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ー芽生え歌うーその後3
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もう少し話を聞きたいのに、翼君はパニック状態。
とりあえず落ち着かせようと、立ち話もなんなんで近くの喫茶店に入った。
僕のおごりで紅茶とケーキのセットを2つ頼み。
運ばれてきた自分の分の温かい紅茶に、砂糖を3本、ミルクをたっぷり。その間もパニック中の翼君は、シャキンと背筋をまっすぐ、両手で両膝を握り締め、僕をジッと凝視中。
今日の翼君は、私服でちょっと大人っぽくしてて、でもあどけなさの残る可愛い高校三年生♪。色んなことに興味心身だよねぇ♪
みみちゃんと似てて、顔は端正で目元とかキリッとしてるけど、仕草がみみちゃんと違って慌ただしくて可愛い♪こんなにパニックっちゃって…
…、でも、どうなんだろう。最初は男に興味があるのかなって思ったんだけど、さっきの慌て方からするとそういうのと違うのかなぁ?って気もするし。
本人が言うとうり、ボーイズラブに興味があるだけなのかな?。だとしたらなんでユリちゃんが出てきたんだろう?
マキ「ふふふ♪、そんな見つめないでよ♪、照れちゃう♪、僕のおごりだから、食べて食べて♪」
ニコニコ笑いかけても、ずっと不思議なものを見るように興味津々に僕を見つめる。
翼「……ありがとうございます…」
僕をジッと見つめたまま、紅茶を口に運ぶ翼君。
マキ「ふふ♪、まだ信じられないの?僕が男って」
翼「い、いえ、男の人だっていうのは、分かったんですが…その……」
マキ「ふふふ♪、男に押し倒されてそうって思った?ウフフ♪」
翼「ッ!?」
顔を真っ赤にして俯向く翼君は、声にならないような声で、「すいません」って口が動く。
翼「ッ…ッ…、姉貴に…言わないで…」
マキ「言わないよ♪」
翼「ホント…すいません…」
マキ「本当に言わないから、そんな怯えないでよ♪」
可哀想なくらい縮こまって、恐怖と羞恥でぐちゃぐちゃな感じ、可愛いなぁ♪
マキ「じゃ、僕も秘密を教えるからおあいこってことにしよう♪」
翼「秘密?…あなたも本読んでる…とか?」
マキ「僕は読まないな、見たことはあるけど」
僕が腐男子じゃないと知って、益々落ち込む翼君。
その素直な反応が可愛くて、僕はテーブルに両手で頬杖ついて翼君に近づき、ニッコリ満面の笑みで囁いた。
マキ「僕、本物の方が好きだから♪♪」
翼「……………?……本物?」
マキ「僕、男の人が好きな人なの♪」
翼「ッ!!?!」
予想どうりオーバーなほどのリアクションで絶句した翼君は、驚いた後、だんだん顔を赤らめ急にキョロキョロして周りを気にしたかと思ったら、俯いてその場で固まって沸騰しちゃった。
アハ♪僕のエッチな姿でも想像したのかな♪?
マキ「だからね、もし、翼君がそういうことで悩んでるなら話を聞いてあげられるよ?」
翼「えっ!?…ぁ…」
カアァっと、顔を真っ赤にして、初々しい翼君は、イタズラしちゃいたいくらい可愛くて素直。
昔の僕だったら、ちょっと触ったりして興味があるか試してあげたりしたけど、今そんなことしたら、ライオンちゃんに怒られちゃうもんね♪
翼「ッ…、ント…違うんです。本当に俺、本読んでるだけで、男にどうこう思ったりした訳じゃなくて…、その…数日前までは、そうかなって…、思ったこともあったけど…、百目鬼さんが…、色々教えてくれて。…本当に百目鬼さんから何も聞いてないんですか?」
マキ「本当に何も聞いてないよ。良かったら、その話し聞いてもいい?」
翼「…」
翼君は少し迷って、小さく頷いて、話してくれた。
