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俺たちに射す斜陽〜修二〜
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全身が凍りついたような気がした。
来るとは思っていたが、真昼間のこんな人混み、しかもむつといる時。考えていたより足がすくみ、体が拒絶した。
(華南!…助けて)
とっさに心が悲鳴を漏らす。
前回は華南が居てくれた、でも今回は違う。隣にいるのは、むつだ。
僕が守りたい人、何も知らない人。
むつ「修二の兄貴と同じグループで…ドウメキって、あの朱雀の右腕の雷神、百目鬼さんですか?」
目を丸くしていたむつが、瞳を輝かせていた。
百目鬼「恥ずかしいな…、懐かしい呼び名だね、俺のこと知ってるの?」
彼を追い払わないと…
むつに何するか分からない…
僕は、華南に抱きしめられたのを思い出して自分を奮い立たせた。
何も知らないむつは、有名人に会えて興奮している。
むつ「えっ、知ってるも何も超有名人じゃないっすか、俺…」
修二「百目鬼さん、今日はどうしたんですか?」
むつの言葉を遮り、あくまで普通のトーンで百目鬼さんに話しかけた。
百目鬼「仕事で近くまで来たから、奏一の顔を見とこうと思って顔を出したんだが、今は3号店にいるって言われて、3号店の場所分からなくて迷ってたんだ」
嘘だ。
兄貴に会うなんてこの人にはできない。兄貴に会ったら今度は頬の傷じゃ済まない、そんなのこの人が1番分かってるはずだ。
百目鬼「修二、案内してくれない?」
きた…
百目鬼「あー、でも、お友達と約束してる?」
むつ「あ、いえ、ちょっと気分転換にブラブラしてただけで、俺らテスト週間なんすよ」
百目鬼「テストか、懐かしいなぁ、そういえば、りょう…って言っても分からないね。谷崎亮司が教師やっるって言ってたっけ…知ってる?」
この人、僕の身辺調査してる?
…ってことは…、抗うより、従った方が早くむつから遠ざけられる…
修二「そうですよ。僕らの担任です。…案内しますよ、3号店に…」
僕はむつに向き直り、2人で買ったCDを手渡した。
修二「ごめんね、この人方向音痴の気があるから、案内してそのまま兄貴の店に金落としてきて貰うよ」
むつ「いいよいいよ、久々なんだろ、いいじゃん気分転換にゆっくり思い出話ししてこいよ」
修二「うん、そうする。華南には僕ちゃんからメールするよ、じゃ、明日ね」
むつ「おう、また明日」
むつは右手を上げ、僕は笑って手を振り返し、百目鬼さんの車の後部座席に乗り込んだ。
ーバタン
ドアを閉めると、すぐにカチッと音がして、ドアにロックが掛けられた。そして、シートベルトを着けるのも待たず、車はゆっくり走りだし、むつから離れて行った。
よかった、この人のことだから、むつのことも無理やり誘うのかと思った。
さて…、どうしたもんか…。
僕は何も言わずに、シートベルトを着け、座席に深く座って曇りガラスの車窓を眺めた。
どんどん街中から離れていく。
兄貴に知らせるのはいつでもできる。でも、むつに被害が加わるのは避けたい。
この人は、多分むつを調べてきたんだ。
百目鬼「…意外にすんなり乗ったな…」
修二「…」
百目鬼「今からUターンして、さっきの子も誘おうか?」
修二「…」
百目鬼「相変わらず、無反応か」
反応したら、喜ぶ癖に…
修二「どこ行くんです?」
百目鬼「ん?お茶しようって言ったろ?」
修二「兄貴の店で?」
百目鬼「ハハッ、それは無理だ。奏一は俺をヤる気満々みたいで、街中見張りを立てて、お前に近づくの大変だったよ」
修二「そうでしょう、僕、話しましたから、こないだのこと」
興味が無いと言った風に、修二は一定のトーンで返事して、車窓を眺める。
逃げる時、現在地が自分で分からなければ、的確に隠れられない。
この人を拒むのは難し。
嫌がれば喜ぶ。
従えばつけあがる。
人が嫌がると興奮する、一番達が悪いのは、その自虐心を本人がコントロール出来ず悩んでいる事。
サドってすごく厄介だ。
百目鬼「彼氏にメールしとけば?今から元彼とお茶するので、心配しないで下さい、くれぐれも奏一にチクらないでって。今後の自分のために…」
ほらきた…
百目鬼「橘華南、六人家族、四人兄弟三男、随分イケメンぞろいの兄弟だな」
やっぱり…、華南を調べたのか。
百目鬼「心配するな、お前と大事な話がしたいだけだ、逃げなけりゃ、帰りに調べた資料、まとめて渡してやるよ」
修二「話しって、体で?」
百目鬼「…その方がいいなら喜んでそうするが?」
修二「僕の意見は聞いて貰えるんですか?」
百目鬼「…聞くよ、今は話がしたいだけだ」
…今…は…。
そう言った百目鬼が車を止めた場所は、僕の想像と全然違っていた。
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