アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
(番外編)純愛>♎︎狂愛
-
百目鬼さんは、賢史さんを凄い形相で睨みつけ、カクテルグラスをカウンターに乱暴に置いた。
killerカクテルって何?
賢史「やだなぁー、イメージカクテル出しただけじゃんか。それにkillerカクテルだなんて、奏一お兄ちゃんは男だぜ?」
すっとぼけてるのか、それともマジなのか分からない賢史さんはニヤニヤ笑ってる。
すると横で聞いてたむつが、カウンターの椅子から立ち上がって身を乗り出し賢史さんに食ってかかる。
むつ「おいてめぇ〜!酒に何を混ぜたんだ!毒か!?」
だけど身長の低いむつ君の手は、カウンターの中の賢史さんに届かず、華南が服を引っ張って止める。
華南「むつ落ち着け、毒じゃない。killerカクテルって、Ladykillerカクテルって言って、飲みやすいけどアルコール度数の高いカクテルのことだよ」
華南の説明でピタッと止まったむつ。だけど意味がピンと来てない。
むつ「ん?レディー?それのどこがkiller?」
勢いのあったむつ君は急に失速してキョトンとしちゃったから、カウンターの中で賢史さんが大爆笑。
あーあー、賢史さんがそんな笑うから、せっかく華南に宥めてもらったむつ君がムスッと膨れて賢史さん睨んでるじゃんか。この二人ほんと馬が合わないみたい。差し詰め、犬に悪戯する猿ってとこ?ってか、賢史さん大人気ない…。あー、賢史さん元々苛めっ子だったっけ…。
華南の話から僕が思うに、飲みやすい度数の強いカクテル=いっぱい飲ませて酔い潰す=killer(殺す)でLladykillerカクテル?って事かと思う。
賢史さんはもしかして、奏一さんを酔い潰すつもりだった?
百目鬼「賢史の出した酒は〝ルシアン〟。飲みやすくてもアルコール度数30の強烈な酒だ」
百目鬼さんの言葉に僕も修二もむつも驚いて一斉に奏一さんを見た。奏一さんも百目鬼さんの話しに驚いていて目を丸めてる。
奏一「30度?そんなキツそうには…」
そう言ってるけど、ほんのり顔が赤くなり始めていた。
マキ「奏一さん…ほっぺが…」
隣の奏一さんの赤らみだした頬に触れると、そこは熱を持ち始めていた。
奏一「ん?」
奏一さんは僕の手を気持ちよさそうに受け入れ僕の手を優しく握り込んできた。
普段厳しい奏一さんの顔がほんのり赤いと、なんだか可愛く見える。
マキ「熱くなってるよ…」
奏一「ほんとだ、マキの手が冷やっこい」
ずっと冷えた苺みるくのグラスを持っていたからなんだけどな…、僕の指先は冷たくて、奏一さんには丁度いいみたい。
マキ「奏一さん、大丈夫?」
奏一さんが大丈夫か目を見たくて向き合って顔を近づけ優しく問いかけると、奏一さんは平気だと笑ったけど、奏一さんの頬はさらに赤みを帯びてくる。
カウンターの隣の席、膝が触れ合ってて手を握られて赤い奏一さんの顔、お酒を飲んでるのを知らなかったらなんだか誤解しそう…。奏一さんって風格あるからあまりそう思わないけど、近くで見ると綺麗で可愛い顔してる。所々修二と似てて、なんか可愛がりたくなっちゃう…。
僕があまりに心配そうに奏一さんの顔を覗き込むから、奏一さんは大丈夫だと言い聞かすように、僕の頭を優しく撫でてくれる。
奏一さんはこういう時、本当に優しく微笑むからドキッとしちゃう。
優しい笑い方、修二と同じ…、なんだか心の中がほんわりと温かくなる。
百目鬼「………」
そんなマキと奏一の至近距離で微笑み合うやり取りを、百目鬼は奏一の背中側から眉間にしわを寄せて見下ろしていた。
百目鬼「…ッ…」
マキと奏一が膝を触れ合わせて寄り添う姿から、耐えきれず視線を逸らすその表情は、苦虫を噛み潰したように苦々しい。
そんな百目鬼の一瞬の表情を、カウンターの中の賢史は見逃さず鼻で笑った。
賢史「フッ…」
百目鬼「!」
百目鬼は賢史をギロっと睨み付け、怒りをむき出しにするから、賢史は反省してないけど反省した素振りで、百目鬼を落ち着かせようとした。
賢史「おいおい、そんな睨むなよ。俺は、奏一お兄ちゃんにイメージカクテルを出しただけだろ、そんな目くじら立てるな、大人に酒出して何が悪い」
百目鬼「奏一は強くない。酔うと寝ちまうんだよ」
賢史「は?」
えっ?
