アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
8〔裏番外〕ゆくえ……
-
『~~~~~~!』
『~~~~~~!』
なんだ?騒がしい声がする…
『ギャーギャー』
『ギャーギャー』
段々増える声は、なんだか赤ん坊の泣き声のようで耳に響いて騒がしい。
マキ『神さん♡』
マキ?
マキ『ほら、可愛いでしょ?僕頑張って、神さんの子供、六子ちゃん産んだよ♡』
はあッッッツ?!
マキの左手にはマキそっくりの天使のような赤ちゃん達が3人、猫っ毛のふわふわ髪の毛に、ジュピター色の瞳。
右手には、俺そっくりの眉間にシワを寄せたいかつい顔の赤ん坊が3人。
マキ『みんな、パパだよぉ〜♡』
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
百目鬼「うわッ!?」
ビックリして飛び起きる勢いで目を開けると、自分の左手の上には可愛い寝顔のマキ。
一瞬現実だと焦ったが、腕の中のマキは、さっきみたいな赤ん坊じゃない。
百目鬼「夢……」
ありえない事だと思いながら、隣で眠るマキのお腹を確認して触ってみる。当たり前だが男のマキが妊娠できる訳もない。
百目鬼「…こいつならマジで産みそうだ…」
ボソッと出た言葉に自分で焦り、頭を抱える。
百目鬼「……俺似は勘弁してくれ…」
買い物の時、お店のショーウィンドウに映ったイカツイ顔がおしゃぶり咥えてるとか頭が痛くなってくる。
夢の中の自分似の赤ん坊が強烈過ぎて、その顔に囲まれるかと思うと悶々としてしまう。
六子なんて面倒見たことないぞ…一体どうやって面倒見るんだ…。甘えん坊ないマキにの赤ん坊をおんぶに抱っこにしながら3人目のオシメ替えて、俺似の3人は揺籠に乗せて片手間に揺らしてやり。お腹が空いたとオッパイ欲しさにマキに群がる赤ん坊どもを宥めて、マキの両手に二人、俺が2人に哺乳瓶でミルクやりながら、残りの2人を揺籠に乗せて足で揺らしながら待たせるか?…いや、待て…、そもそもマキの胸から母乳なんか出ない………。
しかしマキなら…
「神さん♡なんか胸からミルク出てきた♡味見してみる?」
とか言いそうで怖ぇーなー。
それに少し大きくなろうものなら、お母さんマキの隣で寝るんだと争奪戦が始まりそうだ…
ってか、ガキども、お母さんマキの隣はお父さんの俺って決まってんだぞ。
ガキどもにブーブー言われウルウル見つめられても譲らねぇ、ガキは早く寝てよく寝て起きたら良く遊んで泣くのが仕事だ。
フン。
ああ…、変な夢見た。
折角の寝る直前に味わったいい気分が台無しだ。
………。
そっと、腕の中のマキの頭を撫でてやる。
マキは気持ちよさそうに眠っていて、寝顔は幼く穏やか…。
眠る直前に話してくれた過去は、マキの言いづらい記憶の一欠片。
アルバムのページを捲って見るように、マキの過去が全て覗けたらいいのに…。
マキは平気なツラして笑ってるが、俺は知ってる。人間誰でも孤独は辛い。自分を理解してくれる人がいない事、それだけで辛い。普通の日常で苦労もなくそこそこ幸せに過ごしていたとしても、孤独に感じる瞬間、自分の存在価値を問う。何故自分はここにいるのか?何故生まれてきたのか?何故生きるのか?
俺はマキじゃないから、マキの本当の事は分からない。マキが何に苦しんだのか?マキが何を辛いと思うのか?
たとえそれを知ったとしても、俺には、マキを救ってやる言葉を言う事は出来ないだろう…。
俺は、マキに救いの言葉を貰ったと言うのに。その一言で、7年以上も雁字搦めで重たい重石に潰されていた心が解放されたというのに……
俺はといえば、マキの喜びそうな事をして、マキの心が溶けていくのを待つしかできない……。
早くマキの全部が欲しくてアルバムを覗き込んだりしたが…、1人でばかり写ってるアルバムからは、手掛かりすら掴めない…
ただ…、マキは幼い頃から周りに気を使っていて、清史郎を心から慕っていたって事だけ……。
マキと、もっと早く出会っていたらどうなったろう?
