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43〔裏番外〕ゆくえ……
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俯いていたマキは、引っ掻いて握り締めていた腕時計からそっと手を離し、ゆっくりと清史郎を見る。
その瞳はあふれる涙で濡れていて、今まで見たことないほど真っ黒に染まって無機質に前を見ていた。
マキ「私は…」
本音を口にするのか?
それとも、空気を読んだ答えを言うだけなのか…
マキ「私は……………、百目鬼さんに………………面倒を…見て…もらいたいわけじゃない……」
ボロボロ溢れる涙とともに、ゆっくりと紡がれた言葉は、酷く苦しい答えだった。
マキ「清史郎さん……。私は、いい子にするし…、清史郎さんが望むなら側にいてもいい……」
清史郎「優絆…」
清史郎は、喜べないでいた。
側にいてもいいと言いながら、マキはそんな顔をしていない。
後から後から流れる涙を無視するように、大人びた口調で淡々と帰化される答えに、清史郎は顔を歪めていた。
マキ「私は、まだ子供で…、未成年で……。あなたの許可がないと何もできない……」
清史郎「……」
マキ「だけど……私は…」
マキの表情が歪む。
苦しくて苦しくて、それでも言わなきゃいけないと、胸を握り締めて声にする…
マキ「私は…百目鬼さんが好きなんです……」
清史郎「…」
清史郎は、マキの言葉に酷くショックを受けて立ち竦む。彼はきっと知らないんだ。
マキに…、茉爲宮優絆に激しい感情があることを…
マキ「面倒掛けないように努力する。…今直ぐは出来ないけど、料理だって自分で出来るようにする。身の回りのことも自分でする。百目鬼さんには迷惑掛けないし、なんでも自分でやる…いい子にするから…、私の好きな人と、許されるなら…暮らしていたい…。百目鬼さんが私を要らないって言うまでは…一緒にいたい……」
懇願にも似たその訴えは、叶わないこと前提の訴えのように弱々しく、静かに流れ続ける涙に、清史郎は心を痛めたように悲しそうに表情を曇らせる。
マキ「ねぇ…百目鬼さん…、端っこでいいから…僕をあの部屋に置いといて…。いい子にするから、お願い…、お願いします……」
マキは俺を見れないほど震えて俯く。
これがマキの本音だ…
もう少し〝マシ〟なものを期待したが…、やはり、マキはマキだった……
涙を流して懇願するマキを見て、清史郎が打ち拉がれた顔をして俺を見た。
それは、俺にもう十分だと訴え、同時に、話を進めていいとの視線だった。
百目鬼「それが答えなんだな。清史郎さんのところではなく、俺の所に居たいと」
マキ「…ごめんなさい……いい子にする…から…」
震えるマキをどうにかしてやるには、まだやることが残ってる。
百目鬼「なら、約束してほしいことがある」
俺は用意していた書類を取り出した。
百目鬼「次の事を、俺と清史郎さんの前で約束して、ここにサインしてほしい」
マキ「…サイン?…」
突然の展開に驚きを隠せないマキは、俺の提示した書類を見ずに、揺れる瞳で俺を真っ直ぐ見つめた。だが、俺は、構わず書類を読み上げる。
百目鬼「俺から逃げたくなったら、清史郎さんや弁護士、または修二や奏一に相談すると約束しろ。奏一なら、簡単に俺を葬ってくれる」
マキ「なッ!!」
百目鬼「烏磨とは、連絡先を交換したろ?烏磨が嫌なら、清史郎さん側の弁護士でもいい」
マキ「何言ってるのッ!!」
瞳いっぱいに涙を溜めたままマキがその場の空気を裂くように怒鳴った。
予想どうり、マキは怒りに震え、その瞳は悲しみでいっぱい。
マキの怒声に、清史郎が驚いて目を丸める。
恐らく、いい子の茉爲宮優絆は、清史郎の前でら泣く事も、怒って怒鳴る事もしなかったのだろう。
マキ「なんで信じてくれないのッ!!僕は逃げない!壊れない!!それに壊すような事を神さんがする訳ない!!僕は神さんが好きだって言ってるのにッ!!」
百目鬼「なら、サインできるだろ」
マキ「一緒にいたいって、言ってるのに!!、なんで僕が逃げ出すってサインしなきゃなんないんだ!!」
俺は何度も見た。泣いて、喚いて、怒鳴って、マキが感情を露わにするのを…
そしてその原因はいつも俺だ…
清史郎は、俺とマキのやり取りを唖然と眺めた。
清史郎「…」
マキは、涙む目で俺を睨みつけ、今にも弾けてしまいそうなほど震えて怒鳴って叫んだ。
怒りでありながら悲しみのこもった、悲鳴にも似たその声で…
マキ「神さんの馬鹿!!僕は逃げない!!神さんを嫌いになるなんてありえない!!」
百目鬼「なら、サインしろ」
マキ「嫌だ!!僕は別れたくない!!それにサインしたら、それをネタに別れるつもりなんでしょ!!自分は危険人物だからとか!」
百目鬼「…そんなこと言ってない、落ち着け」
マキ「…なんで?なんで神さんはそんな落ち着いてるの?もう決めたから?
一緒に住もうって言ってくれたじゃん…、僕らのルールを作ろうって…、僕が我儘で最近喧嘩するから嫌になっちゃったの?嘘ついたのを怒ってるの?ちゃんと教えてよ!!全部直すから!!」
百目鬼「そんな話はしてない」
マキ「…僕が悪いんじゃなきゃ何?…僕が未成年だから?…それとも清史郎さんに反対されたの?…、誰かに僕と居ちゃダメだったつ言われたの?!弁護士さん??」
百目鬼「マキ…」
マキ「……いい子にするから…」
百目鬼「マキ」
マキ「僕は逃げたりしない、僕は…神さんが好きなんだ。どんな神さんだって、僕は、大好きなのに…」
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