アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
(番外編)純愛>♎︎狂愛
-
百目鬼さんの瞳は驚きと混乱に揺れている。
百目鬼さんの気持ちを知りたかった。でも、このやり方で聞いたら、僕は百目鬼さんの言ってる事を信じきれないから聞かなかった。
だけど、もう別れたから、聞ける。もう疑心暗鬼しなくて良い…。百目鬼さんの言葉をただ聞いて、静かに受け止めると決めた。
百目鬼「…………………」
マキ「…………………」
百目鬼さんが僕の瞳を真っ直ぐ見てる。困惑した表情は、思考がこんがらがっちゃってるって顔。百目鬼さんは今。次になんて言おうか考えてるのか?それともかける言葉が無いのか…。グルグルしてるであろう頭の中を覗けたらどんなに良いだろう?
優しい百目鬼さんはどんなに事に迷っているんだろう?
無いものを探しているのか?ある物を隠そうとしてるのか?それとも…迷惑な僕に困っているのか…
百目鬼「…………………」
無いなら…
仕方がない…
百目鬼「………………」
無言でも構わない…。百目鬼さんの言葉を待ちながら、百目鬼さん顔を堂々と見つめてられる。
いつもと違う無精髭…疲れた寝不足のクマ。
いつも通り眉間にしわが寄ってて♪
だけど今日は困り眉、困り眉の百目鬼さんは可愛いんだ♪大きな体で困った表情、いつも抱きしめたくてムラムラしちゃう♪
いつも何かしらに苛立つ瞳は、真っ黒で綺麗で、じっと見るとつぶらで可愛いのに、百目鬼さんはそんな風に見えるっていう僕を、眼科に行けって怒る。あの瞳は1日のほとんど、苛立ちや仕事に燃えてる、けど、優しくなる瞬間もある。百目鬼さんは表情が硬くて強面だけど、瞳は正直で感情豊。あの瞳が苛立ちや怒りに燃え、優しさに灯り、悲しく揺れて、嬉しのに控えめにキラキラするのが好きだった。
その瞳が、苦悩してゆっくりと下がってく。
僕を見るのが苦しいと歪んでそれていく…
百目鬼「…………」
マキ「…………」
一度だけ、あの瞳が情熱の色に染まった。
惚れ薬で僕に惚れた時。
『俺に溺れろ』
と、甘い言葉で僕を甘美の海へいざなった。
甘い甘い蜜は、一晩で枯れるはずだった僕の花を生きながらえさせた…。酔った僕は、ゆらゆらと酔いしれ、甘い甘い夢を見た…
あの不器用な手が、僕を掴んで離さないでいてくれればと願って…
あの生き辛そうな、への字眉を、僕が和らげてあげたかった。
初めから分かってた。
愛される訳ない…って。
図々しくも夢見て、あんなものを買ってしまった…
でも、渡す前でよかった…。あんなものを渡したら、重くて仕方ない…。それに、アレが捨てられるかもしれないなんて想像するだけで涙が出そうだよ…。
ただ慰めになればと渡したマダラトビエイが車になかった時、あんなにショックだったんだ。百目鬼さんのために買った物をゴミとして捨てられるなんて…、僕の気持ちごと、ゴミになりそう……。ゴミか……、ハハッ…、その通り過ぎて笑える。
マキ「……………」
僕の瞳に映る百目鬼さんの横顔…
俯いて苦悩してる。
ああ…、無いなら答えなくていいなんて言わなきゃよかった…
言葉が無いと、死にそうなくらい苦しいのに、今は迷って言葉に困ってるだけなんじゃ無いかって思っちゃう…
心臓を締め上げられてるみたいに苦しくて痛い…、麻ヒモみたいなザラザラしたので、ギリギリ締め上げられてる気がして、息が出来ない…、目の前が暗くなってきて…百目鬼さんの顔ももう見れない…
この場で泣き崩れたとしても、芽生えなかった気持ちを宣告して貰えば良かった…
どうしよう…、手が震える…、どうしよう…泣きそう…、どうしよう…どうしよう…、動けない……
100パーセントでぶつかったら、こんなにも痛い…
マキ「……」
百目鬼「………を」
微かに…
店内の賑やかさの中に消えそうな程微かに…
でも、確かに、百目鬼さんの声がした…
百目鬼「…それを聞いて…どうする?」
百目鬼さんは顔を両手で覆いながら、苦しそうに呟く…
聞いてみたかっただけだから…
マキ「……どう…って……」
百目鬼「……」
マキ「…ただ…知りたかった……」
どうするかまでは考えてなかった…
百目鬼「……お前は…何もわかってない…」
マキ「………僕…、出来ることは頑張れるだけ頑張ったつもりだよ…、百目鬼さんに好かれたくて…、好きになってもらいたくて…。結果空回りだったけど…、良い子になるように気をつけたつもり…」
百目鬼「俺の言う事を全く聞かなかった。俺の言ってる事は無視して、奏一に言われたから反省してるんだろ?」
百目鬼さんが僕を睨みつける。
そんな…、そうじゃない…無視なんてしてない…
マキ「…奏一さんに言われて反省したけど…、百目鬼さんの言ったこと無視した訳じゃない…反省はしてた」
百目鬼「反省して、アレか」
マキ「…ごめんなさい。でも、百目鬼さんを守りたかったんだ…」
百目鬼「…それだ…それがおかしい。…お前はおかしいことだらけだ…」
百目鬼さんの手が震えてる…。
また、顔を覆って項垂れてしまう。
僕のせい?そんな苦しい?
