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俺たちの軌跡【修二】2
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結果、拉致られてしまいました…。
東紫さんは、僕ちゃんを無理やり車に引っ張り込んで、自宅である橘家へ連れ込んだ。
一生懸命断ったんだけど、東紫さんの強引さと車に連れ込まれる構図が悪かったらしくて、僕の足は過去の残像に囚われ動けなくなってしまった。
百目鬼さんと和解できて、許すことも許してもらうことも出来て気持ちはだいぶスッキリした。それに、百目鬼さんとマキが付き合うことになって心底ホッとしてる。百目鬼さんにはずっと申し訳ないと思ってた。はっきり出来ない僕の態度が、百目鬼さんを暴走させたんだって…、好きな人の代わりだなんて止めてれば良かったんだ。僕も悪かったのに、結果百目鬼さんの暴走で百目鬼さんが全部悪いみたいになっちゃったし、僕は僕でこんな風にトラウマ化しちゃったから、益々向き合えなくて…、僕にとっても百目鬼さんにとっても向き合えないことが苦しかった。
…百目鬼さんとマキが、このままずっとずっといっぱい幸せになってくれればいいなぁ…
本気でそう願ってるし、百目鬼さんと和解できたのは僕にとっても、兄貴にとっても良いことなのに…
こんな風に震えて動くなくなったり、悪夢を未だに見る。
早くこんな現象がなくなれば良いのに、むつも華南も心配するし、百目鬼さんはいつまで経っても罪悪感感じるし、そうするとマキが無理するし、兄貴だって、ずっと僕に気を使って憎しみを抱えて苦しんでるし。
僕ちゃんはもう平気なのに、むつや華南がいれば発作は起きないし、百目鬼さんとだって普通に話せるし、マキから百目鬼さんの話を聞いても、不器用さに笑っちゃったり幸せそうなマキを見ると僕ちゃんも幸せな気持ちになるし。兄貴と百目鬼さんが普通に話せてるの聞くと嬉しいのに。
体だけが、あの時のことを思い出して震える。
心はとっくに解放されてる。
みんな幸せになれるって本気で思ってるのに…
足と手が震えてる…、残像を体が思い出して。
今一緒にいるのは東紫さんだ。危機感を感じてるわけでもなんでもない。東紫さんの目は、本当に僕をどうこうしようとしてるアイツらの目の色と違って穏やかで楽しそうな悪戯っ子の目。
東紫「楽に座ってて、修二君はウチ来んのすっげー久々だよね」
東紫さんは僕をリビングに通すと、律儀にテーブルの椅子を引いて、残像に震える僕が本気で警戒してると思ったみたいで、ちょっとからかいすぎたかなって感じで笑って手際良く冷蔵庫からオレンジジュースをコップに注いで僕に出してくれた。
修二「あの、東紫さん、僕帰って晩御飯の支度をしないと…」
東紫「あぁ、だから良いもんあるからって言ってんじゃん」
東紫さんは鼻歌交じりに台所を物色してるが、探し物が見つからないらしい。
ゴトゴトやってたら、その音を聞きつけて、二階から人が降りてきた。
西牙「泥棒かと思ったら、東紫か…」
東紫「泥棒って…、西牙ニィの方が今いる方が珍しくね?」
華南のお兄さんで長男の西牙さんは、相変わらずビシッとしたカッコイイスーツ姿で現れた。
西牙「やぁ、修二君お久しぶり、華南は?」
当たり前だけど、僕がいるから華南がいると思った西牙さんは、あたりをキョロキョロするけど、僕ちゃんは東紫さんに拉致されたので華南はいない。
東紫「華南はいないよ、俺が連れ込んだから」
連れ込んだって…
東紫「西牙ニィ、ここにあった段ボール知らない?」
西牙「ああ、それなら北側の廊下に置いてある。あそこが1番寒いからな」
東紫「サンキュー」
段ボール?寒い?
東紫さんは何を持ってこようとしてるの?
