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ー芽生えー16
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僕は、夢でも見てるんだろうか?
今、信じられない光景を目の前に頬をつねってみたけれど、普通に痛い。
神さんとユリちゃんを追いかけて辿り着いたのは、全国チェーン展開している有名なファミレス。
神さんとファミレス。なかなか相反するチョイスだ。
ほらほら、神さんの座ったテーブルにオーダーを取りに行った女の子の定員さんが真っ青で震えてるよ。
僕が驚いたのは、神さんとファミレスだけじゃない、神さんが座った席には、神さんとユリちゃんが向かい合って座ってて、更に、神さんの隣には見覚えのある黒髪の少年が座ってた。
マキ「あっ、あの子…」
少年は俯いていたけど、その黒髪の横顔に見覚えがあった。
神さんは、その少年に優しい笑顔で話しかけて頭を撫でる。ユリちゃんも、俯く少年に向かいの席からニコニコ笑いかけてる。
身振り手振りから想像するに、どうやら神さんがユリちゃんを紹介しているように見えた。
マキ「なんで…、あの子が?…あの子、確か、みみちゃんの弟君だよね?…弟の…翼君」
これはアレか?
昼ドラで言う、不倫が本気になって子供を取り込んで離婚を企ててる的な光景!?
…なんちゃって♪
僕は、暫く3人を外から眺めていた。
店内に入って話を聞こうか迷ったけど、恐らく神さんに勘付かれる。
神さんは、プロの探偵の尾行に気がつく人だ。
遠くから眺めてるならまだしも、会話が聞こえるほど接近したら絶対バレる。
…デートじゃ…なかったんだ…。
俯く弟君は、ユリちゃんに優しく微笑まれて、徐々に顔を上げてユリちゃんと目を合わせて話すようになってた。その横顔は神妙で、何か深刻な話をしていると分かる。
向かいの席のユリちゃんは終始優しく微笑んで、隣の席の神さんは常に優しい顔して何度かみみちゃんの弟の翼君の頭をそっとポンポンとしてた。
そういえば、神さんは、人間関係は不器用で下手くそだけど、義理の兄弟がいっぱいいて、甥っ子姪っ子もいっぱいいる、子供の扱いには慣れてるんだった。
あんなに不器用で言葉下手なのに、子供の扱いは慣れてるって不思議な光景だ。
…、もしかして、なにか相談されたのかな?
それで相談に乗ってあげたかったけど、自分じゃ上手く言葉にしてあげられないからユリちゃんを呼んだ?
…っていう筋書きはどうだろうか?
…でも、神さんとユリちゃんは直接の知り合いじゃない…。
…………………あっ、賢史さん?
賢史さんならユリちゃんと顔見知りだけど…。
そう思って脳裏をよぎるのは、ユリちゃんが「つよしに近づくな!」って賢史さんに吠えて飛び蹴りする姿。
あぁ…ッ…。
賢史さんにユリちゃんに神さん…。
どれも線が薄くて何が起こってるのか想像しづらい。
ってか、仮に相談事があったとして、どうしてユリちゃんと引き合わせたのかな?
ユリちゃんもスカートじゃなくてズボンなのはなんでだろう?
単に今日はズボンだっただけ?
みみちゃんの曽祖父の話と関係あるのかな?
それとも…
…もしかして、ユリちゃんにだけ聞きたい話?
もしかして…、ニュ…。
あー…、だとしたら、みみちゃんは知ってるのかな?
うぅ…。
なんか僕のいないところで周りが複雑になってる。
神さんとユリちゃんと翼君。
ユリちゃんと賢史さん。
賢史さんとつよしといじめ問題。
プラスむつが関わって嵐の予感だし♪。
元気のない華南。…いや、元気(性欲)はあるか♪
いったいどこから手をつけたらいいのやら…。
もう、みんな、手がかかるんだから♪
そうして観察すること2時間。
話が終わったのか、神さんとユリちゃんと翼君はファミレスから出てきた。翼君は、ユリちゃんと神さんに深々頭を下げると、駐輪所に置いてあった彼の自転車に跨って帰って行った。
翼君が帰っていくのを見送った神さんは、ユリちゃんに向かって頭を下げた。ユリちゃんは照れたように笑って、いいのいいのと神さんのに顔を上げるように言ってるみたい。
これで終わりかと思ったけど、2人は暫く立ち話をして、神さんはだんだん表情が和らいでいく。ユリちゃんはそんな神さんを嬉しそうに見ながら笑ってて、そのうちユリちゃんがからかうみたいに神さんの背中を叩くと、神さんはむくれて顔を赤くした。
……。
……。
いったいなんの話をしているのか分からないけど。
神さんのあんな顔…
前は、僕だけのものだったのに…
……。
僕だけが知ってる。
神さんの可愛い顔だったのになぁ……
神さんは、暗闇から抜け出した。
今は新たな自分と向かい合って、一歩一歩前進してる。
神さんは変われたんだ。
カッコいい神さんになれたんだ…
ふふ…
変われてる、変われてよかったって思ってる。
…のに…
どうしてだろう?
苦い気持ちが広がる。
神さんが、ユリちゃんの前で照れたように眉間にシワを作って可愛い顔してる。
それがとてつもなく嫌だ。
…。
あぁ、…これが嫉妬ってやつか…
広がる泥水のような気持ちをグッとこらえて、大人な2人を見つめる。
子供である自分が嫌で嫌でたまらない。
子供みたいな我儘が、口から溢れそうで奥歯に力を込めた。
僕の気持ちをよそに、神さんとユリちゃんは仲よさげに話をしながら、ユリちゃんが神さんの腕に絡みついたのが見えて胸の中がチリッと焦げ付く。
ユリちゃんはケラケラ笑って神さんをからかってて、神さんは怒ってるみたいだったけど、ユリちゃんは構わず掴んだ腕を引いてどこかに向かって歩き出す。
……。
神さんは顰めっ面で文句を言ってるようだったけど、ユリちゃんに手を引かれる形でそのまま街中に歩いて行った。
え…?
どこ行くの?
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