お姉ちゃんのみみちゃんと仲良しで、良く漫画の貸し借りをしてて少女漫画を読んだりしてたそうだ。ある日借りた漫画を返しにみみちゃんの部屋に入ったら、BL雑誌を見つけて、最初は驚いて気持ち悪いと思ったけど、興味本位で読んじゃったらハマっちゃったそうだ。みみちゃんに言えず、こっそり雑誌を盗み見て、そのうち自分でコミックを買うまでになっちゃったそう。そして、ある日の学校で友達がホモの話を笑って話してて、ついウッカリ〝BL本も結構面白い〟って言ったら友達にドン引きされてキモがられたそうで、その時「お前ホモなんだろう」って言われて気まずくなって、悩んでたそうだ。
そんな時、曾祖父様の話が持ち上がり、姉のみみちゃんが百目鬼さんに依頼しに来たんだそうだ。
翼「俺、曾祖父ちゃん好きだ。優しいし、物知りだし、会うたび小遣いくれたりして、でも俺、1番好きなのは、曾祖父ちゃんと曾祖母ちゃんがいつも仲良しで、お互いに愛し合ってるのが羨ましくて、あんな夫婦になりたいって憧れてて、なのに…、曾祖母ちゃん死んでずっとたっても、曾祖父ちゃんは曾祖母ちゃんが好きなんだと思ってたのに…、昔の恋人の行方が知りたいって聞いてショックで…、曾祖母ちゃんのこと好きじゃなかったんじゃないかって、芝居だったのかって…、も、もしかして……、ッ…」
マキ「翼君やみみちゃんのことも好きじゃないんじゃないかって思っちゃったの?」
翼「ッ!……ッ」
翼君は、涙をいっぱい溜めて頷いた。
不安だったんだ。曾祖父ちゃんが大好きだから、不安だったんだ。大好きな憧れの夫婦が、幻の芝居だったのかと不安だったんだ。自分の信じていたものが崩れ去る。自分を否定されたような気がして、高校生の翼君にとってはそれはとても大きな恐怖。
…翼君と立場は違うけど、僕もその恐怖は分かる。
信じていた世界が突然崩れて、偽物だらけだと知った時、自分は誰からも愛されてなくて、必要ない人間じゃないかと思ってしまう。
翼「俺…、信じられなくて、信じたくなくて、…曾祖父ちゃんが、曾祖母ちゃんのこと好きじゃなかったなんて、…確かに2人は、お見合い結婚だったけど…、曾祖父ちゃんは曾祖母ちゃんをとても大事にしてて、出かける時いつも車で送ってあげてて、曾祖母ちゃん具合悪くなった時、ずっと病院に付き添ってて、曾祖母ちゃん曾祖父ちゃんいるからいつもニコニコしてて、すっげー愛し合ってるって思ってたのに…」
昔の好きな人。
心の中の大切な人。
それは時間が経てば経つほど、綺麗で美しいものになる。
百目鬼さんの心の中に、修二や奏一さんへの想いがあるように。
きっと、翼君の曾祖父様も、大切な想いがあったんだろう。
神さんが、みみちゃんの相談に僕を関わらせなかったのは、やっぱりこういう事だったんだ…。
マキ「…ねぇ、翼君。翼君が見てきたものが嘘だって事はないと思うよ」
翼「…それは…」
マキ「それに、曾祖父様は、翼君やみみちゃんを大好きだと思うな」
翼「なんで…」
マキ「翼君やみみちゃんが、曾祖父様のこと大好きだから。翼君やみみちゃんが優しい人なのは、曾祖父様が優しい人で、翼君やみみちゃんにとても優しくてとても大切に接してきたからだと思うんだ」
翼「…」
マキ「僕は曾祖父様にお会いした事はないけど、みみちゃんが言ってたよ、今も毎日、曾祖母様の仏壇に手を合わせて、毎日の出来事を報告したりしてるって。その中に、〝今日は翼君とみみちゃんが会いに来てくれました〟とか、翼君は受験で大変だから、〝どうか応援してやってくれ〟とか、寝たきりになった今も、毎日そこにいるかのように曾祖母様に手を合わせお話ししてるって…」
翼「…うん。聞いた」
マキ「曾祖父様は曾祖母様のこと今も変わらず愛してるよ」
翼「…うん、姉貴にも言われた…。俺もそうだと思う。……」
そうだと思う。と言った翼君の表情は、まだ不安の色が残っていた。
翼「……探偵事務所って…こんなに親身になってくれるもんなの?」
マキ「ふふ♪僕はみみちゃんの友達だから♪」
翼「…百目鬼さん…、俺に会いに来てくれたんだ、この話をするために」
マキ「えっ…」
百目鬼さんが…、翼君に会いに?
ユリちゃんと会った時とは別の日の話?
