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キングの冒険1
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俺、キング!!
生後半年のトイプードルの男の子だぜ!
体長は20センチ、体重1.6キログラム。
僕の頭の上にはライオンのタテガミみたいにピンと跳ねた毛があって、マキがかっこいいって褒めてくれて、眉のあたりに色の濃い毛があるから、キリッと眉毛のようで凛々しいと喜んでくれてる。
マキっていうのは、俺の飼い主。
美人で可愛くて、いつも笑ってる優しい人。
俺はマキが大好きだ、マキも俺が大好きだ、俺たちは相思相愛。
マキ「キングー♪ただいまぁ♪」
この天使みたいな美人が俺の飼い主、マキ。
マキは、綺麗なジュピター色の瞳をしていて、凄く色っぽいのに、子供みたいにはしゃぐ可愛い奴だ。
マキ「お散歩いこうねぇー♪、今日はね、面白い話があるんだよぉ♪あのね…」
マキは、なんでも俺に話してくれる。嬉しいこと楽しいこと、イラッとしたこと、悲しいこと…。
マキは…俺と出会った頃、毎日無理に笑って死にそうな顔をしていた。マキは失恋したらしくて、毎日毎日心の中で泣いていた。俺は犬だけど、人間の心の揺れが分かる。臭うんだ。犬が苦手な人間とか、犬が嫌いな人間とか、危険な人間の臭いが分かるんだ。マキは、友達に支えられてなんとか笑ってたが、誰もいなくなって俺と2人きりの時間になると、ずっと言ってた、「会いたい…会えない…消えちゃいたい…」って。俺は犬だから何もできなくて、俺がマキの番(ツガイ)になってやるから元気出せって何度も吠えたけど、マキは、まるで俺の言ってることが聞こえるように俺の頭を撫でて言うんだ。「ありがとうキング、でも、あの人じゃなきゃ…ダメ…なんだ…」って、なんでもない風に笑って、心で号泣してた。
そんなマキが、泣かなくなった。
本当の笑顔が増えて、いつも笑ってるようになった。
マキの番が帰って来たんだ。
俺は納得できなくて、何度も吠えて噛み付いてやったけど、そいつはビクともしなくて、俺がマキに怒られる。
マキ『〝めッ〟キング〝めッ〟だよ、この人は、僕の大事な人だから、キングも仲良くしてね。僕はキングが大好きだから、キングにも、僕が好きな人たちを好きになってもらいたいんだ』
マキはそう言うけど、そいつ、マキが俺を見てる間、すげー形相で俺を威嚇してくるんだけど…。
それが、今となっては俺のもう1人のご主人…百目鬼神だ。
百目鬼は、独占欲の塊だ。
マキが百目鬼と一緒に住み始めたら、俺はマキと一緒に寝られなくなったし、餌やりや俺の身の回りの世話で触れ合ってた時間も全部百目鬼がマキから取り上げた。おかげで俺は、百目鬼に服従しないと餌と水を貰えない。
百目鬼『ほらキング、飯の時間だ。マキじゃないなら食べないって言うならそれでも俺は構わないが、マキが大学行ってる間は、俺しかいないからな、マキに悲しい顔させたくなかったら、お利口にしてろ』
くぅぅ!こうつ何様だ!!
マキは、百目鬼と一緒に寝るとよく眠れるらしく、お寝坊になる。
それに、百目鬼がマキを起こさないで部屋に隠しちまう。百目鬼は、すぐにマキを俺から隠す。
俺がどんなにその部屋に入りたいと吠えても入れてくれない。この家に来たばかりの最初の頃、俺は声が枯れるまで吠えた。
キング『ワン!ワン!』
ミケ『ニャー』
そうすると、しばらくして猫のミケが現れる。
猫のミケは、この家の先輩で、すでに子供もいっぱいいる母猫。子供達はみんな里子に出されて今は1匹きりで、百目鬼と一緒に暮らしていたらしい。
ミケ(無駄吠えはよしなさいよ。喉が渇くだけよ)
すました顔で、上から物を言うのが気に食わなくて、俺はこいつと仲が悪い。それに、こいつは、マキを隠す部屋に出入りできる。
キング(うるさい!あんたはあの部屋に自由に入れるからいいだろうが、俺はこんなゲージの中で、マキが心配なんだ!)
