーラが般若のような修二きゅん。仁王立です。流石、奏一さんの弟。怖いです。
百目鬼さんと別れた事。瀧本の事。乗り込んできたむつ君の事を話したら、だんだんその背中に雷雲が渦巻いているのが見えます。
ニッコリキレイに微笑む修二は、優しい作った声を降らせた。
修二「マキに事情を聞こうとして家に行ったら引っ越していなくなってたから、菫ママに相談したら矢田さんを紹介されて、マキの引っ越し先のここに案内してもらったと。そしたらマキが知らない人に連れ去らそうだったから殴りかかったらマキに止められて、説明させたら、百目鬼さんと別れてて、百目鬼さんに事情を聞こうとしたら止められたと…」
淡々と優しく語りながら、しかしその背中の雷雲は確実に勢力を増している。
修二の笑顔が怖いです。
そしてむつ君は僕の隣でキレっぱなし。
むつ「マキのやった事は馬鹿のやる事だ!こんな馬鹿だとは思わなかった!ありえない!ッ、でも!だからって!別れるなんて意味分かんねぇー!!泣かしたらただじゃおかねぇーって言っといたのに!百目鬼のやろう、ぶっ飛ばしてやる!!」
野放しにしたら、むつは絶対やりに行く。
マキ「やだなぁ、泣いてないから…」
むつ「ぁア¨ア!」
むつに胸倉を掴まれて、勢い余って押し倒された。むつはギリギリと奥歯を噛み締め胸倉を掴んだ手が怒りで震えてる。
熱すぎるむつを、どうやって落ち着かせようかと見上げたその顔は、怒ってるのに、悲しそうに瞳が揺れていた。
え?なんで?
なんでむつ君がそんな顔するの?
むつ「大概にしろよ。何も隠せてねぇんだよ」
怒鳴り散らしていたのが一転、静かなドスの効いた声で低く言い、さらに手に力が入る。
僕は、むつを落ち着かせるように、静かにそして強く言い聞かせる。
マキ「…だから、もう終わったんだよ。百目鬼さんに迷惑だからやめて」
むつ「んだとコラァ!!そんな死んだ魚みてぇな目ぇしてるやつが言うことか!終わっただ?お前の中で終わってねぇだろ!!ッ、心の中でメソメソ泣いてんだろうがッ!!…ッ…そんな目で、そんな顔してて…何の説得力もねぇんだよ!」
感情大爆発のむつは、怒りで怒鳴り散らしたのに、だんだん言葉を詰まらせる。
怒ってキレて、怒りの感情だけで色んな顔するむつ。僕に起こった事を自分の事のように怒ったり悲しんだり、そうしてむつは、真っ直ぐ突進してぶつかって、僕を揺さぶる。
部屋の隅で矢田さんが怖がって縮んじゃってて、修二は静かに僕とむつを見てた。
むつ「平気な顔すんな!平気なわけねぇだろ!百目鬼のことが好きなんだろ!泣くほど好きだろ!冷たくされてメソメソ泣いてたじゃねぇーか!」
古い話を引っ張り出されて顔が熱くなった。惚れ薬を間違ってみんなで飲んじゃって、止めに来た百目鬼さんに怒られた時の話だ。
マキ「ちょっ!やめてよ!泣いた泣いたって大の男が泣き虫みたいに言わないでよ!」
むつ「お前泣き虫だろうが」
マキ「はぁあ!違う!」
むつ「百目鬼のとこが絡むとメソメソ泣くじゃねぇか」
マキ「ちょっ!デタラメ言わないでよ!」
やめて!やめてよ!修二も矢田さんも、廊下には清史郎さんも居るのに!!
むつ「俺は修二ほどお前を見抜けねぇかもしれねぇが、お前の気持ちは修二の考えと似てると思えば大体分かるんだよ!ってか、お前、修二より全然子供だし」
マキ「えっ!修二より子供?!」
むつ「修二より寂しがり屋だし、修二よりずる賢いし、修二より甘えるし、修二より泣くし」
マキ「僕は泣いてない!」
すると、部屋の隅に縮こまってた矢田さんがこんな時ばっかりボソッと一言。
矢田「俺も泣いたの見た事ありますッス」
そこ!参加してくんな!!
修二「僕ちゃんも見た事ある」
修二ッ!!
キッと修二を睨んだけど、修二はニコッと笑う。
修二「泣く事は悪い事じゃないよ。マキは、嫌がるけど。マキが泣いたり、笑ったり、いじけたり、喜んだり、不安がったり、それは全部とてもいい事だと思うよ。全部百目鬼さんと付き合いだしてから、マキの心が綻んで年相応の表情が出るようになったからだよ」
マキ「よく言うよ、自分は泣かないくせに」
僕の言葉にわ修二は、さらに笑顔を深めた。
修二「泣かないんじゃない、今は、僕ちゃんが泣くような事にならないように、むつと華南がしてくれてるってだけ」
惚気で返され、呆気にとられて瞳を瞬いた。
修二は、むつに押し倒されてる僕にしゃがんで近づく。
修二「百目鬼さんとちゃんと話してきたら?」
何を言ってるんだ、と正直思った。
修二「じゃないと、むつが殴り込みに行っちゃうよ?」
マキ「それを止めてもらうために修二を呼んだんだけど。それに、話すも何も、僕と百目鬼さんは終わったんだよ」
するとすかさず吠えるむつ君。
むつ「終わってねぇ!」
マキ「終わったの!」
むつ「ッ!終わりでいいのかよ!」
ぐっ…、どうして放って置いてくれないの?
