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ー芽生え歌うー11
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雪哉さんの居るケーキ屋さんに行くと、入り口に着いた時点で雪哉さんが中から飛び出してきた。
雪哉「マキ様ぁあーー♪♪♪♪(ハート)
お待ちしてましたぁあー♪♪♪♪(大量のハート)」
久しぶりに見た雪哉さんは、ご主人様を待ち望んでた忠犬のように、目の中にハートをいっぱい飛ばして尻尾をブンブン振りながら、僕に抱きついてきた。
マキ「ふふっ♪こんにちは雪哉さん♪」
雪哉「ああッ、お肌ツヤツヤ!」
雪哉さん、黙ってれば素敵で優しそうなイケメンお兄さんなのに、変態が前面に出ちゃって、周りから注目の的。
マキ「雪哉さん、落ち着いて、仕事中でしょう 」
雪哉「うぅ…、俺の体面を気にして下さるなんてさすがマキ様」
瞳をウルウルさせながら、周のお客様からの視線にむしろ喜びを感じちゃって興奮気味の雪哉さん。雪哉さんが変態ドMだって忘れてた。
その時、お店のケーキのショーケースの後ろから、女性店員さんが慌てて飛んできた。
ユメ「すいませんお客様!雪哉さん、顔が崩れまくってますよ」
雪哉「ハッ!、ユメちゃんごめん」
ユメちゃんと呼ばれた女性店員さんに叱られて、イケメンパティシエの顔に戻った雪哉さんは、僕が知り合いだということを女性店員のユメちゃんに説明して、パティシエの顔に戻り、僕にニコッと笑いなかけながら改めて店の中に案内した。
お店の中は小さなお城のように可愛らしく、持ち帰り用のショーケースの前にお客さんが何人かいて女性ばかり、お店の横には食べるところもあって、アンティーク調の家具が4席分、そこもお客さんで賑わってた。
忙しい時間だったのかなってお店を見回して申し訳ない気持ちになっていたら、テーブル席に1人だけ浮いた存在がいる事に気がついた。
お店は可愛らしい作りでお客は女性ばかり、その中に1人だけ、高級スーツを着た眼鏡の男性がケーキと紅茶を優雅に堪能していた。
マキ「あっ、烏磨さん」
向こうも僕に気がついて、相変わらず含みのありそうなスマイルでニッコリ笑って手を振ってきた。
神さんは、僕と烏磨さんを会わすためにお使いを頼んだのかな?
そう思って、僕の横にいる雪哉さんをチラッと見たら、雪哉さんは僕と目が合って顔を真っ赤にした。
雪哉「ち、ちちち違うんです!烏磨さんは常連様で!ケーキのファンで!ケーキを食べられに来たんです!」
慌てて弁解した雪哉さんをみたら、神さんが雪哉さんに協力させて烏磨さんと僕を引き合わせたんじゃなさそうな気がする。
偶然?
そう思っていたら、烏磨さんが食べるのを中断して席を立ち、僕の方へ歩いてきた。
烏磨「ご無沙汰してます茉爲宮さん」
マキ「こんにちは、烏磨さん」
烏磨「その後、困ったことは起こっていませんか?」
マキ「ええ、おかげさまで無事解決しました」
烏磨「宜しければ、お話ししませんか?せっかくお会いできましたので、近状も聞きたいし、ご馳走しますよ」
ニコッと爽やかに笑うその笑顔に、何か裏がないか気になったけど、僕は直ぐに返事を返す。
マキ「いえ、今はお使い中なので…」
烏磨「おや、百目鬼にこき使われてるんですか?」
真顔でそう聞かれた。悪気がないとは顔見れば分かったけど、僕は神さんにして貰ってばかりで何も返せてないと気にしていたから、ついカチンときてしまって、考えるより先に口が動く
マキ「百目鬼さんは優しい人です!」
いつもだったらヘラヘラ返してたはずの簡単なことが、いつもは何も動かなかった感情が、一瞬にしてメラッと燃え上がって口をついた。
雪哉「か、烏磨さん!マキちゃんをからかうのはやめて下さい」
雪哉さんが間に入ってくれた。
烏磨さんが本気でそう言ったんじゃないって分かってたのに、苛立ちが勝ってしまった。…こんなこと今までなかったのに。
神さんはあんなに優しいのに勘違いされてるとか、僕はして貰ってばかりで、与えられてばかりだという気持ちが反応してしまった。
烏磨「フフッ、からかったんではなかったんですが。まぁ、茉爲宮君が元気ならそれでいいです。百目鬼が茉爲宮君を壊しやしないかと気がかりだったもので」
マキ「百目鬼さんは、優しいしとても大切にしてくれます。壊すだなんて、そんな心配微塵もいりません♪」
ニコッと笑って答えると、烏磨さんも笑ってたけど、僕の言葉に裏がないか探るような鋭い目をしてた。
雪哉「そうですよ、神はマキ様大切にしてますよ、大切にしてなかったらもう説教ですよ!天罰食らわせますよ!」
鼻息荒くして両手の拳を握り締め、怖い顔した雪哉さんは、その拳で想像の百目鬼さんにパンチを繰り出す。喧嘩とは無縁そうな、お菓子の甘い匂いのする優しいお兄さん顔の雪哉さん、繊細な美味しいお菓子を作り出す綺麗で細い指に腕は、神さんにパンチなんかしたら折れちゃいそうだ。
雪哉「烏磨さん、マキ様にちょっかいかけないで下さいよ」
烏磨「おや、雪哉さん嫉妬ですか?」
雪哉「ちちちちち違います!!神が嫉妬するからですよ!」
烏磨「フッ、冗談ですよ」
雪哉「ッッッ!!!!」
あらら?なんだかいい雰囲気?