東紫「お待たせー。修二君コレあげるから持って帰って華南に食わしてやってよ」
ドンッと東紫さんがテーブルに置いた段ボールの中身は、なんと艶々のお野菜。
なんでも田舎から送られてきたものらしく、おすそ分けしてくれるって…。なら、最初っからそう言ってくれれば良かったのに…
東紫「アハハッ、ホッとした?」
修二「ホッとって言うか、最初っから言ってくれればあんなに抵抗しなかったのに…」
東紫「イヤーごめんごめん、楽しくってつい♪」
東紫さんは本当に楽しそうにニッと笑う、華南より派手な髪型と服装で、チャラチャラしてるのに、やっぱり兄弟だから似てるとことかあって憎めないし可愛く見えちゃうイケメン。本人も自覚してるんだろう、お茶目な笑顔でエクボを作ってた。
西牙「修二君すまないね、東紫は精神的に子供のままで寂しがりやだから賑やかにしてないと気が済まないんだよ」
東紫「よく言うよ、西牙ニィだって寂しがりやじゃん」
西牙「私は大人だ。お前みたいに礼儀知らずな付き合い方はしてない、もう直ぐ大学を卒業するんだから、子供じみたイタズラばかりしてないで落ち着いたらどうだ」
東紫「落ち着く?西牙ニィみたいに結婚相手を決めろって?」
東紫さんが剥れて聞くと、西牙さんは大人の雰囲気を漂わせてフッと笑う。
西牙「私は常に結婚を視野に入れてお付き合いしてるよ、お前みたいに遊びじゃない」
東紫「よく言うよ、4、5人ハベらしてる癖に」
西牙「付き合ってみなきゃ本当の良さは分からないだろ、それに私はお前と違って浮気はしない。恋人になる前のお付き合いだと女性に説明して納得の上で付き合ってる」
東紫「ほとんどの奴らが西牙ニィのエリートの肩書きと金目当てだからな」
西牙「フッ、自分が女性を見る目がないからって私を一緒にするな」
普段キリッと大人な雰囲気の西牙さんが、兄弟だからお見通しだと言うように、やけに意地悪に口角を上げた。
東紫さんはその、見透かされてどこか含みのある言葉に困ったように眉を寄せる。
東紫さんはチャラチャラしてるし、女の子取っ替え引っ替え浮気もするし、軽さで言ったら凄い軽男だけど、共働きの両親に変わり、西牙さんと協力して家事をこなし、華南や北斗の面倒を見てた兄弟好きな人。華南の性格を見れば、東紫さんの良さもなんとなく分かる…。って言っても、東紫さんとは挨拶程度で、チャラ男なイメージしかなかった。
けど…
西牙さんに指摘されて困ったように口を尖らせる姿を見ると、気を許してる人にはまた違った顔をするのかなって思わされる。
百目鬼さんも、見た目と違って中身は優しくて不器用で誠実。マキも大人ぶってヘラヘラ下ネタばかりだけど、中身は子供っぽくて誰より心優しい。
西牙「東紫も穴埋めみたいな付き合いはやめて本気の相手を探せよ、ずっと華南のこと羨ましがってたろうが」
えっ!?
西牙さんの発言に全身の血の気が引いた。
まさか、僕ちゃんたちの関係を?
だけどさして気にしてる様子のない西牙さん。ってことは、ただ単に羨ましがってたよなって言ってるだけだろうか、それとも、華南のように一途に思う相手を見つけて羨ましがってたってことを言ってて、僕らが男同士で付き合ってるのを知ってての発言!?
西牙「修二君は、恋人を大事に誠実に愛するタイプだろ?東紫と違って」
修二「えっ…」
こ、これは、僕ちゃんたちのこと知ってるの?
それとも普通の世間話?
西牙さん表情全然読めない…
東紫「西牙ニィずるいよ、真面目な修二と比べたら俺どうしようもない奴になっちゃうじゃんか」
西牙「お前が悪いんだろ、どこでも好きだ愛してるの安売りして、そうなれば価値が下がるのも分からないのか」
東紫「安売りって…、どれも本当のことだし、可愛いと思ったから可愛いって言うし、好きだと思ったから好きだって言ったんだよ、気持ちはいっぱい伝えた方がいいじゃん、嘘はついてねぇよ」
西牙「それがダメだと言ってるんだ。この先本気になった時、苦労するぞ」
話題を遮って東紫さんが逸らしてくれた?
そういえば東紫さん、見ちゃったのは北斗君と自分だけだって…
東紫「そんな、本気ってよくわかんねぇし、束縛とかめんどいし」
西牙「そんな細かいことどーでも良くなる、その人といる為なら変わる事も苦にならないのが本気だよ。ね、修二君」
…。
修二「……はい」
西牙さんの様子を見極めようとしていたら、東紫さんからちゃちゃが入った?
