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(番外編)純愛>♎︎狂愛
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百目鬼「どうしてお前は、狂ってる俺を好きだなんて言うんだ?」
困惑の瞳に恐怖の色が見える。
百目鬼さんはまだ、思春期の子供みたいに彷徨ってる。僕の手で導いてあげたかったけど、僕と居ると百目鬼さんは修二にした過ちを思い出し、僕に必要以上に〝普通に〟接しようとしていつも疲れて苦しそうだ。
折角修二と和解できたのに、僕が側にいることで、必要以上に百目鬼さんが罪と償いに嘖まれる。
マキ「…百目鬼さんは、狂ってなんかない。少なくとも、今は」
僕は当事者じゃないから、真実は分からない。百目鬼さんの語る罪と。修二の語る過去しか、僕には分からない。
マキ「僕が初めて百目鬼さんと出会った時、百目鬼さんは狂ってなかった。やり方は強引だったけどね…」
百目鬼「修二を調教し直せって言ったの聞いてたろ」
マキ「…多分、あれは百目鬼さんなりの譲歩だったんでしょう?自分が触ったら、修二は拒否反応が出る、でも体の興奮を少しでも緩めるにはヌくしかなかった。反省すべきことは多々あるけど。でも、どれも百目鬼さんの根本は修二のためだった。それが修二にはちょっと合わなかっただけ、その証拠に、修二は百目鬼さんを恨まなかった。修二は百目鬼さんの気持ちを、ちゃんと知ってる」
百目鬼さんの瞳は揺れ動いて、理解に苦しいと言いたげに頭を抱える。
百目鬼「お前らはおかしい…」
マキ「百目鬼さんは、どうして矢田さんを雇ってるの?」
百目鬼「は?」
百目鬼さんは唐突な質問に驚いた。
マキ「矢田さんって、運転兼電話番なのに、道間違えるし、電話とっても名前メモし忘れたり、書類紛失させたりするじゃない」
百目鬼「あいつは、アレで精一杯やってる、昔よりはマシになった。人間多少のミスはある。気持ちは誰よりヤル気がある。矢田の話は今は関係ないだろ」
マキ「そういうことなんだけどな」
百目鬼「は?」
マキ「矢田さんみたいに、矢田さんには不得意なことがあって、百目鬼さんには百目鬼さんはの不得意なことがある。百目鬼さんの場合、恋愛に対して不器用なの。昔はダメダメだったかもしれないけど、今は、大人になってそれなりに頑張ってる。全部は上手くいってないけど、自分を理解して分析して反省して、次は頑張ろうって、何度も諦めずに誠実なんだよ。その努力を、僕は素敵だと思うし、修二はそれが分かったから、百目鬼さんと会って話をしたんだよ。百目鬼さんが逃げ出さずに立ち向かうから、恨まないって言ったし、応援してくれてるんじゃん」
百目鬼「…」
マキ「変わりたいっていうなら、変われた自分は認めて伸ばしてあげなきゃ」
百目鬼「俺は、変われてない、お前を泣かせて喜んでた!」
マキ「…百目鬼さんは変われてるよ。僕は、狂ってるなんて思ったことない。僕が〝修二みたいに狂う程愛されたい〟なんて言ったから、混乱しちゃったんだよね。ごめんね。アレは、一途に愛されてて羨ましいって言いたかっただけなんだ、何年も真っ直ぐに、冷めることのない愛情が、羨ましいって……、ごめんね。忘れていいから…」
混乱の種を蒔いたのは僕…
マキ「百目鬼さんの目指す恋愛の形を邪魔するつもりはなかった。ただ、僕は羨ましかったから、ちょっと勿体無いなと思っちゃったって…」
僕が百目鬼さんの答えを隠したから、百目鬼さんの苦悩は長引いた。
マキ「百目鬼さんが今までキレてたのは、ほとんどがフラストレーションだよ」
百目鬼「…」