むつ「俺は納得できない!!」
マキ「納得出来る出来ないじゃない!気持ちが無いんだからしょうがないじゃん!」
思わず口にした言葉にハッとした。
だけど、むつには正しい意味は伝わってない
むつ「は?お前はまだ、好きだろ」
マキ「だ、だから、好きだろうと終わりは終わりだから」
むつ「終わり終わりうるせーな!だから、俺は納得できねぇー!」
マキ「だから、なんでむつ君が納得しなきゃいけないの?」
むつ「お前が納得してねぇからだろ」
サラッと返されて、喉が引きつる。
どうしてそんなしつこいの?
どうしてそんな真っ直ぐぶつかってくるの?
マキ「だから僕は…」
僕は、まだ何も受け止めれてない、別れたって現実がそこにあるだけ、その現実を見るだけで精一杯なのに、どうして、〝別れた、終わった〟って何度も僕が言わなきゃならないの?泉はそっとしといてくれた。修二も僕の気持ち分かってくれてるんじゃないの?
マキ「僕は…」
むつ「好きなんだろ?」
マキ「…」
むつ「そんな目ん玉真っ黒にしちまうほど好きなんだろ」
うっ…
マキ「…僕は泣いてない…僕がどう思ってようと関係ない…、百目鬼さんは、僕を…」
好きなわけじゃない…
ッ…
どうして、そんなこと僕が言わなきゃいけないの?どうして、現実を突きつけるの?
修二「マキ、ナイフの前に飛び出した話もそうだけど、瀧本の件と、マキも悪いんだよ」
マキ「僕が悪いんだ、百目鬼さんは悪くない」
修二「マキは、百目鬼さんがマキを庇って大怪我してもいいの?」
マキ「ッ!」
修二「百目鬼さん、苦しかったと思うよ。マキは百目鬼さんの気持ち全然わからない?」
マキ「…」
修二「大好きな人が、傷つけられたら、苦しくて辛いだろ?」
百目鬼さんは…、僕を好きだと言ったことはない…、だけど辛そうだった、ずっと辛そうだった、
マキ「辛いから…、終わりにしたんだよ…、僕といても…、辛いだけだ…、百目鬼さんはずっと辛そうだった…」
辛いと…泣いていた…
修二と奏一さんへの罪悪感に苛まれ、僕と居ると感情がかき乱されると泣いていた…
むつ「は?なんだそりゃ」
マキ「もう、そっとしといてよ。百目鬼さんはやっと僕から解放されたんだから、やっと自由になったんだから…、そっとしといて」
僕と居ても、辛いだけだ…
むつ「やっぱ百目鬼をぶっ飛ばす!」
マキ「なんでだよ!僕の話聞いてた!?」
むつ「聞いた。聞いたけどよく分かんねぇから百目鬼をぶっ飛ばして聞いてくる」
マキ「だから!」
むつ「うっせーッ!!取り繕った言葉ばっかり並べて何が本当のことなのかも分かんねぇんだよね!!お前は自分の気持ちも言葉にできねぇのか!!」
マキ「言ってるじゃん!僕は自分の気持ちずっと言ってるじゃん!!百目鬼さんに迷惑だからもう騒がないでよ!!」
むつ「それはお前の気持ちじゃねぇ!!」
マキ「なんでそんなことむつが決めるのさ!」
むつ「お前だってさっきっから百目鬼の気持ち勝手に決めてんじゃんかよ!!」
マキ「ッ?!か、勝手になんか決めてない。辛い思いさせたし、迷惑かけた、そ、それに終わりにするって百目鬼さんが言ったんだ」
むつ「おめぇーが瀧本に着いて行くからだろうが!」
マキ「!!」
むつ「大事な奴が、自分を守るために、卑劣な奴に体差し出すとかありえねぇ!!俺は百目鬼の味方じゃねぇけど、そんなことされたら怒るし!むかつくし!悔しい!そんなこと絶対にさせたくねぇー!!辛いに決まってんだろ!!苦しくもなるさ!大事な奴が卑劣な奴になんかされてたら一生自分を許せない!!」
マキ「むつ…」
むつ「俺にはその気持ちは分かる、俺は助けられなかった、昔も、高校の時も、俺が気づいて守ってやるべきだったんだけど、俺は鈍いから、修二が無理に笑ってんのにも気づけねぇで。目の前で、自分から引き渡すような真似までした。俺が鈍いから、修二を助けてやれなかった。だけどよ!!一言!!一言でも言ってくれてたら!!全力で守った!!絶対!敵に渡さなかったし!触らせもしなかった!!」
修二「…」
むつ「ッ…そこは分かる。怒るのも悔しいのも辛いのも、それは分かる。でもッ!、だからって、自分を守ろうとした奴を捨てるような真似するするなんて俺には理解できない!!」
胸倉掴んでたむつは、そう叫ぶと、急に僕を抱きしめた。
むつ「俺だったら、とっ捕まえて引っ叩いて!逃がさない!反省させて二度とそんな馬鹿な真似させない!なんでも話せってしかりつける!別れたりなんてしない!
好きなら、手放さない!」
マキ「……」
ねぇ、むつ、どうして君は、そんなに熱くてそんなにかっこよくて、残酷なの?
欲しかった言葉と、見たくない現実を突きつけられて、もう、動けない。百目鬼さんにこうされたかった…
あの手を離さないで欲しかった…
修二「違うよむつ。百目鬼さんは、マキが好きだから手放したんだ」
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