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(番外編)純愛>♎︎<狂愛11
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百目鬼さんは、僕を車の後部座席に乱暴に放り投げ、トランから毛布を取り出し僕に投げつけた。
終始無言で睨みつけ、相当怒ってる。
百目鬼さんが後部座席のドアを壊れるんじゃないかってほど強くバンッ!と閉め、その音が耳を突き抜ける。
するとそこに、茉爲宮家本宅から1人の男性が出てきた。その人はブルーのスーツの襟に、弁護士バッチを付けていた。
百目鬼「そっちはどうだ烏磨(からすま)」
烏磨「親父さんの方は納得させたよ」
烏磨と呼ばれた男は、長身で眼鏡をかけた、細身で目の鋭い男。
百目鬼さんの知り合い?味方?
百目鬼「俺は先に帰るから、後始末は任せた」
烏磨「そうだね、君は帰ったほうがいい。殺人起こされちゃ、いくら俺でも助けられないからね」
そう言って烏磨は、小さく肩を上げて笑う。そして、僕のいる車の後部座席を覗き込む。
烏磨「やぁ、貴方が茉爲宮優絆君?」
毛布に包まる僕を覗き込み、烏磨はニヤッと面白いものを見るように口角を上げた。だが、すぐに百目鬼さんがドアの前に立ちふさがる。
百目鬼「さっさと行け、俺が成一を殺す前に」
烏磨「茉爲宮優絆くんって美人だねぇ、写真で見るより色気がまた…、独り占めしたい気持ちも分かるよ神」
百目鬼「殺すぞ」
百目鬼さんの怒りはずっと煮えたぎったまま、いつ噴きこぼれるか分からない状態。烏磨はそんな百目鬼さんに動じることなく、困ったねと言いたげに両手を広げる。
烏磨「助け出したのにご機嫌斜め?お前、連れて帰ってその子壊すんじゃないよ」
百目鬼「…」
烏磨「お前が約束通り暴れなかったから、法的にちゃんと後始末付けてやるから、だから、そんな大事にしてんなら、お仕置きは程々にな。じゃ、俺は今から成一を締め上げてやっから、それでは失礼」
烏磨はそう言い残し、離れの方へ向かった。
法的に?後始末?
百目鬼さん弁護士まで用意してたの?
それに、さっき、成一さんを丸裸にする用意があるって…、あれって、ハッタリじゃなくて、マジ?
百目鬼さんが車の運転席に乗り込み、車が軋んだ。乱暴にドアを閉め、百目鬼さんは無言のまま車を走らせる。バックミラーにわずかに映る顔は、先ほどと変わらず阿修羅より怖い顔してる。
マキ「…ご、ごめんなさい…百目鬼さん…」
成一のを噛みちぎって百目鬼さんの所に帰ろうと思ってた…のに
百目鬼さんは無言で答えてくれず、こちらを見ようともしない。
マキ「さっきのは…違うから…、成一を油断させようとして…、やっつけて帰ろうと…」
百目鬼さんは聞こえてないみたいに、何にも言ってくれない。
急にゾッと怖くなった。
百目鬼さんは、僕が滝本の時みたいに自己犠牲をやったと思ってるに違いない。だとしたら、きっとありえないくらい怒ってる。あの時みたいに…。許せないくらい怒って…、僕のこと…めんどくさい…要らないって…
マキ「ッ違うんだ、成一にムカついて…それで、それでギャフンと言わせたくて…。さっき言ったのは油断させるためで…僕…」
百目鬼「黙れッ!!」
マキ「ッ」
鼓膜がどうにかなりそうな怒声が響いて、思わず耳を塞いだ。
百目鬼さんは進行方向を睨み、僕を見ようとはしない。
怒ってる…
百目鬼さんが…こっちを見てくれない…
どうしよう…
怒ってる…
帰りたかったのに…
百目鬼さんの腕の中に…
どうしよう…
今度こそ…
捨てられちゃう…
捨て……
やだ、やだ、やだよ。
違うのに、あの時みたいに投げやりになったんじゃない、僕は帰るつもりだった、ちゃんと百目鬼さんの所に…
要らないなんて言わないで…
怖い…
今まではいろんな人の気持ちを見てきた。片思いに迷う人も、思われて迷ってる人も、みんなの気持ちを汲み取ってきた。なのに、自分のことになったら何もかも分からない。
百目鬼さんに嫌われる。
百目鬼さんが怒ってる。
百目鬼さん…
僕はどうすればいいの?
今までは、みんな僕があれこれすれば喜んだのに、百目鬼さんには、なにをしたら良いのか分からない。
いい子にするから…
いい子になるから…
うっ……うぇ……やだ…
やだよ…帰りたいよぉ…
ヒッ…ぅぅ…
百目鬼さんの側に…帰りたいよぉ…
えっく……ッ……うっ…
いい子にするから……
マキ「…ッ…ごめ…んなさい…ごめん…なさい…、ヒッ…ッ…ごめんなさい…」
百目鬼さんを守りたかった。百目鬼さんの元に帰りたかった。誓約書なんて嘘だって…、僕が好かれてなくても、要らない子でも、百目鬼さんが側においてくれればいい…。百目鬼さんが取ってくれたこの手を、離したくなかった…、ただそれだけだったのに…
また、失敗した…
嫌われた…
捨てられちゃう…
違うのに…犠牲になればいいなんて思ってない…僕にできることは何だろうって…、従順にしてればみんな喜んで隙もできるって…、犠牲になろうなんて思ってない!帰ろうとしたんだ!