ミケ(フフッ、ナイト気取り?確かに私はあの部屋に入れるけど、夜中に入り込むなんて無粋な真似しないわ。あの部屋で2人が何してるか知らないんでしょ、ボクチャン)
キング(なっ!ボクチャンじゃない!僕にはキングって立派な名前があるんだ!マキが付けてくれたんだ!)
ミケ(…そう、マキが付けたの…。それは羨ましいわ。じゃあ、キング。大好きなマキに嫌われないように教えてあげる。あの2人があの部屋で何してるか)
キング(…。ゴクン…)
ミケ(交尾よ)
キング(こ、こ、こここ、交尾ッ!?)
ミケ(二人は愛し合ってるの、番なのよ)
キング(ガーン!!)
最初の頃、ミケは凄く鼻持ちならない猫だった。上から目線で喋るし、文字通り高いところから俺を見下ろして話しかけてくる。
だけど、それは全部恐怖と嫉妬だった。後から来た俺に、居場所を奪われないか、大好きなマキが、俺を可愛がってるのが嫌だった。そして、ミケは、昔、犬に噛まれたことがあるらしい。人間に捨てられて路頭に迷って、犬に吠えられ噛まれ、死にそうなところを、矢田に拾われて、百目鬼が看病してくれて、治っても貰い手の無かったのを百目鬼が飼ってくれたらしい。ミケは百目鬼が大好きで、マキも大好きで、だから、百目鬼を悪く言って吠える俺が気に入らないし、百目鬼やマキが俺に構うと不安でいっぱいだったらしい。
今は、ミケとは仲良しだ。
俺が百目鬼に吠えなくなった。
だって、マキは百目鬼が大好きで、毎日毎日百目鬼の話をするんだ、あの泣きそうだった日々が嘘みたいに嬉しそうに幸せそうに、毎日毎日百目鬼の話をする。
マキ「昨日ねー、神さんと写真撮ったんだぁー、ツーショットだよ、クフフ♪修二達に自慢したいけど神さんがダメだって言うんだ、だから、キングには特別に見せてあげるね。ほらほら、神さん耳赤いでしょ可愛いでしょ♪、あー、待ち受けにしたいけど怒られちゃうからなぁ♪怒るといえば、神さんが僕の隠し撮り写真持ってるんだって、どんな写真かぜーんぜん教えてくれないんだよ、ヨダレ垂らした寝顔写真だったらどうしよう、もっと可愛い顔の写真もってて欲しいな…」
…。
俺は知ってる。
それがどんな写真か…。
百目鬼が時々眺めてる。真っ白な服を身に纏ってる女神様みたいなマキの写真だ。真っ白な服にレースの被り物をして、凄く綺麗な写真だった。あれはなんの写真なのかな?真っ白のあんな服俺は見たことない。
それと、ヨダレは垂れてないが、寝顔も持ってた。
っていうか、マキは知らないけど、俺がこの家に引っ越してから、百目鬼はマキがソファーで寝ている写真を時々撮ってる。
写真を撮った後、ビックリするぐらい優しく笑うんだ。もう、ほんとうに気持ち悪いくらい優しくて幸せそうで。
そして、いつもボソッと言うんだ。
『徐々にな…』
あれは、なんのことだろう?
だけど、百目鬼はマキの頭を優しく撫でて、マキを抱っこして隠し部屋につれっちまう。
まぁ、マキの寝顔が幸せそうだからいいんだけど。
俺は、笑顔のマキが好きだ。
だから、マキを笑顔にするって言うなら、百目鬼のことも嫌いじゃない。
まぁ、百目鬼が俺を嫌いじゃないかは置いといて。
ミケに言われたんだ。百目鬼は俺に嫉妬してる。つまり、ライバルだと思ってるんだって、俺はマキにとって大切で、マキに特別扱いされてるから百目鬼が嫉妬するんだって、つまり、俺は百目鬼よりちょっと優位なんだ!エッヘン!
ミケ(この子チョロい…)
キング(え?何か言った?)
ミケ(なーんにも♪あなたが百目鬼さんの良さをわかってくれて良かったわ)
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