翼「その時、俺が同級生に本の事でからかわれてるの見て、話を聞いてくれて。曾祖父さんのことや、その…、BLに興味がある話とか、すげー親身になってくれて」
マキ「百目鬼さんは、困ってる人をほっとけない人だから」
翼「依頼のことで曾祖父ちゃんから話を聞いたらしくて、全部説明してくれて…。曾祖父ちゃんが愛してるのは曾祖母ちゃんだけだって、戦争で何もかも失って、でも、曾祖母ちゃんと出会って、戦争で失ったもの以上の色んなものが手に入って、今では子供や孫に囲まれて幸せで、だから、あの時行方のわからなくなてった恋人が、幸せでいてくれたらと思ったんだって。曾祖母ちゃんとお見合いして好きになって、昔の恋人は死んだと思って過ごしてたけど、もしかしたら、自分の事を探して不幸になってたりしないかと、それが心残りだって…。戦争を経験して大切な人達を失った曾祖父ちゃんの気持ち、考えてあげられないかって言われた」
…神さん…
マキ「百目鬼さんに話を聞いて、納得した?」
翼「…うん、大体は…、後は、大人の話すぎて分からない…かな?、好きな人が行方不明とかなった事ないし、心から愛する人ができた事もないし」
マキ「そのうち分かるよ」
翼「…あなた〝も〟いるの?」
マキ「いるよ。心から好きな人、愛する人が」
翼君の曾祖父様みたいに深い愛情で…
おじいちゃんになっても、僕は神さんが好きだ。
きっと神さん以上に好きな人なんか出来ない。
僕は…
どんな神さんも好きだから。
神さんの大切にするモノも恐れるもモノも全部。
僕が愛して包み込んで守るんだ。
翼「……綺麗…」
マキ「え?」
翼「あっ、ごめんなさい。その人の事本当に好きなんだなって。すごく綺麗な顔してたから…」
マキ「ふふ♪ありがとう♪」
翼「もしかして…、ど………」
マキ「ん?」
翼「……すいません、なんでもないです」
翼君は何かいいかけて、辞めてしまった。
それから、相変わらず緊張気味の翼君からどうしてユリちゃんと会ったのかを聞き出す事が出来た。
真相を知った僕は、吹き出しそうになったけど、翼君は真剣に話してくれてたからなんとか堪えた。
神さんは優しいし面倒見もいいけど、やっぱり3回転半捻った考え方なんだと改めて知った。
誤解されやすくて、でも、その真意は真剣で一所懸命で、可愛過ぎて笑っちゃう♪
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翼(やっぱ、聞いたら失礼だよな、こんなに親切にしてくれるこの綺麗なお兄さんと、百目鬼さんは恋人同士だったりしますか?だなんて腐男子の興味本位丸出しな質問…。でも考えちゃうよ、百目鬼さんゲイだって言ってたし、この綺麗なお兄さんも男の人が好きで、この綺麗なお兄さんは随分百目鬼さんの事慕ってるし、百目鬼さんは良い人で優しいよって、すっごい綺麗な顔して笑うし、それに…、心から好きで愛してる人がいるって…。この綺麗なお兄さんと百目鬼さん同じ事務所で働いてて、百目鬼さんもゲイで男の人が好きで…、同じような事言ってたもんな…)
翼『どうしてそんな事分かるんですか?百目鬼さんは経験した事ありますか?好きな人が行方不明にとか、忘れられないと好きな人とか。今、そういう人いるんですか?心から愛する人…とか…』
百目鬼『行方不明とかはないが、忘れられないような片思いをした事くらいならあるな』
翼『やっぱ、今も好きなの?』
百目鬼『一度好きになった人だ、大事ではあるけど、それだけだ。それに俺は戦争は経験してない。失う事ばかりだし、曾祖父さんは戦場に行って奪った経験もあるだろう、命に対しての感じる重みは俺たちが想像する以上だろう』
翼『……』
百目鬼『きっと翼君が考える〝好き〟とは違うんじゃないかな?俺は、行方不明の人や戦争は経験した事ないから、そうだろうとしか答えられないが、翼君も曾祖父さんの気持ち考えてあげな。大好きで大切な君に、好きじゃないと思われて悲しいと思うよ』
翼『…』
百目鬼『その代わり、もう1つの質問ならいくらでも答えられる…、俺は、大事な思い出はあるが…それとは比べものにならないくらい…』
翼(百目鬼さん〝も〟
心から愛してる人がいるって…言ってた)
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