というか、烏磨さんは悪戯してる感がするけど、雪哉さんは身悶えするほど喜んじゃってるし、まぁ、経過としては仲良しさん♪?
雪哉「も、もぉ!烏磨さんは座ってて下さい!マキ様、商品はレジでお渡ししますから!」
雪哉さんは耳を赤くしながら烏磨さんを追い払い、烏磨さんは喉で笑いながら席に戻っていった。
雪哉さんはプリプリしながら、僕を引っ張ってレジに連れてきたけど、雪哉さん可愛いなぁ。
雪哉「ユメちゃん、予約の品をお願いします」
先ほどの店員さんに声を掛け、〝予約の品〟を出してもらう。
一体何が出てくるかと思ったら、出てきたのは小さな紅茶の缶と、手の平サイズのクッキーの入った箱。
あっ、これ、百目鬼事務所でお客さんに出してる紅茶の缶とお菓子だ。紅茶は10個入りだけど、クッキーは僕が食べたら1日で無くなりそうな量。
事務所に使うためのお使い?でも、なんか少なくない?
ユメ「こちらと、お客さまの選ぶケーキを六つと承ってます」
マキ「えっ、選んだケーキ?」
ユメ「はい、お好きなのを選んで下さい」
店員のユメちゃんは可愛らしい笑顔で僕を見つめ、なんだかちょっとワクワクしてるみたい。
もしかして、礼ちゃんとみみちゃんと同じ人種なのかな?雪哉さんとも仲よさそうだし。
雪哉「マキちゃん、お金はもう貰ってるから、1番高いの六つでもいいんだよ」
と、雪哉さんが指差したのは、季節のフルーツケーキと書かれた、溢れるほどのフルーツが載せられた一カット1500円越えのケーキ。
マキ「ええっ!高っ!」
超おいしそうだけど、一切れ1500円越えって!他のケーキ2個買えちゃうよ!
雪哉「神の奢りなんだから、マキ様は贅沢しちゃっていいんだよ。ブッキーな神なりに頭捻った答えだから」
頭捻った答え?
…酔って僕が余計なこと言ったから、神さんお詫びのつもりなのかな?
…だったら、悪いことしたなぁ…。
雪哉「…マキ様?」
マキ「雪哉さん、僕、月替わりのオススメケーキにする♪」
僕が指差したのは、その時期のオススメフルーツを使った月替わりケーキ。お値段も優しいしおいしそうだし。
雪哉さん「え、マキ様、遠慮しなくていいんだよ、本当に好きなの選んでもらうように言われてるし、神の奢りだから」
雪哉さんを困らせちゃったみたい…
マキ「僕、雪哉さんのところのケーキ大好きだから、オススメが1番おいしそうだしアレがいいなぁ♪」
おねだりポーズで可愛らしい顔して見つめたら、雪哉さんが顔を真っ赤になった。
雪哉「ンハァーマジ天使!!はい!畏まりました!只今お包みします!」
雪哉さんが風のように素早くショーケースの後ろに向かってケーキを詰める様を、僕はニコニコ見つめていた。
おかしな話だ。
お代は貰ってる。というなら、神さんは1度この店に来てるはずだ。なら、お使いは僕じゃなくてもいいはず。
僕にケーキを選んで買わせるお詫び…なのかな…
神さんは…
何も悪くないのになぁ…
はぁー、こんな風に神さんに気を使わすなんて
もう2度と酔っ払いたくない…
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