東紫「えー、今答えるのに間があった。納得出来ないなら違うって西牙ニィにハッキリ言ってやってよ。人間そうそう変われないって」
修二「あっ、ち、違います。…間があったのは納得出来なかったんじゃなくて…、その…、恥ずいっていうか…」
東紫「おっ、修二君の照れ顔初めて見た♪恋人にベタ惚れ?ゾッコン?自分を変えてでも一緒にいたい?毎日ラブラブ?」
修二「と、東紫さん!」
東紫「いいじゃん、本気の恋愛について教えてよ」
東紫さんのニヤニヤは、明らかに僕ら三人のことについて聞こうとしてる。見られちゃったんだから僕らが悪いんだけど…
修二「…………ら、らぶ…らぶ…です」
東紫「えー、また間があったぁー」
東紫さんの目が、華南とはどうなの?と言ってる…
修二「……ぼ、僕は、そういうの得意じゃないから…、ラ、ラブラブだけど…、自分のこと言うのとか…。ただ、西牙さんの言ってる事は分かります。僕も…、だいぶ変わったから…」
東紫「えー、じゃあ好き好き愛してるよーって言わないの?」
修二「あ、愛…」
東紫「うははは、真っ赤っか♪。可愛い反応ぉ♪、修二って童貞ぇ?」
ニヤニヤする東紫さんが僕の肩を抱いてほっぺを突っつく。
もうヤダ!西牙さんも興味深々に見てないで止めてよ!!
その時だった。
ーガチャッバターン!!!!
玄関の方でものすごい音がしたと思ったら、直ぐにリビングに焦った顔の華南が乗り込んできた。
仕事の作業着のまま、真っ赤な顔で額に汗して、東紫さんが僕の肩に腕を回してるのを見て、みるみる眉間のシワを濃くして怒鳴った。
華南「東紫!!何修二拉致ってんだッ!!」
華南はふんだくるように僕ちゃんを東紫さんから引き剥がす。
華南がこんな風に感情的に怒るのって珍しくて、思わず瞳を瞬いた。
東紫「やだなぁ、ばあちゃんから野菜が送られてきたからお裾分けしてるだけだよぉ。お前に連絡したらいつ取りに行けるかわかんねぇって言うからさぁ」
東紫さんは怒鳴られても応えてる様子がなく、華南が睨んで怒ってるのにニヤニヤ余裕そう。
華南「北斗からメール来たぞ!東紫が修二に『俺と試してみない』って言って攫ったって!」
ちょっ、ちょっと!西牙さんの前なのに!?
東紫「冗談だよぉー♪」
華南「修二は返してもらうからな!」
東紫「あっ、ほらほら、ばあちゃんからの野菜忘れんなよ」
東紫さんは楽しそうに笑いながら、野菜の入った段ボールを華南に手渡した。
華南のことが大好きで構って欲しかったんだ。
なんだか嬉しそう。
僕ちゃんの兄貴も、自立出来るようにってあれこれ教えてくれてたのに、いざ家から巣立ったら、言葉にはしないけど、顔には寂しい寂しいって書いてある。
どこの家庭も似たり寄ったりなんだなぁ…
そう思ったら、なんだか東紫さんが可愛く見えてきた。
華南「修二、笑ってないで帰るぞ!」
華南は僕ちゃんをグイグイ押して玄関から出る。
そんな華南を東紫さんが追いかけて来るから、華南が玄関を塞いで通せんぼし「先に行ってろ」って僕を逃がすようにしてた。
東紫さんは終始楽しそうで、西牙さんはいつものことだと鼻で笑ってて、いつもより感情的逃がす怒る華南がじゃれあってるのを見ると、僕ちゃんは可笑しくて笑っちゃった。
ふふふっ、華南って、あんな風に怒ったり兄弟喧嘩したりしてるんだ。普段はむつが先に切れちゃうから、華南はずっとストッパー役っていうか、落ち着いてたから、なんだか可愛い。
********************
華南「二度と修二をからかうなよ、あいつは東紫と違って繊細にできてるんだから」
東紫「そう怒るなよ華南。良いもんやるから」
華南「あ?」
東紫「ほらほら、今晩ラブラブに過ごせるぜ♪」
華南「ハッ?!なんだこのピンクの薬!要らないよ!」
東紫「修二君言ってたぜ、恥ずかしくって素顔になりきれないって、もっと気持ちを伝えたいけど、そういうの不得意だからってさ、お前らに言いたい事、色々貯めてるんじゃねぇの?受け止めてやるのも恋人の役目だろ♪」
華南「………」
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