マキ「やりたい事や、言いたいことを我慢して、ずっとストレスを溜め込んで、1番譲れないものすら諦めちゃう。自分は乱暴な人間だって決めつけて。それに僕と居たから…。でも、今は、せっかくいい感じに変われてるんだから、自分をこれ以上虐めないでよ」
百目鬼「何を言って…」
マキ「百目鬼さん。百目鬼さんは変われてる。優しく笑えるようになったし、怒鳴るの減ったし、穏やかな時間も増えた、SEXだって今までより落ち着いてきてたでしょ?」
百目鬼「いや、落ち着いてないだろ、最後は縛って滅茶苦茶なやり方で気絶させた」
マキ「…百目鬼さんこそ、僕のこと…無視してる」
百目鬼「は?」
マキ「僕は、幸せだったって言ってるし、僕は百目鬼さんと出会って、甘やかされる心地よさを覚えた」
百目鬼「お前が俺に甘えたことなんかない」
マキ「…僕は、普通を知らない」
百目鬼「…」
マキ「僕にとって、百目鬼さんとの距離は近すぎて、会うたびに目眩がするほどの幸福を味わった。僕は、甘やかされたし、甘えたし、贅沢を覚えた…。百目鬼さんにとってそれが、その程度のことでも、僕にとっては、初めて満たされるような気持ちがした」
会う時間は限られてても、会えばSEXして、美味しいご飯を作ってくれて、お風呂で髪を洗ってくれて、出たら乾かしてもらって、その腕に抱かれて眠るといつも幸せな夢を見た。そして朝には、美味しい匂いに包まれて、甘い甘いフレンチトーストを頬張って、優しく笑う百目鬼さんに見つめてもらえる。月に一度は欠かさずデート。そんな贅沢。
マキ「百目鬼さんと出会えて良かったし、好きになって良かった。付き合えた時間は、一生の宝物だし、僕は大事にしてもらった」
百目鬼「お前は、自分の幸せを低く設定しすぎだ、もっと…」
マキ「その言葉そのまんま返すよ。百目鬼さんこそ、自分の味わう幸せを狭めて、それで罪を償うつもりでいる。修二はそんなこと望んでない、百目鬼さんに前に進んで欲しいし、幸せな時間を増やして欲しいって思ってる」
自分の幸せのための一歩を…
マキ「僕の大事な時間にケチばかりつけないでよ、百目鬼さんにとって苦痛だったかもしれないけど、僕には贅沢で、とても大事な時間だったんだ」
百目鬼「俺は、お前といて苦痛だったわけじゃない…」
マキ「…じゃあ、百目鬼さんにとってどんな時間だった?」
涙の残る瞳で、百目鬼さんを見つめて、素直に答えを待った。
百目鬼さんはたじろいで、視線がそれる。
百目鬼「ッ…それは…」
マキ「…もう、気を使う必要ないよ。別れちゃってるんだから。百目鬼さんには、正直な話をして欲しいな。
…百目鬼さんにとって、僕と居る時間はどんな時間だった?ほとんどベッドの上だったね♪フフッ。SEXばっかり強請られてうんざりだった?終わったらいつも落ち込んでたもんね。忙しいのに僕の相手は大変だったでしょ。それも、僕が修二の友達だから、無理して合わせてた?」
百目鬼「修二修二うるさい」
マキ「…僕はね。百目鬼さんと一緒に居られる時間は幸せで温かくて嬉しかった。その時間が待ち遠しすぎて、もっと一緒に居たかったって思ってた。フフッ♪、僕ね、百目鬼さんの家に住み着くつもりだったんだよ♪」
百目鬼「は?」
マキ「大学への入学で一人暮らしするために引っ越したのに荷ほどきしないで、いつか百目鬼さんの所に転がり込んじゃおうって思ってた♪、フフッ♪僕はね、もっと百目鬼さんと一緒に居たいって思うくらい、百目鬼さんとの時間は大好きな時間だったんだ」
百目鬼さんにとっては、転がり込まれたら迷惑極まりないよね。僕、一緒に住んでたら、絶対毎晩襲ったもん、裸エプロンとか、ありとあらゆるプレイしたりして、百目鬼さん搾り取られて干からびちゃったかも♪
だから、僕はやっぱり、猫に生まれれば良かった。ミケみたいに百目鬼さんに飼われてれば、百目鬼さんを苦しめることも疲れさせることもしなかったのに…