どうしよう…苦しめたいんじゃなかったのに…
百目鬼「どうしてそうなる…俺に対してどうしてそんな思考になる…」
さっき言ったのに…
何度も言ってるのに…
百目鬼さんは、何を苦しんでるの?
僕の何が貴方を苦しめるの?
瞳を瞬いて、百目鬼さんを見ながら、そっと優しく伝えてみた
マキ「…百目鬼さんが好きなんだ…だから…百目鬼さんが楽に息できるようにしたかった…百目鬼さんを傷つけるものから遠ざけたかった…」
百目鬼「だから、それがおかしいって言ってんだ!」
マキ「…おかしくない。百目鬼さんだって、修二がむつや華南と付き合ってると聞かされた時、修二が好きだから、修二が弄ばれてないか心配して守ろうとしたじゃない。チンピラに連れ去られた時、危険を顧みず助けに行ったじゃない。好きな人を守りたいと思うのは、自然なことじゃない?」
百目鬼「違う、修二は俺と違うだろ、あいつは見た目より中身が弱いし、腕っ節だって頭脳でフォローしてるだけでたいして強くない、そんな修二を守るなら分かる。だけど俺だぞ?俺は、喧嘩なら殆ど負けたことはない
、それにお前よりガタイも良いし、それなりに頭もあるし、人脈もある。いざとなったらなんていくらでも手段はあるし、お前が出てきたところで返って足手まといだ。そんな色白でほっそっこい腕で何ができる?」
マキ「百目鬼さん、それは、物理的な話でしょ。百目鬼さんは感情的だけど、いざとなったら自分を殺せる冷静さも持ってる。修二がチンピラに拉致られた時、誰より先に助けに行きたかったのに、百目鬼さんと関わりがあると思われると修二の今後の安全を保証できなくなるからって、自分の手で助け出すのを我慢したよね。僕はね、それが出来ない…」
百目鬼「…」
マキ「自分でも笑っちゃうくらい自分が制御出来ないんだ…。百目鬼さんのこと好きになり過ぎちゃった。……バカみたいな話だけどね。百目鬼さんの全部欲しくなっちゃったんだ」
百目鬼さんの瞳は大きく見開かれた。
それは驚き?
ドン引き?
もう、どっちでもいいや
マキ「百目鬼さんの1番になりたかった。百目鬼さんに1番好きだって言ってもらえるようになりたかった。百目鬼さんにとって修二がどれほど大事な存在か、奏一さんがどれほど大好きな存在か知ってるのに、そこと競ったり、バカでしょ?僕なんかがかなう訳ないのに…。百目鬼さんにきっぱり、修二以上なんてありえないって言われたのに…」
百目鬼「え?」
マキ「諦められなくて♪
頑張ったら超えられないかなぁって、でも、百目鬼さんのことも守りたいから、結局怒らせちゃうんだけど…」
こんな細い腕…
こんな汚れた僕じゃ…
返って足手まとい…
じわりと喉の奥を締め付けて
目頭が熱くなる
マキ「百目鬼さんの、幸せそうな顔も、照れてる顔も…、笑ってる顔も、百目鬼さんの悲しみも苦しみも罪も全部、僕と分かち合って欲しかった。百目鬼さんの努力も頑張りも…僕が手伝ってあげたかった……百目鬼さんを独占したかった……百目鬼さんの全部が好きなんだ……」
溢れたものを止めることが出来なかった…
別れたのにこんなこと言われて迷惑だとか…そんなこと考えてられなかった…
溢れたものが目の前に広がって、無残に消えても…その思いを止めることは出来なかった…
マキ「ッ…優しいのに激しくて、誰より頑張ってるのに上手くいかなくて、不器用で愛情深いそんな百目鬼さんが…百目鬼さんが……ッ…」
百目鬼さん…
百目鬼神さん…
貴方のことが…
マキ「好きです…………」
溢れる気持ちは
無残に崩れたグチャグチャな顔で、鼻水まじりの涙声…
僕の1番嫌いなやり方
1番嫌いな言い方での告白
もう、嫌だ…
誰か僕を殺して…
最低な僕を…
誰か殺してよ…
百目鬼「ッ!!……」
百目鬼さんは左手の拳を強く握りしめ、その手を伸ばそうか迷いながら、苦しんで苦しんで、歯を食いしばりながら、言葉を絞り出した。
百目鬼「…どうしてだッ…どうしてッ……そうなるッ?!」
自問自答を繰り返し、一人で抱えてきたその闇。一人で飲み込み続けて溜まった気持ちは、火山灰のように、黒く重く硬い…、こびりついて取り除けないその心の闇に…
百目鬼「どうして…お前は…俺の罪を知りながら、俺の中の化け物に酷いことされながら、俺なんかが好きなんだ…、俺のことそのままでいいみたいに言うんだ。お前は俺の罪の重さも、償って変わらなきゃいけない事も知ってるし、償って変わるべきだと諭しながら、そのままの俺が好きだなんて言うんだ?」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
745 / 1004