アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
46〔裏番外〕ゆくえ……
-
さっきの泣いた、涙に濡れた味のする唇に触れるだけの優しいキスをして、薄暗い中で、キラキラ星々を反射する驚いてる瞳に向かって、囁いた。
百目鬼「これで、ずっと一緒にいられるな」
マキ「……」
大きく見開かれた瞳は、思考が停止しているのか動かない。
マキがこんな風に驚いて固まるとは思わなかった。オーロラの下でキスしたら、すぐに照れてすごく喜ぶんだろうと思ってたのに…
せっかく俺が覚えていたのに、マキはピンときてないのだろうか?
ん?
もし、マキが忘れてるとかだったら。俺は、めっちゃくちゃ恥ずかしいことしてないか?
百目鬼「オーロラの下でキスしたら、幸せになれるんだろ?」
かっこよくキメたと思ったのに、思い出して貰うために補足するなんてと内心焦ったが。
俺が言った瞬間、暗闇でも分かるほどマキが一瞬で沸騰して恥ずかしがりだした。顔を隠そうと必死だが、もともとここは薄暗くてそう全部は見えないのに。
マキ「ッ…ぁ…え……ふにゃ!………」
面白いほどのパニクりぶりに、ワタワタおろおろ顔を隠そうと後ずさるから、その手を掴んだら、何故か逃げようとする。
マキ「やっ…」
百目鬼「イヤ?逃げないんじゃないのか?」
照れまくって腰の引けてるマキを捕まえて引き寄せて顔を近づけると、真っ赤なマキは顔を隠そうと必死。
マキ「に、逃げてない!!」
完全に逃げ腰なのに、マキは羞恥でパニックらしい。
最近は、泣いてる顔より、照れてる顔の方が興奮してめちゃくちゃにしてやりたくてゾクゾクする。俺の腕の中で、色んな感情を見せるマキは、本当に可愛い。可愛くて可愛くてついつい意地悪したくなる。俺の中の獰猛な猛獣がめちゃくちゃに犯して喰っちまいたいと暴れてる。
今は大事な場面だ。今ここでキレる訳にはいかない。わざわざ薄暗いプラネタリウムの中を選んで話をしてるんだから、耐えろ百目鬼神!!
マキ「ちょっ…待って…ココって、公共の場なんでしょ!僕、めっちゃズボンだし、どこからどう見ても男同士だし、誰かに見られたら…」
力で勝てないからって、急に人目を気にしだしたマキは、なんとか俺を言いくるめて逃げようとしてた。
魔性が今更人の目を気にするとかするなよ!今まで散々恥ずかしいことしてきたろうが!!畜生!クソ可愛くてキレちまいそうだからやめてほしい。
百目鬼「俺は男のお前を口説いてんだよ」
マキ「くど…」
ボンッと曝発して赤面したマキが、手の甲で口元を隠して湯立った。
あーもー!いちいちクソ可愛い反応すんじゃねぇよ!理性がもたねぇ!!
耐えろ百目鬼神!ここに賢史がいたら失敗すんのを悪魔のごとく楽しそうにニヤニヤ待ち構えてやがるに違いない…
百目鬼「貸切だから心配ない。馬鹿が、あんまそそる顔するな、大事なことの前に喰っちまいそうだ」
マキ「へッ!?な、何!神さんが迫ってくるんじゃん!」
百目鬼「近づかなきゃお前の顔が見えない」
マキ「じゃ、じゃあ!明るいとこ行こうよ!」
百目鬼「なんだ、誓いのキスはもういいのか?」
本当は、マキから腕時計が欲しかった。
だが、仕方がない。俺が、ずるい考えでマキの手に戻したからいけない。マキの手から貰うことに意味があるとか思いながら。腕時計が貰えたら、好きだと言おうとしていた。
男らしくないことをした。
失敗したくなかった、拒否られたくなかった。修二のことはもう終わったと言いながら、俺は繰り返しを恐れてた。そんな気持ちを、マキは感じ取って不安になってるのかもしれない。
マキ「い、一回で十分だよ!神さん意地悪な顔してる」
百目鬼「暗くて見えないだろ」
マキ「見えるよ!やぁ…ん…」
マキの柔らかい唇にもう一度誓いを立てる。
繰り返し何度も触れて、はんで、どちらからともなく深々と濃厚な誓いを絡めて刻む。
もう、怖がらない、離さない、抑えない…
涙を浮かべて必死にしがみつくマキは、愛おしく赤らんだ頬でもっととキスを求める。徐々に上がる体温が、お互いにお互いを求めて熱くなってるが、俺は最後の理性を振り絞る。
離れたくないと強請るマキの唇からなんとか離れてマキを強く抱きしめ直して、緊張で少しだけいつもより高くなった声で、マキの耳に囁いた。