百目鬼「………俺にとって、……お前との時間は……騒がしい時間だった」
床を見つめたまま、口を開いた百目鬼さんは、ポツリポツリと呟く。
百目鬼「賑やかで…いつも嵐のように落ち着きのない時間だ…」
あはは、確かに、僕と居る百目鬼さんはいつも僕に振り回されて、あたふたあたふたしてた…
百目鬼さんは困ったように眉間にしわを寄せて僕を見た。
百目鬼「…ほっとけなくて…目が離せない…」
マキ「…」
百目鬼「可愛いと思っちまったが最後。その不思議な瞳に魅了されて、誘われるままたがを外れて、お前を貪った…」
マキ「…ごめんね」
百目鬼「……お前は、掴み所が無くて、付き合ってる間も、ひらひらひらひら蝶のように舞ってる。掴んだら、羽を捥いでしまいそうだ…」
マキ「僕は、そんなヤワじゃない」
百目鬼「俺はお前を傷つけてばかりだ」
マキ「…僕は、傷ついてばかりいない。本当は傷ついてないって言ってあげたいけど、今日は言わない。僕が傷つくのは、百目鬼さんが傷つく時だ」
百目鬼「は…?」
マキ「百目鬼さんが僕と居て、傷ついたり苦しんだりした時。僕が好きになったりしなかったら、僕以外の誰かなら、修二や、奏一さんなら百目鬼さんは幸せになれたんだって思う時」
百目鬼「おい、修二や奏一の名前を出すな、2人は関係ない」
マキ「……」
百目鬼「ッ…悪い。俺に想われるなんて、2人の耳に入ったら迷惑になる。誤解されたら困るからはっきり言っとく、煩い番犬に噛み付かれる」
マキ「…嫉妬深い番犬だからね」
百目鬼「……、俺は、あの2人には、もう恋愛感情は無い」
え?
百目鬼「意外そうな顔をするな。俺はお前の中でどんだけ外道なんだ」
マキ「外道だなんて思ったことない」
百目鬼「…特別な存在ではあるが…、もう、手を出そうだなんて思わない。2人にはやっぱり笑顔でいて欲しいからな」
マキ「奏一さんと和解できたの?」
百目鬼「和解とか、許されるとか、そうゆう次元の問題じゃない」
マキ「…でも、奏一さんはきっと今の百目鬼さんと、また仲良くしてくれるよ。奏一さんに百目鬼さんのこと色々聞いたけど、百目鬼さん。とても優しくて男気があっていい人って感じだったよ」
百目鬼「…お前ら一体なんの話をしたんだ」
マキ「初めて会った日の話とか、百目鬼さんが奏一さん相談に乗ってあげた話とか、元気がないって心配してくれる時は、百目鬼さん口下手だから、いつも山盛りの野菜炒め食べさせられたとか。奏一さん短気だから止めるのは百目鬼さんの役目なんだけど、百目鬼さんも短気だから結局止まらないとか…」
百目鬼「やめろ…恥ずかしい…」
あっ、耳が赤くなった、可愛い。
百目鬼「とにかく、俺は同時進行できる程器用じゃない」
マキ「同時進行?」
百目鬼「お前と付き合ってるのに、修二や奏一の事なんて、そんなことできるわけないだろ、俺は〝不器用〟だからな」
あら、不器用って言いすぎちゃったみたい…
マキ「怒った?」
百目鬼「…それにそんな事したら、浮気だろ!」
マキ「…」
百目鬼「…ん?そういえば、やたら奏一にこだわった時期があったな、まさか…」
マキ「えっ…そ、そうだっけ?」
百目鬼「奏一がお前と2人で話したことがあると言ってた、まさかお前…」
百目鬼さんの瞳の揺れが止まって瞬く間にメラメラとした苛立ちの色が広がっていく。
ジリジリと詰め寄られ、僕は行き場を失う。
百目鬼さんの〝お怒り〟は、地響きの如く低く響く。
もう目と鼻の先…ち、ちかいよぉぉ〜
マキ「あ…ぅ…あ…」
百目鬼「さっきまでの饒舌さはどうした」
マキ「ふえ……ぇ…」
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