百目鬼さんの暴露に、奏一さんは慌てて止めに入ったが、すでに遅い。知らなかったのか、むつも華南も驚いていた。
奏一「おい百目鬼!かっこ悪いことを大声で言うな!俺はまだ酔ってない!」
そんなこと言ってても奏一さん、ワイシャツから覗く胸元が真っ赤だし…、うなじも赤いし…大丈夫かな?
意外。スマートで大人な奏一さんがお酒に弱いなんて。だって、百目鬼さんと居酒屋で飲んでたし、さっきもお酒飲んでたし…
僕がそう思っていたら、賢史さんが遠慮なくツッコミを入れた。
賢史「え?あの顔で?どう見てもザルだろ」
奏一さんはクールで出来る男のイメージだから、確かにお酒に強そうなイメージがある。
百目鬼「お前のツラよりよっぽど繊細な顔してんだろうが!」
賢史「あらあら、あんなクールで冷たく綺麗なツラしてるのに、そんな可愛い一面があったんですか、こりゃ失礼」
チャラけた賢史さんを、百目鬼さんが鬼の形相で睨み付ける。
あっ、ヤバイ。
そのまま賢史さんをギッと睨んでカウンターの中に入って行く。
マキ「あっ!、百目鬼さん待って…」
ここで喧嘩になったらまずいよ。
思わず手を伸ばし百目鬼さんの背広の裾を掴む。
百目鬼さんは厳しい表情で僕が掴んだ手を見下ろした。
ドクンッ!!
思わず掴んじゃっ。
けど、百目鬼に触れてることに、心臓が止まるぐらい緊張して。時間が止まったんじゃないかくらい進まなく感じてるのに、鼓動はバクバクとあり得ない速さで動いてる。
僕の手を厳しい表情で見下ろしていた百目鬼さんの視線が、ゆっくりと上がり始め、その厳しい瞳は、ゆっくりと僕を視界に捉えた。
〝2度と顔をみせるな〟〝要らない〟
百目鬼さんに言われた事が頭を過ぎり、次に何を言われるか、それとも手を払われるか…。たった5秒くらいの時間で、次に起こることを予想したけど、どれも怖くて胸が張り裂けそうだった。
ゆっくりと僕をその瞳に映した百目鬼さんは、僕との目が合うと…
その瞳は直ぐに逸らされた。
ぁ…
…
百目鬼さんは小さく息を吐き、僕に静かに言った。
百目鬼「大丈夫だ、水を入れてくるだけだ」
殺気立ってた百目鬼さんは静かなトーンでそう言い、ゆっくり僕から離れてカウンター内で空いてるグラスに水を入れ、奏一さんに出してくれた。
百目鬼「ほら」
奏一「…あぁ」
百目鬼さんは奏一さんに水を飲むように勧め、カウンターに置いてあった賢史さんの作ったルシアンを捨ててグラスを綺麗に洗って片付ける。
相変わらず、優しくてマメな人。
僕の視線は、自然と下がり、百目鬼さんを掴んだ左手を見つめる。
僕の手は…
振り払われはしなかった…。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
740 / 1004