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11〔裏番外〕ゆくえ……
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俺に、マキの初めてを清史郎にやる手伝いをしろってか?
どんな夢だよ!
起きろ!
さっさと起きろ!
でないと俺が何をしでかすか分からない!
優絆「………」
無言で見つめてきてた茉爲宮優絆の瞳が、不安気に揺れた。そしてマキ同様誤魔化してヘラヘラ笑う。
優絆「あは♪変なこと言ってごめんなさい、忘れて♪」
あークソ!
知ってるぞ畜生!!
その残念そうな目…。嘘つきマキの誤魔化す時のヘラヘラ笑い。
世の中を知る前に特殊なセクシャリティーに悩む子供の苦悩。俺は痛いほど知ってる…。俺も、修二も、何度も思った。もっと早く仲間と出会って話ができていたら、こんな風にはならなかったと……。
これは夢だ、これは夢だ。夢なら、マキの初めてを俺が奪うことも、俺に惚れさせることだってできるはず、なのに………
百目鬼「………好きな人がいるのか」
優絆「……」
割り切れない気持ちで出した声は低くて、茉爲宮優絆を怯えさせたかとヒヤッとする。なるべく優しく、なるべく優しくと自分に言い聞かせても、俺の眉間のシワは伸びない。
百目鬼「正直に答えるなら答えてやる」
優絆「…………います」
茉爲宮優絆の顔が、真剣な恋する瞳に変わる。大好きな清史郎を想って、可愛らしく頬を染めてる。
百目鬼「俺は確かに、ゲイだ」
優絆「神さんは、好きな人いるの?その人に告白した?」
不安げに瞳を揺らしながら、片思いに苦しんでるだろう茉爲宮優絆は、必死に質問してくる。
俺はなぜ、こんな夢を見てる?
百目鬼「いるぞ、大切にしたい奴がな。告白は、されたんだ」
優絆「どんな人どんな人?やっぱ大人で綺麗な人?」
どんなってお前だよ!
百目鬼「大人じゃない、お前よりは大人だが、背伸びばかりして無茶ばかりする中身はガキンチョのほっとけないやつさ」
優絆「その人のどこに惚れたの?」
百目鬼「惚れられたんだ」
優絆「告白にOKしたってことは、好きになったところがあったんでしょ?どんなとこ?」
茉爲宮優絆は、不安と好奇心の入り混じった瞳で見つめてくる。
俺は、なんで、こんなこっぱずかしいことを本人に答えなきゃいけねぇんだ…。
だけど知ってる。この悩みはきっとちゃんと答えてやらなきゃいけないんだ…
百目鬼「…そいつは、いつも気になる存在だった。危なっかしいし、嘘つきだし、でも、人の気持ちが誰より分かるやつだった。取り繕った顔の下は、いつも誰かに気を使って、優しくて、明るくて、心配性で、器用なのに下手くそで、いつも自分の幸せを諦めてて、どうしようもない奴で、健気で可愛いやつだった。いつも1人でなんとかしようとしやがって、ほっとけねぇ……兎に角、訳わかんないやつなんだ。誰かの腕の中で大事にされたいのに、大事にされることに怯えてる。1人で悲しい泣き方をするやつだ……。だから、俺の腕の中で泣かしたらどうなるかと思って、俺の腕の中で甘やかしたらどうな風に笑うか見たかった。ムカつくほど頑固で意地っ張りで小悪魔みたいなところもあるがな」
優絆「………それって、好きなの?相手に流されてない?」
百目鬼「は?」
優絆「好きだって言われたから気になっちゃったんでしょ?」
何故お前にそんなこと言われなきゃならないんだ…。
百目鬼「話聞いてたか?言われて気になったのは確かだが、俺は流されてない」
優絆「…でも、どこが好きなのか分かってないよね?泣かしたいの?笑顔にしたいの?」
百目鬼「だから話を聞いてたか?全部だよ!あいつの全部俺のものなんだよ!」
こんなに分かりやすく言ってんのに、なんで分かんねぇんだ?
優絆「どこか1番好きなところは?」
百目鬼「しつこいな!全部だ!俺はマキの全部が好きなんだよ!」
優絆「……」
百目鬼「……」
優絆「……」
百目鬼「なんでお前が顔を赤くする!」
優絆「…なんか、恥ずかしいこと聞いた気がして」
百目鬼「おめぇーが言わせたんだろうが!」
なぜ俺は、小4の茉爲宮優絆相手にマキへの気持ちを告白しなきゃならないんだ!!
そもそも同一人物だし!今言ったところで、小4の茉爲宮優絆は清史郎が好きだし!なんか俺がフラれてるみてぇーじゃねーか!畜生が!!
百目鬼「お前はどうなんだ!」
優絆「え?」
百目鬼「文句垂れるなら、お前の好きって何だよ!」
俺の恋愛観は人と変わってる自覚がある。だが、マキだって、だいぶ捻くれて変わってるぞ!だいたい、恋愛するのに2番目で良いとか、誰かの代わりで良いとかおかしいだろ!
優絆「僕は…、早く大人になりたい。大人になって、綺麗になって、賢くてなって、頼ってもらえる存在になりたい」
百目鬼「は?」
優絆「神さん酷いよ、聞きれたから答えたのに」
百目鬼「いや、なんか違うだろ。お前は確かに子供だけど、綺麗だし、賢いし、しっかり者で頼りになるだろ?」
優絆「…」
百目鬼「…ああ、聞き方が違うのか、茉爲宮優絆、お前はどんな恋愛がしたいんだ?」
優絆「…どんな…って…、大好きな人に大好きって言ってもらえて、いつも側にいて、ずっとずっと仲良し?」
ああ良かった。小4らしい答えで、この頃から毎日SEXしたいとか言いだしたらぶん殴ってやるとこだった。
百目鬼「…今好きな人は、どこが好きなんだ?」
優絆「…僕を…大事にしてくれるとこ?…」
ああそうか…、茉爲宮優絆はこれから清史郎に告白して、それから、マリアの身代わりだと知るのか…。
マリアの代わりでもいいからと清史郎に初めてを捧げて、愛して欲しくて女装して女のふりを続けるのか…
誰かの身代わりなんて間違ってる…
俺は半年間で気が狂った…
なのにマキは、今から家出する間までの三年間近く…、好きな人の身代わりを続け…
好かれたくて、清史郎の好みに合わせてそれになりきったのか…
優絆「…神さん?…どうしてそんな顔するの?」
マキに心から好きだと言われながら、マリアの代わりをさせたのか…
優絆「…神さ…」
マキは、自分の中身を汚いと言った。
綺麗である訳が無いと泣いたことがある。
こんなに綺麗で、人の気持ちも痛みも分かる優しいやつなのに…
マキの気持ちを思うと胸が苦しくて目頭が熱くなる。
堪ら無い気持ちになって
茉爲宮優絆を抱きしめた。
優絆「ッ………」
茉爲宮優絆の体は思ったより小さくて、か細くて折れてしまいそうに儚い…
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