百目鬼「マキ、お前の全部が欲しい、お前の全部を受け止められる人間になりたい。俺はお前が好きだ。だから、お前が20歳になったら、茉爲宮優絆を俺にくれ」
マキ「…ぇ…」
百目鬼「過去も未来、マキであるお前も茉爲宮優絆だった消したい過去も、全部俺のものにしたい、お前が生まれてきたのは、俺と出会うためだったと思えるくらいにするから」
こんな臭い言葉、俺の柄じゃないが、マキは、自分の生まれた意味を探してる。
誰にも望まれなかったんだという思いが、過去を拒絶するんじゃないかと思う。
だけど、よくない経験も、思い出したくない過去も、それがあって今がある。
俺がもし、暴走壁の持ち主じゃなかったら、マキと出会えていたのか?そんな風に思う瞬間があるように。
今のマキは、その道筋を歩いたから出来上がったし、俺と出会えたと思う。
悔やんでも過去は変えられない、今の自分の見つめ方をマキが教えてくれた。
だから、今度は俺が教えてやる。
お前は小憎たらしいところもあるが、愛しい存在だ。愛されるべき存在だと…
百目鬼「清史郎に挨拶は済ませた、お前が20歳になっても俺を好きだったら、攫ってもいいと〝約束〟をさっき取り付けた。マキであるお前も、茉爲宮優絆としてのお前も俺が甘やかし倒してやるから。20歳になったらお前を奪いに行く。未来への誓いを、ここで立てる」
マキ「……じ…ん…さん…」
見えない物を信じるのが怖い俺たちにはコレが必要だと思う。
俺はマキを抱きしめたまま、背広の外ポケットから封筒を取り出してマキに握らせた。
封筒の中身は、養子縁組の書類が入ってる。
百目鬼「夢でも幻でもない。全部、烏磨立会いで書類にしてあるし、後日清史郎の同意書ができる。
マキ…もう、逃げられないからな、俺と一緒に生きてもらう」
マキ「……」
20歳になって自分で物事を決められるようになったら。その時マキが望むなら、マキを俺の籍に入れてもいいと清史郎は約束した。
俺はこれから、マキの過去をどんどん聞いていくつもりだ。マキが抱えてる闇ごと全部俺のものにする。俺はきっと、マキを闇から救い出すほどの力は持ってないが、寄り添うことはできる。夢に見た幼い茉爲宮優絆にまた会ったら言ってやりたい。
俺が、将来迎えに行くから…
お前と出会うのを俺は待ってるから…
お前のことが誰より好きだから…
一度夢で会った時、言ってやれなかった気の利かない俺は、もう辞める。今度こそお前の喜ぶ言葉を伝えるから……
百目鬼「マキ、茉爲宮優絆ごと俺のものにするからな」
今日のマキは、一体どのくらい泣いてるんだろう。
俺の腕の中で封筒を握りしめ、顔をくしゃくしゃにして泣いている。
ああ、ここが暗くてよかった。
マキのこんな顔をまともに見てたら、全部言い切る前にこの場で押し倒していたに違いない。
マキ「………うん…………うん…」
百目鬼「俺に好きだと言われたら、この腕に閉じ込められちまうだぞ」
マキ「うん………神さん…大好き…もっと閉じ込めて」
ギュッと抱きつかれて理性が揺らぐ。
ロマンチックな雰囲気をまだ保っていたい。
この可愛らしいマキを、まだ見ていたい。
百目鬼「…それから、前からずっと言ってやりたかったんだが」
マキ「何?」
百目鬼「俺の方がお前を好きなんだぞ」
マキ「…………………」
ポカンとしたマキが、瞳をパチクリ瞬いた。
この後に及んで信じられないとでも言いたいのか、どんだけ俺を疑うんだ。
イラっとしていたら、マキが笑い出す。
マキ「フッ…フフ…、何それ…子供みたい…」
百目鬼「あ¨?なぜ笑う」
マキ「ふふふ、だって。絶対僕の方が神さんのこと好きだもん。神さんいないと生きてけないくらい神さんのこと好きだもん」
ああ…
せっかく暗いプラネタリウムをワザワザ選んだのに…
俺の腕の中で、涙を溜めたキラキラした瞳で、可愛らしく微笑むマキは…
暗闇でも色鮮やかに俺の脳裏を支配して
理性のキレる音を響かせる。
この幸せそうなマキにもう一度だけ言いたかったのに。
これからは何度でも言う
お前のことが、狂いそうな程愛おしくて、少しだけ怖くて…、壊れないように大事に大事にしたくて、喰っちまいたいほど好きだと……
.
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
879 / 1004