誓約書なんて成一の作った偽物で
百目鬼さんはきっと帰りを待っててくれるって…
待ってて…帰ったらまた抱きしめてくれるって……
ちょっと眉間にシワを寄せ、「遅い」って言って、でも優しく「おかえり」って…抱きしめてくれるっ……
思っ……ッ……て……
マキ「…ッ……ぅ……ヒッ…」
どうしよう…、どうしよう!涙が止まらない、毛布に押し付けても嗚咽が漏れる。
成一が色々言っても何とも思わないのに、百目鬼さんが無言なだけで、不安で怖くて…、どうしよう…今までどうやって涙を止めてたっけ、今までどうやって何でもないって誤魔化してたっけ…今までどうやって…
分かんなくなっちゃった…
分かんなくなっちゃったよ…
マキ「…て…ないで…」
どうやって1人で平気なふりしてたっけ…
百目鬼「クソッ!!!!」
ーガンッ!!
ビクッ!?
突然の咆哮と叩きつける音に、ビックリして体が跳ねた。
その途端車体が横に傾き急ブレーキ。ガクンッとつんのめって、毛布がずれ込んで前が見えない、毛布を取ろうとしたら、ガチャ!バン!と扉の開閉音。
えっ!?百目鬼さんが降りちゃった?!
やだ!置いてかないで!!
慌てて毛布を取ったら、すぐ横でガチャッと後部座席の扉が開いて百目鬼さんが覗き込んだと思ったら、百目鬼さんに頭を掴まれて下向きに押さえつけられ顔を上げられないようにされた。
百目鬼「こっち見んな!」
ッ…
顔…見たくないんだ…
僕の顔…見たくないんだ…
怖いッ…怒ってる…捨てられちゃう…
マキ「ッ…ぅ…ッ…ぅぇ…ッ」
百目鬼「ああー!クソッ!こんな時に一枚もない!」
ゴソゴソしながら百目鬼さんが怒鳴ったから、僕はビクッと体を硬直させてしまった。
百目鬼さんは僕の頭を押さえつけていた手を引いて、ボソッと呟く
百目鬼「クソ…俺は奏一じゃねぇんだ」
奏一さん?
百目鬼「いいかマキ、俺を見るな」
マキ「ッ…、うぅ…」
百目鬼「クソ!違う!泣くな!俺の性癖知ってんだろうが!」
百目鬼さんの性癖…
泣かしたくなる?…涙を見ると興奮する…ってこと?
百目鬼「それに、今、口きいたら、絶対心にもないこと言っちまう!俺は怒ってるんだぞ!」
瞬間、百目鬼さんの大きな手が僕の両頬に触れてきて、恐怖でビクッと肩が跳ねて目をギュッと瞑る。すると、百目鬼さんの触れてきた大きな手は、僕の頬を撫でて、そっと優しく涙を拭った。
…え?
百目鬼「いいかマキ」
低い低い怒り混じりの声が、怒ってるのに優しく降ってきた。
百目鬼「泣くんじゃねぇ」
そっと目を開け、ちょっとだけ顔を上げると、やっぱり、変わらず阿修羅のように怒って睨む百目鬼さんは、怒りながら困ってて眉毛をピクピクさせながら、反対の頬の涙もも拭ってくれた。
百目鬼「運転しながらふいてやれないし、ハンカチもティッシュも気の利いたものなんか俺がもってるわけねぇだろ」
その時ふと、奏一さんのことを思い出した。奏一さんが前、僕の涙を拭きながら、百目鬼さんを怒った事があった。もしかして…それで、涙を拭いてあげなきゃって…思ったの?
キョトンと百目鬼さんを見ていると、百目鬼さんが僕をギロッと睨む。
百目鬼「顔あげんな!!
勘違いするな、俺は怒ってる」
その言葉に、止まっていたはずの僕の涙は再び溢れ出してしまう。
ダバァーっと溢れた涙を見て、百目鬼さんがギョッとして、自分のワイシャツの裾でゴシゴシ拭くけど足りなくて、百目鬼さんのワイシャツの裾が涙と鼻水でぐちゃぐちゃ、百目鬼さんは、僕の羽織ってた毛布を掴んでゴシゴシ僕の顔を拭いてきた。
百目鬼「おい!コラ!泣くんじゃねぇ!鼻水垂らすな!これじゃいつまでたっても帰れないだろうが!」
マキ「ヒッ…ッ…ごめ¨ん¨な¨ざい¨」
ボロボロボロボロこぼれる涙は、悲しいだけじゃなくて、怒っててもこうして涙を拭いてくれるってことは、嫌われてはないかもしれないという安堵と、ワイシャツまで使って拭ってくれたこと…、泣いてる僕を気にかけて車を止めてくれたこと、全部ひっくるめて止まらなくなってた。
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