それこそ修二と出会う前に…
マキはその時も、俺に恋しただろうか?
俺は、マキを欲しいと思っただろうか?
もっと早くこんな風に満たされたかったと思いながら、俺たちは、この酷い道のりがあったからこうしてお互いを強く欲しいと思うんじゃないかと感じる事もある……
マキの全部が欲しい…
心も体も…
過去も…
これからも…
無理だと知りながら、貪欲に求めてしまう。
マキの心が、怯えているは自分のせいなのに、腕の中にいてもまだ足りないと感じてしまう。
それでも暴走しないのは、マキが俺を好きだという気持ちだけは、揺るがないと感じ始めているからだ。
どんなに好きな人を求めても、その心が俺を求める事はなかった。
だけどマキは、俺が必要だと全身全霊で求めてる。
それが真実だと信じる事が出来始めてる。
マキの全てが欲しい。
この細っこい体が抱えてるもの全てが、俺が貰う。この細っこい体を抱きしめて離さない。
マキが捨てようとした物も、捨てたものも全て。
俺が全部独占する。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
マキの体をキツく抱いて目を瞑った。
だからすぐに分かった。
今俺は、再び夢の中にいる。
だが今度は、随分リアルな夢だ。
ココは、薄暗い草むらの中。
空は雲に覆われ、今にも雨が降りそう。
辺りを見回すと、遠くにベンチやジャングルジムが見える。
どうやら、ココは、薄暗い緑の生い茂る公園のようだ。
時間が何時か分からないが、人の気配が無く、嫌な空気が漂っている。
妙にリアルなのに、ココは見覚えがない場所だ。
ーガサガサ!!
急に慌しく草むらに誰かが入ってくる音がした、姿が見えず音のする方に目をこらすと、太ったメガネの男が、何かを引きずって来て覆いかぶさった。
「ハァーハァー、大人しくしてれば優しくしてやるよ、ハァーハァー、ちょこっと目を瞑ってればすぐに終わるからね」
尋常じゃない興奮状態でねっとりと喋るその太った男が、何をしようとしてるのか直ぐに分かった。
「綺麗な脚だねぇ、へへっ、さぁ、大人しく脱いで、ハァーハァー、痛いのは最初だけだからねぇ…」
太った男の方へ近づくと、男の贅肉の下に組み敷きられてるのは、明らかに小さな子供の体、太った男の汗ばんだ手で衣服を乱されて、上半身は裸にされ、まさに今、下を脱がされた所だった。
百目鬼「ッ!!!」
「何してる!」と言おうとしたその瞬間。
俺の言葉より先に、太った男が後ろに飛びのいて叫んだ。
「お前男ッッ!!?」
転びろうになりながら後ずさり、自分が襲ったのが男の子だとわかったらしい太った男は慌てていたが、近くまで来ていた俺に気が付いて目が合った。
百目鬼「何してる!」
男「ヒィッ!」
男は俺のヤクザ顔を見るなり真っ青になって一目散に逃げて行った。
百目鬼「おい、お前大丈ぉ……」
言いながら、倒れている子供に話しかけて言葉を失った。
そこには、あの不思議なジュピター色の瞳をした小さな少年が、暴漢に襲われたとは思えないほど冷めた目をして俺を見ていた。
百目鬼「…マキ」
少年「……」
間違いない。この瞳の色に、アルバムで見た茉爲宮優絆とソックリだ。それに、マキは、小4で変質者に襲われたとは言っていた。
この少年はマキだ。
少年は〝マキ〟と呼ばれても反応せず、地面からゆっくりと上半身を起こした。
百目鬼「…お前、茉爲宮優絆だろ」
少年「………おじさんは誰ですか?」
怖がりもせず、冷静に聞いてきた少年は、小4にはとても見えない目をした茉爲宮優絆。暴漢に襲われ、さらに見知らぬ俺に見下ろされながらも平然と言葉を交わし、逃げようともしない…。
これが…茉爲宮優絆?
これは、俺の夢の中だよな…。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
841 / 1004